3月・カンゲキのまとめ
今月は歌舞伎が5、文楽・素浄瑠璃1、演劇1、ミュージカル・コンサート5で舞台が12本、映画が2本でした。今月の舞台について、MVPなどは最後に書きますが、一番衝撃的だったのは文楽シネマでした。人形の足遣いの確かさ、主遣いの胴串の使い方、今の文楽とくらべものにならない!この前「冥途の飛脚」を観たばかりだったこともあり、愕然としました。自分の中のスタンダードが初期化された思いです。【歌舞伎】東農歌舞伎中津川保存会吉例歌舞伎大会@東農ふれあいセンター三月大歌舞伎(昼の部)「名君行状記/渡海屋・大物浦/どんつく」@歌舞伎座三月大歌舞伎(夜の部)「引窓/けいせい浜真砂/助六」@歌舞伎座通し狂言「伊賀越道中双六」@国立劇場俳優祭(昼の部)「二つ巴/石橋/月光恋暫」@歌舞伎座【文楽・素浄瑠璃】KAAT駒之助「熊谷陣屋」@KAAT神奈川芸術劇場【演劇】NODA・MAP「足跡姫」@東京芸術劇場プレイハウス【ミュージカル・オペラ・コンサート】「コメディ・トゥナイト」@新橋演舞場トニー賞コンサート in TOKYO@東京フォーラムA北翔海莉コンサート(with島田歌穂)@東京フォーラムCディズニーコンサート@東京フォーラムA越路吹雪トリビュートコンサート@日生劇場【映画】「ミスサイゴン25周年記念コンサート」@TOHOシネマズ有楽町文楽シネマ「冥途の飛脚」@東京写真美術館・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最優秀作品賞「絵本太功記」「茜の隠れ井」@東農歌舞伎これほど物語に没入できたことが今までにあったろうか、と思うほどリアルな感情が揺さぶられた舞台でした。後で聞けば、彼らはほとんど歌舞伎座の大歌舞伎などをご覧になっておらず、役作りは誰かの演技を真似るのではなく、本読みによって行われているということです。だから登場人物の心情がうかびあがってくるのですね。「道八芸談」を読んでいても真の「本読み」こそが芸の基本とありました。歌舞伎は人から人へ芸が伝わるものですが、最近はビデオで済ます場合もあり、そういうお手軽な時代にあって「本読み」を中心に据えた舞台づくりをずっと続けているこうした地歌舞伎の精神は、きっとこれまでも歌舞伎文化の傍流のようでいて、常に本流を刺激し、支えてきたのだと感服します。中津川の芝居小屋での歌舞伎は、三代目市川猿之助(現・猿翁)にも大きな影響を与え、スーパー歌舞伎を立ち上げる源の一つとなっています。MVP中村吉右衛門&中村雀右衛門@「伊賀越道中双六(岡崎)」雀右衛門のお谷「坊の顔、見てくださいましたか?」吉右衛門の政右衛門「うん、見た。見た」これだけで、2人の愛のすべてが理解できた。この後、その「坊」を奇声を上げて殺す政右衛門の苦しさに、涙を流した。最優秀主演女優賞ケリー・オハラ@トニー賞コンサート in Tokyo文句なし。彼女の歌声そのものが人々に幸をもたらす。自在の音域、潤いのある声、そして囁いても胸に響く歌詞、表現。脱帽の3時間でした。最優秀主演男優賞井上芳雄@トニー賞コンサート in Tokyoトニー賞コンサート生放送の成功は彼あってこそ。軽妙なトークで他の出演者たちをリラックスさせながら自分も「サークル・オブ・ライフ」熱唱など。絶対王者のケリー・オハラがいるコンサートで日本のミュージカル界もやるじゃないかと思わせてくれました。(追記)ディズニーコンサートで「ノートルダムの鐘」のカジモドの歌を歌った海宝直人も素晴らしかったです。敢闘賞中村鷹之資@「二つ巴」(「俳優祭」)まず「二つ巴」という演目自体が素晴らしかった。仮名手本忠臣蔵の七段目から討入りまでの世界観を舞踊にまとめた作品。(「二つ巴」とは赤穂藩の紋で、討入りの陣太鼓のマークとしてよく知られる)一力茶屋の由良之助に密書を届けに来た力弥の役の鷹之資は、花道に出たその瞬間から客席のジワを発生させる!端正な所作、かつ花のある大きな踊りは明るい未来を予感させた。