ソロモンの犬
ソロモンの犬道尾秀介 著ちょっと怖い雰囲気が漂いつつも、けっこう笑えるミステリ小説です。ソロモンの犬 【電子書籍】[ 道尾秀介 ]価格:640円 (2018/1/28時点)大学生の秋内は、同じ大学の羽住智佳に一目ぼれ。自転車配達便のバイトに精をだす一方で、同級生と友江京也と、羽住の友達の坂巻ひろ子の協力で、羽住との距離を縮めようと努力する。そんなある日、彼らの小さな友人、小学生の陽介が事故に会い死んでしまう。現場に居合わせた秋吉は、事故の直前、ある人物の不可解な行動を目撃し、陽介の事故が仕組まれたものではなかったかと疑念を抱く。物語は、秋吉がたまたま立ち寄った喫茶店で、京也、智佳、ひろ子の三人と会い、陽介の死をめぐり「この中に、人殺しがいるのかいないのか話し合おう」という重い出だしで始まります。ここからが本編で、彼らの出会いから陽介の事故までのあらましが描かれますが、全体としては、羽住智佳に思いを寄せる秋吉の様子や、京也とひろ子の関係を中心に、恋愛小説のような感じで進んでいきます。会話の中にもふんだんにジョークが登場し、重い出だしとは対照的に、ユーモアがあって、かなり笑えます。そして四人の関係に、少しずつ亀裂が見えはじめたころ、陽介の事故が発生します。すると一転、みんな、なにかしら隠しごとをしているような怪しさで、ミステリ小説らしくなっていきます。いよいよ終盤、事件の核心へとせまってきたあたりで、とんでもない展開がまっています。それありですか?!と、絶対思うはず。これをどうやってまとめるんだ?と思ったときに、ああなるほど・・・一見大した意味を持たないと思われた伏兵がこんな形でオチを・・・。「うまい」と思わず感心。最後は、青春ミステリっぽく、すがすがしく終わっていくのが、これまたにくい。おすすめです。