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カテゴリ:【本】芸術、美術、博物館
本のタイトルに「泣く女篇」とあるのは、ピカソの『泣く女』が載っているからでしょうか。
実際には、泣く女に限らず様々な絵画が紹介されています。
『怖い絵 泣く女篇』(著者:中野京子さん)
『山内マリコの美術館は一人で行く派展 ART COLUMN EXHIBITION 2013-2019』です。
「殺人的な混雑にわたしが怖くなった」というエッセイ(p.192~193)で、上野の森美術館で開催された「怖い絵展」に行った時のことが書かれていました。
著者は、この日のために中野京子さんの文庫本を3冊読んで予習したとのこと。
展覧会に行けなかった私は、著者と同じように本を読んでみようと思い、文庫本を探したのでした。
著者が読んだ『怖い絵』シリーズのうち、エッセイに載っていた絵と同じ絵が表紙になっている、角川文庫の『怖い絵 泣く女篇』を買ってみました。
この本には作品1から作品22まで、絵画(カラーか白黒)と、著者の解説が載っています。
私はアートの知識は皆無のため、この本で初めて出会う作品ばかり。
例えば、もともとセイレーンに興味があったため、ドレイパーの『オデュッセウスとセイレーン』を知ることが出来てよかったですし、マイナス思考の私には、陰鬱さを感じるベックリンの『死の島』にも惹かれます。
しかし一番印象に残ったのは、カレーニョ・デ・ミランダの『カルロス二世』。
この絵画にはスペイン・ハプスブルク家の、若き当主カルロス二世の全身が描かれています。
私がこの絵を見ると、 「人が立ってる。裕福な身分の。」 くらいしか思い浮かびません。 (小学生でも、もう少し考察しそうなものですが……。)
ところが、この本で著者の解説を読むと、血族結婚が繰り返されてきたことや、カルロス二世が 「心身ともに脆弱で知能も低く、見た目もひどく悪い」(p.31) 人物だったことなどが書かれています。
そのような解説を読んでから改めて作品を見ると、確かにカルロス二世の足もとから伸びる影は不穏な感じがします。
また、 「無感情無感動の魚の眼」(p.33) も、その背景を知ると確かに……と納得出来ます。
作品から感じる全体的な暗い雰囲気、不気味さは、解説を読むことで深まりました。
作品の背景を知った上で見るのと、知らないままで見るのとでは、作品の見え方や感じ方が全然違うということを体感出来た本でした。
なお『怖い絵』の本は、泣く女篇の他に 『怖い絵』 『怖い絵 死と乙女篇』 があるようです。 怖い絵 泣く女篇【電子書籍】[ 中野 京子 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.07.22 00:10:06
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