「がんで余命ゼロと言われた私の 死なない食事」(神尾哲男)を読んで
このGWはレギュラーの仕事は少なかったのですが打ち合わせ4本と観劇2本があり結構忙しかったです。皆さまはどのようにお過ごしでしたか。お天気は良かったですよね。息子はオタクイベントと格闘技のトレーニング主人は一人で山登りをしていました。私はGW最終日に主人からの課題DVD「FAKE」と息子からの課題DVD「ニュースの真相」、そしてリサイタルビデオチェックの課題そしてこの主人からの課題図書「死なない食事」(神尾哲男著 /幻冬舎,2017)を読みました。図書館の本なので読んで得たことを忘れないようにこちらにまとめておこうと思います。この神尾哲男さんはフレンチシェフで、「西洋料理の舌」に変えるため、和食は一切取らず不規則な生活、慌ただしく食べる賄い飯、お酒、たばこ、あと狂気に満ちた甘味食など癌になる要素満載の生活をされていらっゃいました。癌が発見されたのは2003年51歳の時、末期ステージ4の前立腺がんでPSAは1520ng/ml(基準値は4ng/ml以下)脊髄3か所、左鎖骨、左鼠径部リンパ節に転移で「明日死んでもおかしくない」という余命ゼロの状態だったそうです。即入院して手術睾丸を全摘出、その後放射線治療と女性ホルモン投与が始まりました。しかし女性ホルモンの効果がなかったので薬を強いものに変えていくにしたがってめまい、たちくらみ、食欲不振、発熱などの女性更年期障害のような副作用が現れ乳房が膨らみはじめました。そして薬を飲んでいれば数値は安定し副作用も和らぐけれど飲まないととたんに症状が悪化するということの繰り返しに、所詮は一時しのぎではないかという疑念が起こります。とうとう効く薬がなくなって、次は抗がん剤だと言われた時、「抗がん剤を使用すれば、改善するのですか」と神尾さんが医師に問いただすと「1か月が2か月にくらいです」と言われ、神尾さんは抗がん剤は遺伝子合成阻害剤であり、癌を治す薬ではないと、抗がん剤を止めることにします。すると病院に、病院はちゃんと説明した。死んでも知らないよ。自己責任ですよ。と言う書類を出され、それにハンコを押して退院されたそうです。神尾さんはその後、自分は料理人なんだから食で病気を治そうと決意し、今日まで14年間癌を抑え込んでいらっしゃいます。決して「食事で癌が治る」と風呂敷を広げていらっしゃるのではなく癌は治ってないいけれど「封じこめている」という表現。癌がなくなったわけでもないということはよくわかっていらっしゃって平和に「癌と共存している」それでいいのだ、というお考えです。すごく粗っぽく言うと神尾さんは最初マクロビからスタートし2年間で一度体をリセット、その後は厳選された食材であれば肉も可としてこれに深呼吸や癌との共存の考え方を生活に組み込んでいらっしゃいます。神尾さんの食療法は以下の通り。<食材>1.地元近くで採れた旬の食材を摂取2.食材は丸ごと食べる。皮まで食べる。3.体を温める妖精食品を積極的に摂る。4.偏った食べ物は厳禁、バランスのいい「雑食」が効果的。5.生命力の強い野菜を摂る。6.動物性たんぱくは元気の源。7.極力、食品添加物は摂らないようにする。そして、料理人らしく食材だけでなく調味料が大事なのだとおっしゃいます。調味料のポイントは以下の通り。<調味料>1.塩 塩化ナトリウム95%以上の塩は避ける2.醤油 原材料に「脱脂加工大豆」とある醤油は使わない3.味噌 自然な「生味噌」を選ぶ。味噌汁は60℃以上には温めない4.油 エクストラバージンオリーブオイル、米油などを使用する5.砂糖 精製された砂糖は使わない6.みりん 砂糖の代わりにみりんを使う7.酢 からだを弱アルカリに保ってくれる<料理>1.主食は玄米が一番。2.水道水は塩素やトリハロメタンを除去して使う3.野菜類は「ホタテの殻」の力を借りて洗浄4.魚や肉は、調理前に塩でもんで不純物を出す5.食材をできるだけ陽性に変えて調理する6.牛乳・乳製品は用いない7.植物性乳酸菌を摂り入れる8.食材の品目数には神経質にならない9.カロリーを気にしない代わりにGI値を重要視10.サプリメントはいらない<生活>1.体を冷やさない2.常に体を弱アルカリ性に保つ3.食事は1日2食4.腹6分目にとどめる5.甘いものは口にしない6.意識的に深呼吸を励行ゲルソン法やマクロビオテックと共通するところも多いのですがこの本で私が初めて知ったことや、オリジナルな点を捕捉しますと<食材>1.「地元近くで採れた旬の食材を摂取」は「地産地消」「身土不二」の考え方です。2.「食材は丸ごと食べる。皮まで食べる」は、「一物全体」の考え方です。3.「体を温める陽性食品を積極的に摂る」は、「陰陽」の考え方で、 料理人らしく、陰の物は陽にして食べるというとおっしゃっています。 確かに食材が料理と言うか体を経て口に入るのですから、 昔からの調理法には意味があるはずです。 「下ごしらえ」「低温で長く煮る」など今の家庭料理から抜けてしまった過程が 大事なようです。4.「偏った食べ物は厳禁、バランスのいい「雑食」が効果的」というのは 学校給食の受け売りではなく、まことに料理人らしい考え方で、 料理のジャンル(「中華」「エスニック」など)ではなく食材と自分の身体との関係で 最も良いものを最も良い方法でバランスよく摂りいれるということです。