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『REDSTONE』 3




「ふぅ。」
Stojikovicが物思いに耽りため息をついた。
「ていっ!」


ビシッ


女性の声と頭に走る軽い衝撃で我に帰る。
「こんなに簡単に隙をつかれてる様じゃまだまだね。」
声の主はakariだった。
「はは、一本取られたなこりゃ。」
Stojikovicがポリポリと頭をかき言葉を返す。
「何か考え事?」
「ん~この前さ、ダイアーウルフクエストで会った女性いたでしょ?その事考えてたんだよ。」
Stojikovicの言葉に対し
「もー本気でナンパするつもりだったの?」
とakariが真面目な顔で問いただした。
「いや、違うから。そんな真剣な顔で言わないでよ。」
Stojikovicがまたもポリポリと頭をかきながら釘をさした。
「その女性が持ち帰った紅色の宝石の事覚えてる?」
akariが無言で頷いて返事する。
「あれがダイアーウルフの体から離れた瞬間に他のダイアーウルフ達の気配が変わったよね?」
「うんうん、まるで取り付いてた何かが無くなった感じだったよね。」
「うん、彼女がどんな目的であの宝石を手に入れようとしたのか、そもそもダイアーウルフの情報をどこから手に入れたのか・・・・」
「そう言われればそうよね。何か不思議な人だったね。」
「謎だらけだな・・・何か悪い事が起きたりしてな・・・。」
「えっ!?悪い事??」
akariが驚きの表情で問う
「今の段階では何とも言えない。情報が少なすぎるからね。ただレッドアイの事もあるしね・・・。」
「レッドアイかぁ・・・・あっ!」
「ん?どうした?」
「彼女、レッドアイと繋がってるとか・・・?」
「うーん、それは俺も考えたんだけどね。確証と言うか繋がっている証拠がないからね。仮定の域は今のとこ超えないかな。」
「そうだよねぇ・・。」
「ただ・・」
「ただ?」
「これは俺の勝手な考えだけど何かが起きるとしてその中心にミコトは大きく関ってくるんじゃないかって思ってるんだ。」
「ミコトが?!」
akariが目を大きく見開いて驚いた。
「半年前の十字軍の悲劇の時最後にミコトの気が大きく変化したの気付いたかい?」
「うん、私も少し気になっていたの。何か別人の様なオーラが出てた。」
「うん、多分にゃるらはガラもミコトも2人も殺すつもりだったはずなんだけど最後はミコトだけ捕縛して連れ帰ろうとしてた。それがひっかかるんだ。」
「けどそれも今の状況じゃ判断しにくいよね・・・。」
「だな。“レッドアイ”に“紅い宝石”そして“ミコト”・・・もっと色んなパーツが揃った時に何かあるんかもしれないね。」
「少し調査してみる?」
「おっさんずの事もあるし“レッドアイ”についてはギルド連合も調査に動いているから今俺達が動くのは控えておこうか。」
「そっかぁ。」
「まっ、俺にも少し考えがあるさ。自分達が動けなかったら動いてもらえばいいだけさ。」
「ん・・どういう事?」
akariが首をかしげた。
「それはもう少し後のお楽しみかな。」
Stojikovicが笑顔で答えたが
「もぅ!」
akariには逆効果だったらしくぷぅっとふくれてしまった。
「はは、怒るな怒るな。とりあえず飯でも食べに行くかぁ。」
「ナンパには乗りません!」
「ぐはっ。」
そう言ってakariはふくれたまま自分の部屋へと戻って行った。


