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カテゴリ:【本】社会の生きづらさ、社会の現状
現代における倍速視聴・10秒飛ばしという習慣について、その理由と背景を考察した本。
内容が濃くて読み応えがあり、満足の一冊でした。
『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ──コンテンツ消費の現在形』 稲田豊史 光文社新書 光文社 2022年
この著者の本を読むのは、『セーラームーン世代の社会論』に続いて2冊目。
今回読んだ本は、ビジネスサイト「現代ビジネス」に掲載された記事をもとに、書き下ろしを加えているそうです。
倍速視聴について、年齢が若いほど倍速視聴経験率が高く、その基底にあるのは
1. 映像作品の供給過多 2. 現代人の多忙に端を発するコスパ(タイパ)志向 3. セリフですべてを説明する映像作品が増えた
の3点とのこと。
それぞれの背景も書かれているのですが、特に2つ目の項目の背景(視聴者側の内的要因)について書かれた第3章が興味深く、その背景を読むと「今の若い人は大変だな……」と悲しい気持ちになりました。 ものすごく生きづらそうです。
第3章の終わりで、著者はこのように書いています。 「彼らはとにかく余裕がない。時間的にも、金銭的にも。そして何より精神的に。 (略)彼らは不気味な宇宙人ではなかった。単に、筆者と生まれた時代が違っただけだ。」(p.178)
著者は1974年生まれ。 著者よりも年下の私は30代ですが、それでも、いわゆるZ世代とは生まれた時代が大きく違うと思っています。 おそらく10年以上前の私の大学時代と比べても、今の大学生を取り巻く環境は大きく異なるでしょう。
キャリア教育は私も受けていたはずですが、特にSNSの普及による変化は大きいはずで、今まで一度もLINEを使ったことがない私にはわからない生きづらさがZ世代にはあるんだろうな、と想像します。
また、第5章で書かれているように、短時間で大量の情報をさばかざるをえない状況にさらされることで、今後も単位時間あたりの情報処理能力は上がり続けるのでしょう。 自分が時代の流れについていけるか、心配になりました……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.05.24 16:24:38
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