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伝説の相場師・ギャン師匠と共に

伝説の相場師・ギャン師匠と共に

指標連動故のバブル

「持たざるリスク」がもたらす株価バブル

投資アナリスト 松下 律
山一ホールディングス

保有すると価格の変動によって予想外の損失を蒙ったり(ラッキーな場合利益
を得たり)する資産のことを「リスク資産」と言います。株式は価格の変動が
激しい典型的な「リスク資産」です。リスク資産を保有すれば、そのリスク資
産がもたらすリスクを「負う」ことになります。逆に、リスク資産を持たなけ
ればリスクは「負いません」。これは当然のことです。

ところが、機関投資家のファンドマネジャーの世界ではよく、「持たざるリス
ク」ということが話題になります。具体的には、株を持たないリスクという意
味ですが、リスクというものはリスク資産を保有することから来るはずですか
ら、「持たざるリスク」とは実に奇妙な「表現」です。リスク資産を持たない
ことが「リスク」とは一体どういうことなのか?

この奇妙な言い方の意味は、機関投資家のファンドマネジャーたちの置かれて
いる立場を考えますとよく理解できます。機関投資家のファンドマネジャーた
ちは常に、ふたつの「競争」にさらされています。ひとつは、「ベンチマーク
との競争」
です。そしてもうひとつは、「競合他ファンドとの競争」です。ベ
ンチマークとしては、一般的なファンドであれば、トピックスなどの指数が用
いられます。店頭株などに投資するファンドであれば、ベンチマークはジャス
ダック指数などです。競合他ファンドとは、競合する他社の同種ファンドです。

彼らは定期的に「ベンチマーク」と比べられ、「競合他ファンド」と競争させ
られます。長い期間にわたって「ベンチマーク」や「競合他ファンド」に負け
れば、ファンドマネジャー失格となります。こうした立場のファンドマネジャ
ーにとって、自分が持っていない株が予想外に上がったりすることはきわめて
「リスク」のあることとなります。

特に時価総額が急速に増加して、ベンチマークである指数の中における「ウェ
イト」が無視できなくなったような株を自分が持っていないとしますと、これ
はかなり「焦る」事態となります。その株が上がればベンチマークは上がって
しまう。その株を持っていない自分のファンドの成績がベンチマークに負ける。
その株を持っている「競合他ファンド」の成績は上がる。自分のファンドは競
争に負ける。とまあ、こういうことが起こると予想されるからです。

こういう「焦り」を感じたファンドマネジャーの行動は明快です。いっせいに
「その株」を買いに走る
のです。その株の投資価値などは「とりあえず」問題
ではありません。その株を持っていないことによって、ベンチマークや競合他
ファンドに後れを取るかもしれないという「状況」から脱することが重要なの
です。

こうした「持たざるリスク」を意識したファンドマネジャーの行動はたいてい
「横並び」のものとなります。横並びの買いが大量に入れば、株価は「バブル
化」します。2000年のネットバブル時代のソフトバンクや光通信の株価は、こ
うした機関投資家のファンドマネジャーの「持たざるリスク意識」がもたらし
たものと見るのが妥当です。

この数週間、こうした「持たざるリスク意識」がもたらしたと思われるような
「バブル株価」がいくつも見られるようになりました。ヤフー(4689)しかり、
ソフトバンク・インベストメント(8473)しかり、エッジ(4753)もおそらくこう
したプロセスでバブル化したのでしょう。有線ブロードネットワークス(4842)
やGMO(9449)などはいままさにバブル化途上にある株なのかもしれません。

私は、新興市場の株であれば、時価総額が100億円くらいを超えてくると新興
市場株を扱っているファンドマネジャーたちは無視できなくなる、と見ていま
す。時価総額が1,000億円を超えてくれば、大型株を主として投資対象とする
ファンドのマネジャーたちも注目せざるを得なくなるでしょう。エッジの例で
見ますと、昨年の今頃、時価総額は50億円程度にまで縮小していました。多く
のファンドマネジャーにとって、当時のエッジは「あってもなくても関係ない」
株のひとつだったのです。しかし、時価総額が100億円を超え、500億円を超え、
となればそんなことは言っていられません。ある時点で「持たざるリスク」が
極大化し、いっせいに買いを入れざるを得なくなったのです。

前回も書きましたが、バブルは株式相場の華です。非難の対象となるような現
象ではありません。同じバブルでも、機関投資家たちの作るバブルは仕手株と
は性格が異なります。バブルが生成することは「市場が活力に満ちている証拠」
なのです。個人に求められるのは、「バブル化した株価はバブルとして扱う」
という注意事項を守ることだけです。


※アチキの蛇足
途中までの指摘はその通りで、知らざる者は大いに学ぶべし。但し、こうした
バブルを「活力の証拠」とする論は頂けません。歪んだTOPIXや日経225を
指標とする誤りからこのバブルは発生しているんでやんすから。


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