外資系経理マンのページ

2006/01/06(金)01:26

たそがれのカツドウヤ   10

連載小説(145)

ハナキンは、フルキャストであった。社長、副社長、専務、常務。そんななかで、いくら無礼講だといわれたところで、なごめるものではない。 ナシコダは、ビールに軽くくちをつめると、そそくさと会社をあとにした。 社会人としての礼をつくし、自分も得をする。きらいなことは、遠慮する。今風にいえば、WINWINか。 このテクニックは見習わねばならないと素直に思った。しかし、新人の場合、そんなわがままは許されない。 10人くらいが腰掛けられるソファーを背にしたところは経理で、経理のコンドーが、電卓と奮闘している。 まさか、5年後、経理を自分がやっていようとは、そのときはまだ知るよしもない。 そのときだった。 「おはようございます。」 へんなのがまた入ってきた。 「おうおう、まってたぞ。引き継ぎはすんだのか?」 「ええ、まあなんとか。」 風体のあがらない、年の頃は30くらいか。頭は天然のちじれ毛。 副社長は、興行では実力者といわていたらしいが、実力者なら、子会社のビデオ販売会社にとばされることもあるまいにといまとなっては思う。 その入ってきた男は、その副社長お気に入りの部下で。ウラワという。西のほうで映画館の支配人をやっていたらしい。 この男、土曜も遅くまでのこって仕事をしていたが、これは、能力が仕事に追っ付いてないだけで、仕事人間というわけでは、とうていなかった。それは、はたでみてよくわかった。そして、週末に楽しむ趣味も友達もいなかったのだろう、ことは想像にかたくない。 話をきくかぎりは、この男が直属の上司になるらしい。 ハナキンは2時間ほどでお開きになったが、缶ビールを3缶はあけたはずなのに酔っていない。むしろ、疲れが、肩の上にどーんとおおいかぶさってりかのような重みをかんじた。

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