おやじA

「いってらっしゃーい。」

おれはもう５０という大台をきのう越えた。もう、典型的なおやじそのものだ。今年大学受験の娘には、嫌われないようにしようと思っているんだが....。

ま、きのうは、家内とケーキつくってくれたりしてさ。でも、あいつ、男とかいないのかなあ、心配だ。

でも、うれしさのあまり、娘とふたりでワインあけちゃったもんなあ。

おえっ

なんだよ、ゲップが酒臭いじゃねえか。二日酔いのつもりはないんだけどな。

エレベーターは、と。ちょうどおりてきた。

上の階の女だな。なんか、すました感じで、どうも好きになれんな。おなじ年齢くらいなら、そうだな、総務課のH子のほうが買いだな。もうひとりは一番うえのフロアに住んでる男か。

しかし、なんでブスッとしてんだろう。朝から不愉快きわまりない。

おえっ

また、酒臭いゲップだよ。おんなが嫌そうな顔でこっちみてるよ。

おっ開いた。

なんか小走りに行ってくれた。でも、きのうは嬉しかったんだから、いいだろう。

ちょっとコンビニで、あめでも買っていくか。おっと、嘘人軍、彫内監督辞任だって？買わないと。えっと、財布、さいふと、

ちぇっ、きょうは２０００円しかないよ。新聞とあめかったら、あと１７５０円かよ。あいつ、お金補填しといてくれるって言ってたのになあ。

でも、朝はいいよ。気持がいい。あめをなめて酒臭さをなくそうかなっと、

な、な、なんだ。このあめ、まずいぞ。薬草エキス入り？なんで、こんなの、買ってしまったんだろうね。

ま、いいさ。ついてない。これで厄落としだ。

きょうの電車は、と。おっ、やっぱ、ちょっと遅いと座れねえか。

ダッシュ。とれたぞ。やっぱり、あのあめで厄落としだったか。でも、息はぜーぜーだよ。やっぱ歳かなあ。

さてと新聞しんぶん。

なになに、女が燃えるとき

なんだよ、となりのOL、いやそうな目でみやがって。てめえは日経か。なにを読んだっていいだろう。これが、あさの楽しみなんだからよう。

ぶるぶる、な、な、なんだ。おう、隣のOL
にもたれかかって寝てたのか。まずい、娘がプレゼントしてくれたネクタイに、あの薬草入りのあめのエキスがはいったよだれのあとがついてるよ。しみになっちゃうよ。テイッシュ、テイッシュ。あーあ、とれねえや。

ふん、しょせんおれの１日はこんなもんさ。