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外資系経理マンのページ

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たそがれのカツドウヤ 2

簡単な社内での挨拶をおえると、三人そろって、当時。大塚にあった発送倉庫に、コスギとともにむかった。

 コスギは、一世を風靡したユウジロウの付き人をむかしやっていた。その昔話を道すがらずーっと聞かされた。オズとか松竹ものを、銀座並木座や、池袋文芸地下などでみていた自分には、ユウジロウといわれても、太陽にほえろのボスのイメージしかない。

 まして、いま、この映画会社は、女のハダカで商売をしている。ギャップがありすぎる。むろん。ビデオの売りは「ユウジロウ」「サユリ」だが。

 倉庫は、大塚駅から5分ほどいったところにあるマンションの一階にあった。その横のとおりをわたると、都電荒川線が走っている。ときどき、がたんがたんと走り抜ける音と振動が聞こえる。

 着いたとき、ちょうど商品がトラックで着いたところで、総出で荷物を倉庫に入れていた。

「こら、おまえらも手伝え」

 三人はスーツの上着を、その道路にとめてあった自転車のサドルにひっかけ、流れ作業のように、荷物を中にいれていき、15分くらいでおわった。

 コスギは、自分たちが作業をしているあいだ、たばこをふかしながら、所長のオオタとなにやら、話しこんでいた。

この倉庫も、個性的な人が多かった。

 大部屋俳優で、たしかに二枚目の面影をただよわせているシマザキ。撮影技師だったが、体をこわしてこっちにまわってきたヤマダ。

 独身で、噂によれば、資産家の娘だったといわれる50代半ばの女性。いつも、まるで女子大生がさげるようなバックをかかげてきた。そして、いつもたばこがはなせなかったマフネさん。

「おう、おまえからだな。来週から三人交替で研修だ。大塚にいくように。」
「来週からですか?」
「そうだ。1週間交替だ。きょう、あしたは、青山の本社。わかった?」

 ヤマダは、我々が荷物を運び入れ、そして挨拶をし、そして帰るまで、ずーっとシュリンクをやっていた。シュリンクとは、要は、ビデオにかかったビニールの封印みたいなものだ。

 これも、あとで聞いた話だが、みたいビデオを倉庫から持ち帰って、家で楽しんで、それをまた会社にもってきて、シュリンクして、何食わぬ顔して戻していた奴もいたらしい。

 そう、「らしい」。

 大塚から山手線に乗る。通いなれた高田馬場で学生らしき一団がのってきた。きのうまで、おなじ人種であった彼らが、彼岸の人のように、まるで異世界のひとのように思えた瞬間であった。

 




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