「大きい問題の前にやっかいな問題が転がってきたなぁ・・・・。」
そう言ってStojikovicはまた頭をかいて苦笑いをこぼした。












『真説RS:赤石物語』      第1章 『REDSTONE』-3







「ほらっ、これでよかったんだろ?」
そう言うと先程ダイアーウルフから手に入れた紅色の宝石を男に投げ渡した。
「うむ・・・・流石だな。と言いたいところだがギルド連合の者と会ったみたいだな。」
男が怪訝な顔を受けべる。
「むこうはクエストを受けていたみたいでな。余計な事は言ってないから安心しろ。」
「と言ってもそれが何なのか知らないから元々何も言えないがな。」
特に男の表情を気にする様子もなく淡々と答えた。
「こいつを手に入れるついでに奴らを全滅させてくれてもよかったんだがな。」
淡々とした応対が気に食わなかったのか男がさらに顔を曇らせた。
「前にも言ったと思うが無駄な殺生はしない主義でな。ましてや私とは無関係の奴等だ。」
釘を刺す様に男に対し反論した。
「ふん、それ位理解してるつもりだ。だがこれで動き辛くなった事に間違いは無い。」
「まぁ当初の目的は一応達したからな。今回の褒美だ次の指令が来るまでしばらく休みを取ればいい。」
「褒美か・・・・いいようだな。まぁ今回はお言葉に甘えて休まさせてもらうよ。」
そう言い残し女性は手に持っていたポータルを使用し町へと戻った。


「ふん、何が無駄な殺生だ。もう少し利用して始末する事も視野に入れておかないとな・・・・。」
男が不気味な笑みを浮かべる。
そして女性同様にポータルを利用にその場から姿を消した。


次に男が姿を現したのはとある一室だった。
部屋の入口と隅の四方に設置されたタイマツが部屋を照らしていた。
部屋の中はタイマツの火で十分に明るかったが火の揺らめきがそうさせているのかそれとも部屋内部の雰囲気がそうさせているのか部屋全体が不気味な闇に包まれている様な錯覚におちいった。
「にゃるら様、例のものが手に入りました。」
男が紅色の宝石をにゃるらに手渡す。
「ふむ、確かに。そう言えばこれを手に入れるところをギルド連合の物に見られていたそうですね。」
にゃるらの視線が男を刺す。
「流石に情報がお早い・・・」
男は背中に冷や汗が通るのを感じていた。
「ふふ、そう怖がらなくていいですよ。隠密裏に行動するにも限界がありますしね。ばれたところでレッドアイと結びつける証拠があるわけでもない。」
口ではそう言っているが表情が変わっていないところから本心では良く思っていない事が容易に読み取れた。
厳密に言えば良く思ってない事を隠す素振りを見せようとしていなかった。
「・・・・・・。」
男は何かを口に出そうとするが変わらず向けられるにゃるらの視線に言葉が出てこなかった。
「最低限の仕事さえこなしていれば私から何かを咎める事はありません。あなたに出した指令はあなたに任せてありますからね。」
男の心理を読み取ったのか男が返事をする前ににゃるらが先に口を開いた。
「はっ・・・。」
「少しこの宝石を調べたい。席を外してもらえるかな?」
「失礼しました。」
そう言い残し男は部屋を後にした。


「くくく・・・これでまた一つ我が手の元に・・・。」
にゃるらが紅色の宝石を見つめ不敵な笑みを浮かべる。


「失礼します。」
そこに先ほどとは別の男が入ってきた。
「そろそろ墜ちましたか?」
「はっ。手はず通り集落を襲ったところ例の宝石が見つかったとの報告が入りました。」
「それでギルド連合には気付かれたんですね?」
「は・・・はい。表向きにはMOBによる集落壊滅を装いましたのでその情報がそのまま伝わったかと。」
「ふむ。」
にゃるらの一歩先を行く質問に男はただ現状を伝えるだけになってしまっていた。
しかしその現状さえもにゃるらの読み通りに事が進んだだけで報告を受けた男よりもにゃるらの方が現場の状況を把握していた。
「ここまでは予定通りですね。して次段階もぬかりはありませんね?」
「はっ、にゃるら様の仰る通りに配置しております。」
「では手はず通り明日の正午に行動に移す様に。」
「はっ、失礼します」
結局男はにゃるらの指示を受けただけでその場を後にした。


「こうも手応えがないと退屈だな。」
言葉とは裏腹ににゃるらの口元には笑みが垣間見られた。



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