「ホワイトナイツ 白夜」
ホワイトナイツ 白夜まだ「ソ連」という国があって、冷戦体制だった時、幾人かの名バレエダンサーが海外公演中に亡命しました。 「もし亡命したダンサーが、後日飛行機不時着でソ連に捕われたら」というフィクションが、この映画です。 主演は、自身もソ連から亡命したミハイル・バリシニコフ。私は彼のバレエのために見たのですが、これ、ほんとに深くて素晴らしいストーリーなんです。 タップダンサーのグレゴリー・ハインズ(彼もアメリカ脱走兵で逆亡命者という設定)との掛け合いとか、脱出までのスリルも見所ですが、自由のために亡命してなお、募る郷愁をキーロフ劇場をシンボルに表現するところや、親しい人が亡命したことで締め付けが厳しい毎日を送った人々の苦悩など、人物のつくりこみが丁寧で共感を呼びます。 冒頭、バリシニコフが劇中劇としてローラン・プティの「若者と死」を踊っています。名演。彼の内面が、踊りに、そして瞳に顕れ、胸がつまる思いです。ギリギリの精神状態で「死神」である美女に翻弄されるさまは、バレエを越えています。 1985年の映画。ライオネル・リッチーが歌った主題歌「Say you, say me」は大ヒットし、アカデミー賞にもノミネートされました。