5.「生命力の強い野菜を摂る」 これは少し驚きました。 今の野菜は「F1種」がほとんどだそう。 「F1種」とは、「ある品種と別の品種を交配させて人工的に作られた1代目」の野菜で 形や大きさが整うように遺伝子操作された品種で1世代かぎりであり、 生命力が脆弱なので肥料使用が前提、そのため農薬も大量に使用されるそうです。 これってモンサントの遺伝子操作種のことでしょうか? 「自殺する種子」という記事を読んでから何年か経ちましたが もう市場にはF1種の方が圧倒的に多い、在来種、固定種を探す方が大変だと 神尾さんに言わせるほどになってしまったのでしょうか。 本当に驚きました。6.「動物性たんぱくは元気の源」 これにらは主人が大変に反応していましたが、私もどうかなと思います。 うちはそんなに元気が出ないということはないので (もともとあまり動く生活でもないかも知れませんが)。 ただ神尾さんは一物全体の考えと絡めて、骨まで全部食べられる小魚を主に 考えていらっしゃるようです。 でも本当は動物性たんぱくの摂取にも身土不二の考えを展開する必要があると思います。 7.「極力、食品添加物は摂らないようにする」 この項は面白かったです。流石食品業界を内側から見ていらっしゃる方です。 添加物の表示の見方。 (1)表示の順番は、 はじめに原材料、その後に添加物を示し、それぞれが多い順に並べられる。 (2)用途と物質名を併記する場合は毒性の高いものが多い。例【発色剤(亜鉛酸Na)】 (3)一括表示は同じ用途の物質が複数あるとき用途のみを表示。 一括なので使用物質がわからず危険度が不明。例【酸味料】 (4)キャリーオーバ―は原材料そのものに含まれる添加物は表示の免除のこと。 原材料に「しょうゆ」と書かれていたら、そのしょうゆに保存料が入っているかなどが不明。<調味料>調味料は良いものを少しずつ使う。この考え方は全く同感です。高くても使う量が少ないのでじっさいはそれほど高くなりません。1.「塩 塩化ナトリウム95%以上の塩は避ける」 「精製塩」とか言いますね。「食塩」とも言いますね。 でも皆さんとても気を遣った言い回しです。このあたりは出版するにあたって 一番編集で苦労するところではないかと、癌食本を何冊も読んで思います。 それでも今はいろんなお塩が選べるようになったし手に入るので いい時代なのかしら。 肉の扱い、牛乳の扱いにも同じような気遣いを感じます。 神尾さんも「肉はいい」とおっしゃっていますけれど 実際は積極的に摂る食品でもないし、時々食べますぐらいの感じですし でも「バランス」のためにあえてそういう風におっしゃっているのかなと言う気も致します。 そしてそのせいで「塩」情報も「肉」情報も混乱していて、いいという人、悪いという人。 実際はきっと「こういう作り方の塩や肉はダメなんだ」と言うことなんだと思うけれど だったら「こういう作り方」をした奴が悪いということになるから 言えないんだろうな、物言わぬ「素材」に静かに責任を押し付けているんじゃないかな と言う気がします。 2.「醤油 原材料に「脱脂加工大豆」とある醤油は使わない」 脱脂加工大豆とは油脂分を搾った後の大豆で、大豆の残りかすです。 これを人工的に無理矢理発酵させ、食品添加物でそれらしい味にします。 実際のしょうゆは大豆・小麦粉・麹・塩のみで作られ、 発酵め熟成過程で1年以上かかりますが カスで作るものはだった1~2か月で作ります。 醤油は表示を見て、大豆・小麦粉・麹・塩のみのものを買うこと。 そしてそれは大手の会社ではないことが多いそうです。 うちで使っている大久保醤油さんも普通には売っていません。 いつも電話して送っていただいています。 <料理>では、3.野菜類は「ホタテの殻」の力を借りて洗浄4.魚や肉は、調理前に塩でもんで不純物を出すこの2つが面白かったです。調理での塩や油やハーブの扱いは、「あく」を出すためのものだと辰巳先生がどこかでおっしゃっていました。昔ながらの調理法にはやはりいものがあると思います。同じことですが5.食材をできるだけ陽性に変えて調理する 方法として・弱火でコトコト煮る・乾燥させる・圧力をかける。押すという意味です。・塩漬けにする・油でいためるという方法を挙げています。これも辰巳先生の方法と重なります。<生活>では、1.体を冷やさない ショウガ湯を飲む2.常に体を弱アルカリ性に保つ クエン酸水、重層水を飲むが新しい情報でした。神尾さんは、ゲルソンでもマクロビでもなくご自身の料理人としての味覚と感覚を武器にひとつの方法を作り上げた方だと思います。癌食はとかく「食材」そのものの効能栄養成分に話が行きやすいのですがそうではなく、昔から料理には「毒を抜き、効を助ける」という面があったわけですから、料理の中にも癌食的な料理(作用)が存在するはずでそれはたくさん発見されたと思います。「よい調味料を少なく」は、まったく同感です。野菜ですら「野菜を食べていればいい」というものではないんですよね。神尾さんは4日に亡くなったそうですが、どんな亡くなり方だったのでしょうか。ご冥福をお祈りいたします。