さて、Android用高精度外部GNSSユニットのDG-PRO1Sを利用して、10Hz化したタブレットを利用して、一般的な1HzのGNSS測位と比較走行をしてみたいと思います。
2つを比較するだけだと、どちらが正しいのか分からないので、本来なら正確に「この区間の距離は〇.〇〇km」と判明している区間を走った上で、どちらのサンプリングレートで測位したほうが良いかを検討するのが良いのですが、10m単位で正確な距離を表明しているコースが思いつかないので、基準として異なる測定方法で距離が判明しているドライブラリーのルートを使用することにします。
というわけで、今回はSAQR番外編/ぐるグルドライブクイズ、SAQR17として公開されている埼玉県飯能を舞台とするドライブラリーのルートを走行してみました。
助手席側のグローブBOX部分に10Hz化したタブレットを設置し、センターコンソールには1Hzのディスプレイオーディオ。

スタート地点の段階で、10Hzの方がGPS Accuracy(GPS精度m)が1m、1Hzの方が3mとなっており、10Hzの方が精度が高いことが分かりますが、DG-PRO1Sを読み込んでいる専用アプリのDrogger GPSでもう少し細かい情報を見てみると、
みちびきは1つしか即位していないものの、

電波の強度は非常に良好。

20の衛星を使用できています。

また、測定精度は、水平方向に0.604m、垂直方向に1.027mとなっており、水平方向の精度が1Hzの3m前後と比較して1m未満と精度が高くなっていることが分かります。
また、DOP(精度低下率)も、
H(Horizontal)=水平方向の精度低下率 : 0
V(Vertical): 垂直方向(高さ)の精度低下率 : 0
P(Position)=位置(3次元)の精度低下率 : 1.5
と、いずれも低値(3.0以下が良好の指標)となっており良好です。
気になるのは、タブレットの方が時間が8秒ほど遅れている点です。
おそらくBluetooth接続による誤差なのではないかと思うのですが、移動に対して位置情報の反応が遅れているわけではないので、とりあえず無視します。
さて、今回走る飯能のドライブラリーのコース、実際に開催されたのは2019年4月だったようですが、それから7年近い歳月が経ち、今回走ってみると、コマ図の目印となる看板が無くなってたり、場所が変わってたり、(おそらく)道路自体もレイアウトが変わっていたと思われ、オフィシャルが設定した距離と比較するのが非常に困難な状態となっていました。
実際、ラリー中何度もコースをロストして元のCPに戻って測定しなおしたりを繰り返すことになり、クイズもできないものが色々出てきたので、途中でクイズ実施は断念しました。
そんな状態でしたので、コース設定時と距離が変わっている可能性があることも留意が必要です。
で、距離の計測結果は下記のようになりました。

