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gamzatti

2007.05.24
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熊川負傷で代役が橋本直樹に決まった23日の「海賊」公演。
会場の入り口には、配役変更のお知らせ、代役の橋本、ブーベルのプロフィル、
そして熊川自身からのメッセージが掲げられていた。
23日は本当なら吉田/熊川のプラチナチケットなので、
立錐の余地もなし、…のはずだけど、多少空席があった。
それでも9割5分は入っていたかな。
Kバレエには、吉田さんを目当てのファンもたくさんいるしね。
ただ、関係者らしき人が、いつもより目立った気がする。

払い戻しは確実に出ているもよう。
電話申し込みや劇場での再販売には応じていないようだが、
当日券は出すらしい。

「熊川さんがこんな形で観られなくなって、焦る。
 吉田さんのバレエだって、いつ観られなくなるかわからない。
 払い戻しが出たら、また買おうかなと思っている」

昨日会場で会った友人の言だ。

「日本に帰ってきてくれて、いつでも観られるようになってから、
 なんだかそれが当たり前になっちゃってたよね」

そんな言葉も聞いた。
1年に1回、熊川の舞台が見られたら、それで幸せ、と思っていた頃が、私もあったっけ。
その頃に戻ったと思えばいいんだ!
そう思って1年でも待てばいいんだ!
…カラ元気は出してみるものの、やっぱり寂しい。

さて、舞台の感想。
一幕はアリの橋本直樹、ランケデムの輪島拓也ともに硬さが見え、
全体に爆発力に欠けた。が、
二幕は緊張がほぐれたか、躍動感が増していい舞台となった。

橋本は、瞬間「熊川?」と見紛うほど動きがよく似ている。
ただ、役作りとしては、12日に見た彼のランケデムに一票。
昨夜の輪島もがんばっていたが、ワタシは橋本の憎たらしさ満載ランケデムが好きだ。
でも、二幕は、輪島の方がしっかり輪郭を保っていたかな?
物語の終盤、パシャの前での踊りは豪快だったし、
最後、ビルバントに命乞いをする輪島は、真に迫って胸が震えた。

そして昨夜はスチュワート・キャシディがよかった。
多少精彩を欠いていた12日とは異なり、昨夜のキャシディは存在感たっぷり。
ソロのパートも大きな踊りで観客を魅了した。
しかしなんと言っても、彼のサポート力。
随所で吉田の魅力を存分に引き出す。
有名なグラン・パ(全幕ではド・トロワ)では、
まだまだ吉田の相手としては力不足の橋本アリに代わって
アダージオをリードした。
小柄な橋本に対して、背も高くガッシリしているという体格的な差もあるが、
彼に軽々とリフトされた吉田は、気持ちよさそうに宙を舞う。
のびやかに腕を、脚を漂わせる吉田の美しさは、女の私でも溜息を漏らしそう。
橋本もソロパートでは力のあるところを披露、やんやの喝采を浴びた。
熊川も、若い時は
「舞台に一人で立つなら誰にも負けないが」「自分の踊りだけしか見てない」などと、
パートナリングのまずさを指摘されたものだ。
吉田などの一流プリマと組めるチャンスに恵まれ、キャシディのようないい先輩が身近にいる今、
橋本にはこういうところもしっかりと体得していってほしい。

洞窟での吉田/キャシディのパ・ド・ドゥも見ごたえがあった。
キャシディが絶対支えてくれると信じているから、吉田は思いもかけぬ大胆な動きに出る。
それが、空気に変化と緊張感を与え、舞台がギュッと引き締まるのだ。
アリの線が細くなったことで、
図らずもこの物語の主役は「コンラッドとメドゥーラ」だったことを再認識する形だ。

また、メドゥーラの妹・グルナーラ役の松岡梨絵も熱演。
12日の荒井佑子も素晴らしかったが、松岡のグルナーラは、また違った味を出していた。
荒井が誇り高い姫の鼻っ柱の強さと苦悩を演じたとすれば、
松岡は売られた女の悲哀と絶望を表現。
自らの意志に反し、男の前で踊らされる辛さがにじみ出て、思わず目頭が熱くなる。
終盤、ようやく出会えた姉は「逃げましょう、さあ行きましょう」と誘うけれど、
「だめよ、どうにもならないの」と首を振る。希望を打ち砕かれた女の弱さが悲しい。

とにかく、彼らは大きなミスも犯さず、着地で揺らぐこともなく、
熊川なしで舞台を盛り上げ、幕を閉じた。
たしかに、よくやった。
だが、昨夜はまだ、観客も模様眺めだ。
「橋本直樹って誰だ?」「ちゃんとやれるのか?」
拍手もまた、「よかった」より「よくやった」の意味が多いかもしれない。
踊ったダンサーより、ケガをおしてカーテンコールに顔を出した熊川の方に
割れんばかりの拍手をもらうようでは、まだまだ修行が足りない。

海賊」はこれからも続く。
主役は、あの大きな舞台を任されなければできない経験。
一幕、橋本がこぢんまりまとまってしまったのも、守りに入ってしまったからではないだろうか。
重圧に負けず、舞台を務め続けてほしい。
そして、「熊川の代役として、熊川みたいにがんばっている」ではなく、
「橋本直樹」のパフォーマンスとして観客の心にその姿が刻みつけられるよう、
成長していってほしい。
もちろん、熊川にはまだまだ及ばない。
そんなにすぐに追い越されて、たまりますか。






Last updated  2007.05.24 10:37:40
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