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外資系経理マンのページ

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たそがれのカツドウヤ 6

ブラックの駆体。これを持っていると、どことなく呼び出される。そうだ、フジ三太郎とか、アサッテ君といったサラリーマンの漫画にはよくでてきたやつだ。サラリーマンになってしまったんだなあと実感する。

その操作説明をオギクボがした。ウエは、「なあんだ」といわんばかりに、また、キーボードにむかい、がちゃがちゃ打ち出した。

要は、営業ででてるときは、常にポケベルのスイッチはオンにしていること、らしい。それを口がすっぱくなるまでいわれた。

そして、こんどは経理のコンドウだ。

「はい、これ書いて」

なにか封筒を渡され、受領簿にサインした。封筒をあけると5万円がはいっている。

「なんですか?」

「営業仮払いだよ。月末に使用明細提出だからね。書き方は先輩に聞いて。優秀な先輩がおおいからね。」

その口調は、きわめて皮肉交じりに聞こえた。

これが、社会にでてはじめて触れた「経理」という人種であった。ついでにいうなら、あらかじめ一定額を渡しておくやり方というのは、あとにも先にもこの会社だけだ。

懐が深い、というよりも、いいかげんだった、営業の先行逃げ切り会社だったということだろう。

ま、それはそうだ。映画なんていうもの、あたるか、どうかなんて誰にもわかりゃしない。作る側は、いいと思ってつくっても、小屋に人がこなけりゃアウトだから。

でも、その風向きがかわったのは、バブルのころだ。大手が映画づくりに参入。角川とかフジテレビとか、たしか伊藤忠もなんかやっていた。

かれらのつくる、ちがうな、スポンサーの映画はたしかにあかにはならない。でも、お客は入っていない。スポンサーの会社が券を大量に買うから、形は収支いいんだけど、公開前から、金券ショップに500円で大量に売りにだされていたりするのだ。

これじゃあ、制作者も意欲そがれる。これって、けっこう、いまも病巣としては残っているんじゃないかな。

話をもとにもどす。

だから、それこそMBA的な経営なんて、当時のカツドウヤには馴染まないのだ。かつては、小屋主が、現金を片手に本社の興行部にきて、札束をドンとおいて、フィルムを持っていった。

そうなのだ。現金とか、もじどおり。水商売なのだ。だから。夕方でも

「おはようございます」なのだ。

そんなこんなしているうちに、時間はもう6時だ。



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