まず第一に、「10Hz化によって走行距離は伸びる」と予想していたのですが、全てのCPにおいて10Hzの方が距離が短いという計測結果になりました。
これはホントに意外で、走りながらずっと首をかしげていました。
なにせ、ほとんど直線ばかりのODチェックポイントまでの距離も、10Hzの方が短いのです。
高サンプリングレート化によって正確な距離が出るのはコーナーの誤差が補正されるからですので、コーナーが多い方が差が大きくなると予想していました。
が、直線ばかりでここまで差が出るか?
しかも距離が伸びる方向に補正されると思っていたのですが、結果は逆。
どうしてこのような結果になるのか色々考えましたが、やはりこれは測位精度の差の方が勝ったと考えるのが自然のような気がします。
走行中、10Hzの方は常にAccuracyが1~3m、1Hzの方は2~5mと、明らかに10Hzの方が精度が高く表示されていると見受けました。
つまり、10Hz化によってコーナー中の距離の精度が上がって走行距離が長く計測されたとしても、それ以上にGNSS受信精度によって距離が短めに計測された影響の方が大きかったということなのだろうと結論付けました。
で、2つ目の問題は、オフィシャルとの誤差です。
表を見れば明らかなように、全体的にオフィシャルの計測距離の方が長い傾向がありました。
3CP~4CP間のみ我々の方が距離が長く出ているのですが、実はこの区間も4CPを探す際の目印が無くなっていて、2度ほど通り過ぎたため、計算で導き出したものなので、正確なものではありません。
さて、そうなるとどうしてオフィシャルのものと比較して走行距離が短くなったのか?という問題になります。このままだと、
オフィシャル > 1Hz > 10Hz
ということになり、1Hz測位の方が正確な(というか正解に近い)値を示したということになります。
ドライブラリーの場合、CP間の距離を解答しますが、ここでの正解は「正確な距離」というよりも、「オフィシャルカーが示した(と思われる)距離」です。
自車で走った時に示したtripを参考に、オフィシャルカーが測定した距離を答えるということですね。
つまり、自車とオフィシャルカーのtripの差がどこから生まれたのか考える必要があります。
ここで、逆転の発想で、「自車が10Hzで測位した距離が、本当の正しい距離である」としましょう。
この場合、オフィシャルカーが実際の距離よりも長く走ったと誤認していることになります。
そんなことあるんでしょうか?
オフィシャルの車は、AE86レビンで、計測した時のタイヤは、
サイズ:185/70R13
種類:DUNLOP WINTERMAX(スタッドレスタイヤ) 6分山
空気圧:前後2.1kg/cm2
だそうです。
AE86の純正タイヤは、185/60R14もしくは、185/70R13です。
これらのタイヤの標準的な外径は、
185/60R14:578mm
185/70R13:589mm
です。
また、AE86のトリップメーターは、ミッションでのシャフトの回転数から算出する方式です。
2つのタイヤサイズで外径におよそ1cmの差がありますが、これらのタイヤを使用して走行した時に、正しい距離、速度が出るようになっているはずです。
一方、前述の通り今回のオフィシャルの車には、6分山の185/70R13サイズのWINTERMAXが装着されています。
このサイズのWINTERMAXは外径が594mmですので、半径94.6mmです。
一般に、スタッドレスタイヤの溝の深さは10mmですので、6分山のタイヤということは、溝の深さは6mmになっているということです。
つまり、半径は90.6mmになっているので、外径は569mmになっています。
外径578mm~589mmのタイヤで正常なtrip表示ができている場合、タイヤの外径が569mmに下がっていたら、どうなるでしょうか?
同じ距離を走るのにより多くのタイヤの回転が必要になるので、車のtripメーターが示す距離は実際の走行距離よりも長くなるのです。
仮に578mmの夏タイヤと比較した場合で、101.6%、589mmのタイヤと比較した場合で103.5%も長い距離が表示されていることになります。
つまりこういうことです。

便宜的に、計算上で算出した13インチタイヤと14インチタイヤの夏タイヤ10分山の場合の平均値を正解とした場合と比較すると、

なんとなく1Hzの方が正解に近い感じがしますね。
こうやって見てみると、アベレージラリーの場合は時間換算になるし、コマ図毎に距離の補正ができるので、実は1Hzだろうが10Hzだろうがあんまり関係ないのではないかと思いますが、理論的には正確なのは10Hzの方のハズなので、とりあえず開幕戦は10Hzでの測位でチャレンジしてみたいところです。
一方、ドライブラリーのラリークラスに参加するには、自車がGNSSで測位した距離が正確であると仮定した上で、オフィシャル車の測定距離に合わせるために、ODチェックポイントでの補正係数に加えて、タイヤなどの補正係数を算出し、自車の計測距離にそれらの係数を乗算して解答する方法を取る必要があります。
それでも現状GNSS測位ではCP毎に現状数百メートル単位でオフィシャルとの誤差が出ていること、それをさらに補正してオフィシャルカーのtripを推算する論理的な計算手段が思いつきません。
GNSS測位はやはりドライブラリーのラリークラスには不向きのような気がします。