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テーマ:退職(78)
カテゴリ:カテゴリ未分類
前回のお話し<そして私はニートになった>
3.そして私は一世一代の買い物をした。 慣れないスーツに身を固め、いざ指定された時間にN社を訪れた私は、面接とは名ばかりの数分の簡単な説明を受けただけで、あっさり採用となった。対応にあたったのは、出荷部門を統括する50前後のU部長だった。 私が一番気になっていたのは、身体の事をどこまで理解しているのか、という事だったが、 「へーき、へーき。重いものを持つような仕事なんかないから。で、いつからできる?」と軽い調子で訊くU部長に、 「今からでも平気ですが・・・。」と私は答えた。 会社に到着してからおそらくは15分もたたないうちに、私は作業服に着替えて現場で働くことになった。アルバイト経験が多い私も、さすがにこの展開は初めてだった。しかし、このあとすぐに私は嵌められたことに気づいた。 私がやることになった仕事は、N社で作っている製品を梱包し、出荷する仕事だった。製品一つの重さは2キロといったところだが、これを20本ほど箱に詰めることで、40キロほどの重さになる。その際重量を計測するのだから重さに間違いはない。これをひたすら出荷準備用の棚に詰め込み、また出荷日となった箱を、棚からおろしては台車に積み上げ、トラックの集荷場所まで運ぶのだ。これを定年間際の男性が一人で行っていた。他にも女性が二人いたが、彼女たちはもっぱら製品を棚から持ってきたり、製品にラベルを貼るといった軽作業が中心だった。つまり肉体労働は、その男性が一人でこなしていたのだ。年齢的にも少々無茶な話である。その無茶の解消のために私は雇用されたのだ。たしかに40キロのものでも二人で持てば20キロ。成人男性が持てない重さではない。しかし、この積み下ろしを一日中、これから延々とやっていくとなると話は別だ。それができないから私は会社を辞めたのだ。そのことはつい数分前にもU部長に話したばかりではないか。 なにかの間違いではないか?今日は特別なのではないか?都合よく解釈しようとするのだが、そんな甘い考えを、全身に走る痛みが根こそぎ打ち消す。私は騙されたのだ。 しかし、この手の話はよくあることなのだろう。(ここまで露骨な嘘をつかれたのは初めてなのだが) 実際強制労働でもあるまいし、話が違うなら辞めてしまえばいいだけの話だ。しかし私にはそれが簡単にはできない理由があった。この話はそもそも私の親がご近所に頼んで探してきてもらった話なのだ。田舎のご近所づきあいという、やっかいな人間関係が私の背中に重くのしかかった。そしてそれ以上に切実とした問題が私にはあった。なんと私は無謀にもこの数年のニート生活のさなか、家を建てるという暴挙にでていたのだ。そしてまさにこのタイミングで家が完成し、私は同時に引っ越しの準備も進めなければならなかったのだ。私だってまさかこんな最悪な展開になっているとは想像してはいなかった。それとは別に、自分を追い込むことで少しは甘えも吹っ切れるのではないかという思いもあった。しかし、先行きがまったく見えないどころか、到底続けられるとは思えない絶望的な状態で、新しい生活をスタートさせることになろうとは夢にも思ってはいなかったのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 2, 2018 08:48:43 AM
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