【本】『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』
自殺に関する研究を15年以上している、1983年生まれの心理学者による本。 『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』 末木新 ちくまプリマー新書 2023年「死にたい」と言われたら 自殺の心理学 (ちくまプリマー新書 428) [ 末木 新 ] 新書という形態と、800円(税別)という手頃な価格ながら、読み終わった後はずっしりとした重みを感じました。 2~3割の人が、人生において一度は自殺を考えるそうです。そして、それを打ち明けられたことがある人も一定数いるはず、と。 日本では、年間に約2万人が自殺で亡くなっているそうですが、一人の自殺につき例えば5人程度の人が大きな影響を受けるとすると、年間に10万人近い人が身近な人の自殺を経験し、自殺について考えたり感じたりする……とのこと。 そうであればこの本は、自殺者の人数以上に、多くの人にとって関係がある本なのではないかと思いました。 この本を読むまでは、自殺に関心がある人は少数だろうし、この本を手に取る人はある程度限られた人だけだろうと思っていました。 でも、「死にたい」と思っている人が周りにいる人や、自分が「死にたい」と思っている人だけでなく。自分が自殺とは無関係だと思っていたとしても、むしろそういう人こそ、無関係だと思えるうちに読んでおいたほうがいいのではないか、と本を読み終わった後に思いました。 心身共につらい時に、たくさんの文字を読むことは厳しいと思うので、余裕がある時にこそ。 以下は、本の内容メモ。 この本のタイトルにもなっている「「死にたい」と言われたら」は、第2章に書かれています。 自殺の対人関係理論によると、自殺の危険性は ・身についた自殺潜在能力(自らの身体に致死的なダメージを与える力、死に切る力)・所属感の減弱(孤独感の高まり)・負担感の知覚(お荷物感、低い自尊心) という3つの要因が合わさった時に、最も高くなるとのこと。 そしてこれらの要素を一つずつ取り除くには優先順位があり、 自殺潜在能力(自殺する手段を物理的に使えないようにする)↓所属感の減弱(心の絆を作り、孤独を癒す)↓負担感の知覚(周囲の役に立つことをした際に、それを指摘して意識させ、感謝を伝える) という順番とのこと。 他にも、一人で「死にたい」に対応し続けるのではなく、複数人で対応することなど。 続く第3章は、「「死にたい」と思ったら」。自分が「死にたい」という人に向けても書かれています。 死にたい気持ちが高まる前に、いざ死にたくなった場合にどうするのかを決めておくのが大事とのこと。 ・厚生労働省の自殺対策のホームページにある相談先一覧のページや、内閣官房の「あなたはひとりじゃない」というサイトなどを見ておき、誰がどんな相談を受けてくれるのか事前に知っておいて、相談窓口を使う準備をしておく。 ・自分一人でできるストレスへの対処方法(ただし自傷行為、飲酒、薬物使用ではない方法)のレパートリーを、たくさんストックしておく。 ・他者に感謝を伝え、親切にして、対人関係を充実させる。 ・「行動記録表」や「思考記録表」で、自分の記録を残す。 などなど。「死にたい」と言われたら ーー自殺の心理学【電子書籍】[ 末木新 ]