テーマ:映画館で観た映画(8349)
カテゴリ:外国映画 は行
やっぱり英国史って、面白いですね。世界史は全般的に好きなんだけど、なぜか不思議と特別な魅力のあるのが英国の歴史ですね。十六世紀以降世界制覇した国の歴史ですからね。 『エリザベス』、『キング・アーサー』、『トリスタンとイゾルデ』、『クィーン』などなど、最近イギリスの歴史物が多くて楽しいです。 で、エリザベス一世のお話二つの後にとうとうそのエリザベスのお母さんの話。アン・ブーリンを主役にした話はかなり昔に『1000日のアン』という映画も作られているのです。それも見たいなあとは、思っていたのだけど、なにせ古い映画なので。 美しくて優しいだけでは、だめなのだ。 映画の冒頭でアンのお父さんがいうセリフです。 結構意味深で、映画全体のテーマに大きく関わるメッセージなのではないのかなとも思ったのです。 裕福な商家から、アンを嫁に欲しいとのお願いに、ブリーン姉妹のお父さんは、頭がよいアンより、心優しい妹のメアリーの方が向くだろうということで、メアリーを結婚させます。このメアリーの性格を美しく、やさしいと、父は言うわけですが、でも、それだけじゃだめだとも、いうわけです。そして、頭のいい姉のアンを当時子供のいなかったヘンリー8世の愛人にして男の子を産ませて、ブーリン家を繁栄させようと画策するわけです。 けれど、頭がよくても、自分のことばかり考えてるおてんばなアンより、心やさしく気配りのできるメアリーにヘンリー8世は心奪われてしまうわけです。 このお話の中のアンは、頭はいいけれど、すごく性格悪いです。とにかく自分のことばかり考えているのですね。自分が将来得するためには、妹のことも、弟のことも犠牲にしても、自分の不幸に巻き込んでも気にしません。王のハートを射止めるために、その優秀な頭脳を使って、狡猾な策略、手練手管を駆使するのです。 この物語はとにかく、メアリーと、弟と、お母さん以外はほとんど全員が自分のことしか考えていない、性格の悪い奴ばかりです。 そして、そのためにほとんどの人たちが不幸な末路をたどった末に、美しく心優しいメアリーだけが生き残り、再婚して幸せな生涯を送るわけです。 では、自分のことばかり考える性格の悪さを批難して、心優しく人のために生きることを賛辞する映画なのでしょうか。 表面のストーリーだけを見ればその通りです。ヘンリー王も、優しいメアリーには、最初も最後も優しく、そして、惹かれるわけです。 けれど、国を統治して、一人孤独と戦いながら、常にきびしい決断をしていかなければならない一国の王を産まなければならない、国王が、美しく心優しいという理由だけで、妻や愛人を選び、世継ぎを作ると、その世継ぎは将来、その優しさゆえに、一国の支配者としては、不向きなのでは。 子供というのは、母親の遺伝子を受け継いでいるわけですから、優しい女性は妻や愛人としては、とてもいいものかもしれません。が、一国の支配者としては、明晰な頭脳、狡猾さ、計算高さ、目的のためには、手段を選ばない強さ、たくましさが求められるわけで、まさにそういうものをもっていたのが、この物語の主人公であり、一見性格悪い悪女とすらみえるアン・ブーリンなのではないのでしょうか。 ヘンリー王は、その巧みさに一度は、アンに惹かれますが、結局のところ計算高すぎて、女性としてのアンに愛情を感じ続けることができませんでした。 それでも、アンは、女の子とはいえ、一児をもうけ、その女児が将来エリザベス一世となって、イギリスを世界有数の大国へと、成長させていったわけです。そのエリザベスの中には、母であるアン・ブーリンがもっていた、頭のよさ、狡猾さ、たくましさが引き継がれていたのです。 アンの背信によって、アンは斬首され、ブーリン家の父も、義父も後年悲惨な末路をたどるわけですが、彼らの計算済みか、予定外かはわからないその計略によって、エリザベス一世は生み出され、大英帝国はきずかれたわけです。 美しく心優しいのは、人としては、普通の人としては、徳のあるすばらしいことではあるけれど、一国の王に望まれものは、それとはちがうもの。そして、そのためには、王もまた、世継ぎのために、耐えなければならない部分も、考えなければならない部分もあるのでは。 たくさんの人々がうごめき、策略し、地獄と紙一重のような、英国王宮の中で、王も后も、愛人も臣下たちも、あえぎ苦しみながら、英国の歴史は作り上げられていったのですね。 二時間ちょっとの上映時間でしたが、まったく飽きることなく、見終わりました。アン・ブリーン役のナタリー・ポートマンも、それ以外の役者さんたちもすばらしい熱演で、心にせまってくるものがありました。 おもしろかったです。 ブーリン家の姉妹@映画生活 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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