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カテゴリ:【本】芸術、美術、博物館
屈指の難関校である東京藝術大学、通称「藝大」について書かれたノンフィクション。
『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』(著者:二宮 敦人さん) 著者は、1985年生まれ。 現役藝大生である奥さんが面白い、というところから、藝大について調べ始めたそうです。
著者が、複数の藝大生にインタビューをして話を聞いていくことで、藝大と藝大生について知ることができる内容となっています。
この本を読んだきっかけは、以前ブログに書いた本『山内マリコの美術館は一人で行く派展 ART COLUMN EXHIBITION 2013-2019』です。 エッセイの中の1つに、メランカオリさんのことが書いてありました。
東京藝大の卒展に行った著者の旦那さんが、メランカオリさんの作品と出会い、メランファンとなった。 そして後日、新作を見に行った際にご本人にお会いする、という内容のエッセイです。
その内容が面白く印象に残っていたところ、たまたま見た新潮文庫の小冊子に、この本 『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』 が載っていました。
メランカオリさんが在籍していた東京藝大って、どんなところだろう。 他にもユニークな方々がいらっしゃるんじゃないか。 と気になって、読み始めたというわけです。
ちなみにカバーのイラストは、以前ブログに書いた絵本『キャラメルゴーストハウス』や、
『今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト』のイラストを描いていらっしゃる、北澤平祐さん。
一つの大学の中にあらゆる人々がいて、そのあまりの多様さに、読んでいてお腹いっぱいという感覚になってきますが、面白かったです。
藝大は、 「東京美術学校と東京音楽学校が統合する形で生まれた」(p.231) そうですが、美術学部と音楽学部の違い(学生の見た目、防犯意識、時間への意識、金銭感覚など)に明確な差があることも面白かったです。
また、学科の種類も 彫刻科 工芸科 絵画科 建築科 芸術学科 デザイン科 先端芸術表現科 楽理科 邦楽科 器楽科 音楽環境創造科 指揮科 声楽科 古楽科 作曲科
こんなに様々あるとは知りませんでした。 そこから専攻が分かれるとなると、さらに細分化されますね。
そして芸術に対する学生の姿勢も、様々。
「あくまで自然に、楽しんで最前線を走っていく」(p.112) 学生もいる一方で、 「みんながみんな、好きという思いの果てに藝大にいるわけではない。」(p.79) そうで、 「燃えるような情熱を持ってモノづくりをしているわけでもない」(p.179) 学生もいるという……。
モノづくりから離れたくても離れられない人もいれば、つくる側ではなく音楽や美術をサポートしたい人もいる。 将来を考える人もいれば、あえて将来を考えていない人もいる。
私は特に、本の最後のほうで書かれている、卒業後の 「半分くらい行方不明」(p.273) という話について、もっと詳しく知りたかったです。
なお、藝大出身者には 「ディズニーシーの火山を作った彫刻家」(p.275) もいらっしゃるようで。 パホイホイ溶岩も……?
最後に。 印象に残っている、オルガン専攻の学生の言葉があります。
「音楽って、生きていくうえでなくてもよいものなんです。でも、長い年月をかけて発展してきました。やっぱり……なくてはならないものなんだって思います」(p.271)
新型コロナウイルスの影響で、あらゆるエンターテイメントが自粛を余儀なくされました。 美術や音楽が無くても、確かに生命の維持には問題ありません。
でもきっと、心の健康や、心を豊かにするために必要なもの。 だから、昔からずっと、無くならないのでしょう。
山内マリコさんの本に加え、この本を読んで、芸術に対してさらに興味を持ちました。
漫画も2巻まで出ているようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.07.11 00:00:12
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