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2020年06月28日
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おはようございます、ひなこです。


8月19日
キャロルは、後ろから見る分には結構好きだ。
窓から見てる。
庭を歩き回ってる。フェンスの近くの低木の薔薇のつぼみを触りながら。
彼女は大抵ビキニを着てる。でも今日は服を着てる。
後ろから見れば、可愛く感じる。
長い黒髪で、かなり痩せてる。
でも、顔が嫌いだ。気持ち悪い。
いつも小さな丸眼鏡をかけてる。日光浴してる時ですら。
で、鼻をつんって上げて、お高くとまってる感じ。
でもそういうのは別にどうでもいい。
顔なんだ、顔を見るのが嫌い。
だってなんだか自分みたいなんだもん。
だって、前に見たことある気がするから。

8月20日
もう家で一人でいることはない、絶対。
1階には、ママとジョンがいるから行けない。
庭には、彼女がいるから行けない。キャロルのことだ。
ベッドの下に雑誌を何冊か隠し持ってるけど、もう読み飽きた。

ママが昨日僕の部屋へ来て、僕がジョンと喋らないと小言を言いだした。
囁き声でずっと喋り続けて、大きな声で話せないもんだから、指で僕を突っつき続けて。
それから、誰かが2階に上がって来た。だから僕のことを睨んで出て行った。
僕は、まだ奴とは喋らない。
奴のことは嫌いだ。
あいつはデカくて、デブで、僕が何かするのを待ってる感じ。そうすれば、僕を怒鳴れるから。

この前の朝、僕が階段にいた時、ママが自分の寝室から僕に向かって叫んだ。
自分とジョンのために、紅茶を持ってこいって。
ジョンが砂糖を入れないことを僕は知っていた。だからすごく沢山の砂糖を入れてやった。
僕が2階に戻った時、ママが僕にドアを開けないで、トレイを部屋の外に置いておけって叫んでいるのが聞こえた。
僕は聞こえなかったふりをして、中に入った。
2人共真っ裸でベッドの中にいた。で、ジョンは腕と胸に入れ墨があった。
ママは僕に、トレイを置いてとっとと出ていけと言った。

続く。





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最終更新日  2020年06月28日 07時00分08秒
[サー・カズオ・イシグロ作品の翻訳] カテゴリの最新記事



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