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丹野まさよしとがんばり隊

丹野まさよしとがんばり隊

今治市からの報告:さいさいきてや

         
                今治市行政視察報告


      今治市の食と農のまちづくり~地産地消と食育のすすめ
                         訪問日時:平成24年7月18日(水)
                         今治市役所並びに「さいさいきて屋」




1)愛媛県今治市の概況
今治市は、愛媛県の北東部に位置する。瀬戸内海に面し、大型船の生産実績が国内の四分の一を占めるなど造船・海運都市として有名である。また、タオルの生産が全国生産高の約6割のシェアを誇るなど繊維産業も盛んである。
平成17年1月に越智郡11ケ町村との合併により、人口176,532人、面積419.9キロ平米、松山市に次ぐ県下第二の都市に生まれ変わった。


2)食と農のまちづくりの取組み
今治市における食と農の取組みは、消費者運動や農民運動に端を発しており、行政主導ではなく市民の取組みとして発展してきた。
88年には、議員発議によって「食料の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」を発表するが、その背景には、1983年の学校給食調理場の自校式化、学校給食への有機農産物の導入、地元食材の優先使用など、意欲的な地産地消の推進、食育への取り組み等がある。また、その取組みは学校給食からスタートした。したがって、今治市の食と農の取組みは「食育を進めることで地産地消が進む」という明確な方向性を持っており、担当する農林振興課地産地消推進室では、食育と地産地消がセットで推進しているのが特徴である。



3)今治市の学校給食
今治市では、大型共同調理場(24小中学校、21,000食)で給食を供給してきたが、調理場の老朽化に伴う改築の際、市民の声を受けて単独自校調理場方式の導入を決定し、現在は23の調理場で約15,000食の供給が行われている。また、単独調理場への切り替えを契機に地元食材の使用を拡大し、地産地消にこだわっている。
例えば、給食では、今治産特別栽培米(低農薬)や地元産小麦(ニシノカオリ)によるパン、地元大豆による豆腐が提供されている。
また、有機農産物の学校給食への導入も積極的に行われており、玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジンなどの一部の品目が有機農産物で供給されている。その結果、有機農産物や小麦、低農薬の特別栽培米の生産も伸びている。
一方、地産地消の学校給食で育った子供たちを後追い調査したところ、食材を選ぶ時「できるだけ地元のものを購入する」「表示を確認してできるだけ安全なものを選択する」と回答したものの割合が、今治市外で学校給食を取ったグループに比較して高く、地産地消の学校給食は食育効果が表れているとしている。


4)今治市の食育教育
今治市では、学校給食から一般家庭の食卓まで、この運動を広げようとして取組んでいる。
特に、地産地消の安心して食べることのできる農産物を農業従事者だけでなく市民全体で支えようとしている。そのため体験型の学童農園や市民農園などを活用し、市が実践農業講座を主催している。
また、学校現場での食育教育の教材やDVDなども農林振興課の地産地消推進室で企画し作成し、学校現場と農業現場の連携により運営しているのも特筆される。


5)さいさいきて屋
 学校現場の食育、地産地消を推進するうえで、大きな役割を担っているのが学校給食であるならば、一般家庭でその役割を担っているのが、日本農業賞を受賞したJAの地産地消型農産物直売拠点である「さいさいきて屋」といえよう。
さいさいきて屋は、生産者と消費者の顔の見える関係の中で産消提携を進め、地産地消の推進と農業担い手の育成、消費者理解の推進を進め、新しい農業振興の在り方に一石を投じている。

「さいさいきてや」は地元の方言で、「いつでも来てね」という言葉を店名にしているが、現在の売り場面積は562坪、駐車場270台、の「地元産農作物直売所」と、「地消レストラン77坪」、「加工施設(パン工房・フレッシュジュース・アイスクリーム工房)54坪」の店舗施設が中心だが、「地産地消研修施設」36坪、こども達への食農・食育の提案の場となっている「クッキングスタジオ24坪」も併設している。また、その外に、新技術・新品種実証農園519坪、体験型市民農園2,052坪、学童水田267坪も隣接し、一体となって地産地消・食育の複合拠点施設として、年間二十数億円の販売実績を誇る。

また、ポスシステムによって直接生産者と情報を共有することで、新鮮で安心できる農産物を提供することで生産者の所得の向上とやる気を引き出し、さらに加工施設があることで農産物の売れ残りが日本一少ない直売所を目指している。


6)まとめ
 さいさいきて屋の建設・運営は、JAが当たっている。今治市が、助成しているのは、ポスシステムの導入と周辺の市民農園等の支援とのことであったが、今治市の学校給食から始まった、地産地消、食育の長年の取組み、市民運動の積み重ねがあればこそ成功した事例であると感じた。しかし、それを差し引いても新しい農林水産業のあるべき姿を地域から提言し、実現したこの取組みは日本農業賞に十分値するものと感じた。
 最後に頂いた資料に、今治市が全国でも例のない「食と農のまちづくり条例」を制定した思いが載せてあるので、そのまま記載し紹介したい。

「今治市食と農のまちづくり条例は、「地産地消の推進」「食育の推進」「有機農業の推進」の三つを柱として地域の農林水産業の振興を図り、まちづくりをすすめていくという全国でも例をみない条例です。しかも、農林水産業の振興を単に農林水産業事業者の自助努力に委ねるのではなく、行政の責務を明確にし、市民、食品関連事業者の協力を仰ぎ、地域に暮らす人々がその地域の農林水産業を支えていくのだという方向性を明確にしています。
 地方自治体は、いずれも国の行財政構造改革の煽りを受け、行財政が逼迫しています。しかしながら施策を条例に位置付けることにより、しっかりと予算確保を行い、また、施策を市民とともに運動的に展開できるようになります。
 今治市の今後の試みの成否は、なお十分な年月を経て検証することが必要でありますが、安全な食べ物の安定供給と消費拡大のためこの条例を活用し、各種の施策が相乗効果を発揮するような事業展開を図っていきたいと思います。
 そして、こうした取り組みが市町村を単位とする地域づくりの運動として全国に広がっていくこと期待します。」(今治市産業振興部農林振興課地産地消室)

                             文責:創政会:丹野政喜


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