2007/09/07(金)13:36
音楽の創造の原点/それぞれのバイオグラフィー
ゲスト musician/artistのJohn Bliss(ジョン ブリス aka ZOULOU)と、
artist/musicianのAnthea Bliss(アンシア ブリス)(“the Clockwork Flowers”)
コーディネーター トラークルハウス 藤原 美弥子
ジョンとアンシアは私のパートナーの古い友人である。あれは私がまだ19才の時だった。初めての英国への旅の始まりに、ヒースロー空港まで出迎えてくれ、ポートベローの彼らのアパートに数日間滞在させてくれた。初めてのイギリスをエキサイティングなものにしてくれたのは彼らのおかげだった。私のパートナーにとっても彼らは節目節目に再会を果たしている特別な存在であるらしい。
今日はそれぞれにとってのバイオグラフィーを辿る時間となりそうだ。
それぞれの創造の原点や魂の願いに光をあてつつ。
彼らのオリジナルの楽曲で時代の流れと意識の変化を感じてみる。1曲目は「The time」彼らの原点はイギリスだ。80年代終わりのイギリスの音楽シーンをも回想しながら、彼らの生活を振返る。ニューエイジの夜明け、スピリチュアリティ、いくつかのキーワードが出てくる。自己のアイデンティティを求めて、人々が口にし始めた精神世界への衝動。彼らにとってロンドンでの数年間はその後の精神生活の支柱となるグルとの出会いのために必要だった期間だ。あの頃すでにベジタリアンだった彼らは今よりもずっとストイックだったという印象。あの頃の私たちが、何を感じ何に葛藤していたのか、彼らの音楽を聴いていると、あの時代の匂いや記憶が蘇るよう。
2曲目は「All I want」ロンドンからインドへと向かう流れ。1996年頃。彼らの居る場所はヒマラヤのダラム・サラという村。ダライ・ラマ法皇の住む聖地である。電気も水道も通っていない物質文明とは隔絶されたような生活のなかで彼らは瞑想と規律ある生活と音楽活動を両立させるべく励んでいる。この曲はそんな生活の中で生まれた曲である。“the Clockwork Flowers”として人生のパートナーとなるアンシアと2人3脚で再出発することを予感して作ったという曲。10年以上、日本へは戻らなかったという事実に彼らの決意のようなものを感じた。10年ぶりの日本でのライブ活動について。今年2月に訪れた小倉北区でのライブで、私は彼らの音楽を聴きながら不思議な感覚に襲われたことを話してみた。彼らは笑って「うん、僕らにとってそれはうれしいことかもしれない」と云った。グルーヴという音楽感覚でインドの音楽にはつきものなのだそう。シタールの聖者といわれるラヴィ・シャンカールの言葉がよぎる。シタールには楽譜はなく、演奏していくうちに高揚し、音楽と一体になって音楽を奏でてゆくというインド特有の音楽感覚については映画「ガイア・シンフォニー第六番」で存分に体感できる。ジョンはブッダの言葉を引用して自分の呼吸にいかに意識的であるかが重要だと語った。インドで暮らすようになり11年、インドで培った感覚がようやく血や肉となりつつある頃、そのグルーヴ感が彼らの音楽に宿り始めている。ライブで私が感じた感覚はこんな感じだった。ある一定のサイケデリックな時間帯に催眠術にかけられたような時があって、その後に覚醒に近いような意識の状態が訪れ、自分の中からとてもクリアなメッセージが湧きあがってきた…ライブの後は幸せそのものの彼らの笑顔にほんの少ししんどい今を生きる私たちは、自分に知らず知らずに課してきたものの重みの意味を教えられる。自由になっていく道はそれぞれだけど、彼らは起伏の多い人生を大いに楽しんでいる。正直に生きながら、思いを外しながら…
3曲目は「Autumn afternoon」ロンドンを離れ、一時的にエイブリ-というイギリスの田舎町に移り住んだ時に作った曲だという。ストーンヘンジで有名な静かな田園地帯。
イギリス時代を終え、インドへと向かう転換期の頃。この十数年は彼らにとっては修業の年月であり、構築しては壊され、また築きの連続であったに違いない。いろいろな困難を乗り越えてきたからこそ、語ることのできる思いでが曲へと込められている。そして今彼らはまた新たな境地を迎えている。
2007年。そして現在。8月最後の日に八幡でライブを行った彼らは、またゆっくりとマイペースに活動を続ける。この先は東京へと向かう。ライブ活動のためにしばらくまた北九州を離れるという。東京の雑踏なんか比べものにならないインドの混沌とした都市の様相についても興味深く語ってくれた。今回、インドへの帰国はゆっくりと考えているとのこと。
4曲目は「Gods gardens」この曲を聴きながら最後のメッセージをもらおうとしていたところだった。次の瞬間、稲妻がはしり、急に音楽が途切れてしまった。落雷のため、一時的に電波が途切れてしまったらしい。初めての出来事に関係者は騒然。そんななか、ほら、やっぱりといったいいたげな面持ちのジョンとアンシア。苦笑いをしながら周囲を気づかっていた。僕らはいいんだけど、この後大丈夫かなと心配していた。最後に何とメッセージを云うつもりだったのかと聞いてみると“All is emptyness”全ては空なり、という言葉が返ってきた。いつも思い通りにはいかなくて。でもそれが人生の面白いところという意味を込めて、と教えてくれた。彼らの軽さはその純粋性の証しのようなもの。純粋にひたむきに音楽を楽しむ2人のこれからの創造活動にエールを送りたい。番組が終わったところで家から携帯電話がなり、娘の熱がまた上がってきたというので急いで家路につく。
もう6日間も続いているわが子の病気もまた、節目節目の大事な意味を含んでいる。感受性の強い娘のこと、諸惑星の作用を身体全体で受けとめているらしい。8月が終わり、そして9月が、思いで深いいくつかのエピソードを携えて始まった。2007年の夏は私には少し特別に感じられた夏だった。そしてすこしづつ秋の気配が近づいてきている。
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