|
カテゴリ:美術
3月25日から東京・上野の国立博物館で続いていた「薬師寺展」も、
とうとう明日が最後となりました。 光背をはずした日光菩薩、月光菩薩のお背中を拝見できる機会など、 これを逸したらもはや訪れないかもしれない! …と思う人も多いようで、 最終日を前に、どんどん入場者が増えているもようです。 内容としては、 目玉の日光・月光の両菩薩立像のほか、 聖観音菩薩立像、 仏足石、 吉祥天像(これは絵画)、 神功皇后・仲津姫命・僧形八幡神の八幡三神坐像、 などが国宝です。 薬師寺でもっとも有名な東塔の路盤蓋板、伏鉢もみられます。(これも国宝) その東塔の一番上の水煙の模型もあります。 ほかにも薬師寺の歴史がわかる重要文化財級のものがたくさん。 会場の中で、最初に目を奪われるのは、 聖観音菩薩立像。 華奢で優美で、その立ち姿は菩薩というよりインドの舞姫。 光背のない後ろにまわると、薄衣をまとった腰から下と、張りのある背中の肌のつやとで、 いよいよなまめかしい。 衣裳にはあちこちに飾りがついていてことのほかきらびやか。 正面にまわると、額の真ん中には、透明な光を放つ石が埋め込まれている! 私たち有象無象の観客は、 お立ち台の上の美女(どうみても女性だ!)に群がっているようにさえ感じた。 5月2日に、この聖観音立像が本来いらっしゃるはずのお堂を訪ねた私は、 そこで「複製」の立像に出会っている。 今回、「ホンモノ」にお会いできたわけだけれど、 複製でも十分ありがたかった記憶がある。 そこに「祈り」の環境が整えられているか否か。それは、大きな違いなのだな、と思った。 さて、次のブースに足を踏み入れると、 大きな空間に、かなりの距離をおいて日光・月光菩薩が並んでドーンと立っている。 人がわんさかいる会場の中にあって、 この両像は、遠くからでもひときわオーラを放っていた。 聖観音立像のなまめかしさに比べると、 さすがに日光さん月光さんは、「人を救う」といった大きな愛を具現している。 大きな仏像というと、奈良の大仏とか、巨大なものを思い浮かべるけれど、 そこまで大きくなかったにしても、 やはり「像の大きさ」は「頼りがい」に通じ、「救いの大きさ」につながるのではないだろうか。 やはり光背がはずされているので、後ろにまわる。 「お客様同士、譲り合って、時計回りに少しずつお回りください!」と職員の声が飛ぶ。 ほとんど「メッカ」状態。 聖観音立像の時も、像の周りを人びとがグルグルまわっていたけれど、 ここでは日光像と月光像を2つの中心として、 人びとは8の字を描きながらちょっとずつ動いていく。 じっとひと所に立っていることは難しいものの、 かなり近くでしっかり観ることは可能だし、何度もグルグル回れるから、 「あっという間」ということはない。気の済むまでそこにいられるよさはあった。 聖観音立像に比べると、お背中もシンプル。 飾りもなく、あっさりした裳裾の襞。 むっちりとした背中は、背筋でくっきり二つの山にわかれている。 日光・月光は両手のボーズも、体のくねりも左右対称。 印を結ぶ指はふっくらしていて、ウエストはきゅっとしまっていた。 そこだけ見ると女性的ともいえるけれど、 また正面にまわってお顔を拝見すると、 特に日光さんは、如来的な安定感があり、男性的な力を感じた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 上野の美術館の多くが、金曜の夜だけ閉館時間を午後8時としていることをご存知でしたか? 知人におしえられて、私は昨日の夜行ってきたのですが、 この「薬師寺展」に限っては、 6/4(水)から最終日まで、閉館時間を午後8時に延ばしていました。 私が行った午後6時半でも30分待ちという状況。 日中は、もっとすごかったのではないでしょうか。 昨日は気温もかなり高かったので、待っているだけでも大変だったことでしょう。 臨時の無料給水コーナーまで設置されていました。 昨日は、結局待っている人が多すぎて8時に閉館もできず、 特別に8時半まで観られることとなりました。 すごい人気です。 初夏の夜とはいえ、午後8時ともなればもう真っ暗。 会場を出ると、細く明るい三日月が出ていた。 上野の森を煌々と照らすその月の光は、本当に美しかった。 天高く、たとえ手の届かない夜空の、黒々とした木々の真上に小さく姿を現した三日月でも、 私たちはその輝きの中に神を見る。 たしかに日光さんや月光さんは、すばらしい芸術品だし、 今まで誰に見せるでもなく光背の陰に隠れていたお背中は、素敵だったけれど、 やっぱり薬師寺の金堂の中で 真ん中の如来さんを支えつつ、三尊が揃うことで、 きっともっと素晴らしい本当の光を放つのではないだろうか。 そんな気がした。 この前は、お留守の薬師寺に行ってしまいましたが、 今度はご在宅のときにまたお邪魔しますね。
[美術] カテゴリの最新記事
|