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ふつうの生活 ふつうのパラダイス

2006.12.21
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カテゴリ:日本映画
十何年も主婦業やってると、どうもやっぱり飽きてきて、だれてきて、いい加減になってきて手抜きになってきて、なんだかつまんないなあ、もっと意味のある仕事やりたいなあ、なんてそんな風に思い始めるもんです。掃除とか片付けとか、だんだん手抜きになってきまして。特にアイロンかけが嫌いです。ちなみにネタバレありありです。

         武士の一分

でも、そんなのいかんなあ。自分に与えられた仕事はきちんと責任もって一生懸命やるべきなんだ。そうじゃないと命を落とします。この映画の人たちのように。

この映画にでてくる人物の三人もまた、二人は自害し、一人は失明した。なんでかっていえば、それはつまり自分の仕事を甘く見て、手を抜いていたからです。

主人公三村新之丞(木村拓哉)は、お毒見役という仕事をつまらないと思っている。武士らしくない。それよりはいっそ道場でも開いた方がいいとすら思っている。教える相手は武士の子でも、町人の子でも、下働きの子でも、とにかく剣を使うような武士らしい仕事であるなら、今のお毒見役のような、形ばかりの儀礼的な仕事よりよっぽどいい。

藩主の食事は必ずお毒見役が毒見をしているのだから、毒なんか入れても意味なさそうだし、いまさら、そんなことするやつはいないだろう。それでも、やっぱり、毒見はしないといかん。やめれば誰かが、また、毒殺を企てるかもしないし。それでも、ずーっとこんな仕事をやってると、だんだんだれてきて、形式的になってきて、みんなどことなく、緊迫感なし。

そこに油断があったのだろう。主人公三村は「貝の刺身」によって中毒となり、高熱の後、失明する。三村は貝を口にしてほどなく気分が悪くなる。横にいた同僚は気がついて、「どうした」と声をかける。それでも「いや大丈夫」といったその挙句、倒れてしまう。それに気づいた広式番が、すでに御前に上がっている料理の食事をとめに入る。

毒見役なら、まず自分の体調の異変にきずいた段階ですぐに「しばしおまちください」と声を発するべきであったはず。それ以前に口に入れた段階で、これはなにかおかしいと気づいてもいいはず。本当にプロであるなら、毒見役として、食べ物を口に入れた一瞬できずくべきものなのではないだろうか。しかし、三村は自分が倒れるまで、毒見役らしい仕事をしていたとはいえない。そういう仕事への甘えが実は彼を失明させたとも言える。口にした段階で、ほんの少しの体調の変化にきずいた段階で、上司に速やかに告げるべき仕事なのであるから。

彼は自分の仕事を侮り、手を抜いていた。それこそがまさに命取りとなったのである。

そして、この事件で、毒見広式番、樋口(小林稔侍)もまた、切腹せざるを得なくなる。彼は、高齢とはいえ、毒見の仕事の最中にあろう事かうたた寝までしている。毒見役五人の顔色や体調のチェックもなおざりなまま、形式どおりに、食事を藩主の午前に運んでしまっている。明らかに職務怠慢である。彼もまた、自分の仕事をたいしたことのない形式的なものに過ぎないと、軽んじていたのである。その結果、あと、数秒遅ければ、主君の口に赤粒貝の毒が入っていたかもしれないのである。

そして、その結果、自害せざるを得なくなってしまった。

仕事の失敗で命までなくなるなんて、大変な時代だなあなんてヒトゴトみたいに気楽にみてちゃいかんよ。今だって仕事ってのは、命がけでやるべきものだ。それをいい加減にやるから、逮捕されたり、裁判になったり、免職や辞職に追い込まれ、仕事をなくして、路頭に迷うなんてことになる。その挙句野垂れ死になんてのもありですよ。今現在。

そして、もうひとり、番頭の島田藤弥(坂東三津五郎)もまた、己の仕事を利用して、三村の妻加世(壇れい)の体をいいようにした。頼みごとにきた彼女を手篭め同然にし、その後もそれをたてに彼女に要求した。その挙句、夫三村の怒りをかって、そののち結局切腹となる。自身の仕事を自分の欲望のために使った。彼もまた、自分の仕事を甘く見ていたのだ。

そしてまた、妻加世もまた、島田に迫られた時、声を上げることもなく、されるままになってしまった。声が出なかったというのは、言い訳に過ぎないといったら、ちょっと厳しすぎるだろうか。彼女は夫のためといいながら、今現在の暮らしを維持したいという欲望の前に、妻として貞操をまもるという妻としての仕事を二の次にしたのかもしれない。そういう一瞬の心の好きに悪魔が入り込んだとも言える。


与えられた仕事はちゃんと命がけでやらなきゃいけないんだよなあと思った。

そうじゃないと、失明したり、切腹したり、離縁されたりなんてことになるんだよねえ。

三村は盲目の身でそれでも、妻と自分の無念を晴らすために島田との命がけの一騎打ちを果たす。

これが要するに武士の一分だとそうとってもいいんだけどね。でも、本当の一分は自分の仕事を命がけでやることです。

ラスト、三村は、離縁したはずの妻加世の存在を、その声を聞くでなく、足音を聞くでもなく、ただ彼女の作った料理の味だけで自分の家の中にいることに、きずいた。まさにお毒見役として、本領なのである。

だからこそ、感動の涙も出ようというもので、ハッピーエンドの少ない最近の映画の中でほっとする結末だったのです。もちろん、三村の目は失明したままだけどさ。でも、妻の料理が見分けられるようになったんだから、克服したと思いますよ。

私も妻として母として主婦として、自分の仕事を命がけでやらなきゃいかん。

でもやっぱりアイロンかけは嫌い。


中間・徳平が良かった。彼の仕事ぶりには、手抜きもだれもなく、ただ、ひたすらに三村と加世のために働く姿が好対照として、特に印象に残り、物語に深みが増したといえる。




           


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最終更新日  2006.12.21 10:14:53
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