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『VENGEANCE』 5




突如現れたマントを纏った全身黒づくめの男に場が静まる


「最初から無駄な殺生はしないとかぬるい事を言っていたかと思えば最後の最後までぬるい茶番劇か・・・。」
「そうやってその女をかばったという事は組織を裏切ったととっていいんだな?」
男が声を荒立てた。
「ふざけるな!裏切るも何も私が正気だったらお前らのような組織に力など貸すわけがあるわけがない。」
声の主はルジェだった。
ルジェは一瞬のうちにトリーシャを抱え上げ男の攻撃から逃れていた。


「mikusuke義兄さん本当にすいませんでした。後でお話が・・・。今は姉さんを安全な場所へお願いします。風陣も一緒に姉さんと守ってね。」
槍から再度弓矢に持ち替えたルジェがトリーシャをmikusukeに託し敵である男を睨みつけた。
「すまない。無理だけはするんじゃないぞ。」
ルジェからトリーシャを託されたmikusukeはそう言い支援魔法をルジェに施した。


「くく・・・俺様と戦うつもりでいるのか?まぁいいが貴様を待っているのは“死”のみである事を覚悟しておくことだ。」
男が不敵な笑みを浮かべた。
「うるさい、これでもくらえ!ウォーターフォール!!」
ルジェが上空高く矢を放つ。
無数に分裂した矢がそれぞれに氷のオーラを纏い男のもとへ降り注いだ。
「僕も加勢します!グライディングファイアー!!」
風陣も同じように上空めがけ矢を放つ。
ルジェの放った矢と同じ軌道を描きながら炎のオーラを纏いウォーターフォール同様男のもとへ降り注いだ。


ドドドドド・・・・・・


氷のオーラと炎のオーラを纏った無数の矢が次々と男を捕らえていく。
男が纏っていたマントが2人の攻撃によりはつらっていく。
「くく・・・何をしている?おままごとの時間はお終いにしよう。」
次々と振り注ぐ矢雨の中からまるでダメージを受けず平然とした顔で現れたのは全身を茶褐色の毛で覆われたウルフマンだった。
「くっ・・・風陣、このまま援護射撃を頼む。」
武器を槍に持ち替えルジェが勢いよくウルフマン向かい飛び出した。
「syouitirou!これはどうだ!?ファイヤー&アイス!!」


「syouitirou!?止せ、ルジェ。引き返すんだ!!」
ルジェの口から出た男の名前を聞きmikusukeが慌ててルジェを呼び戻す。
しかし勢いのついたルジェはそのまま槍の両端に炎と氷のオーラをともらせ勢いよく槍を振り回した。
風陣のグライディングファイヤーによる炎、そしてルジェのファイヤー&アイスによる炎と氷の波状攻撃がsyouitirouと呼ばれる男に次々と加えられていった。
「はぁはぁ・・・これでどうだ!?」
攻撃の手を止めルジェがsyouitirouを確認する。
しかしsyouitirouの顔面を見たルジェの表情が不可解とも驚きともとれるものへと歪んでいった。


―こいつダメージを受けていない・・?!


ルジェの考え通りsyouitirouは炎と氷の攻撃の中、平然と涼しい顔でルジェを見据えていた。
「mikusukeの言うとおり知識であるお前が俺様に挑んだ時点で既に勝負は決まっていた。」
syouitirouの牙と爪が獲物を狙い定めたかの様に怪しく光った。
「まずは一人目だ。」
そう言うとsyouitirouがするどい尖った爪をルジェめがけ奔らせた。















『真説RS:赤石物語』      第1章 『VENGEANCE』-5







ガギィィッ


辺りに甲高い金属音が鳴り響く。
「ルジェさん大丈夫ですか?」
syouitirouの攻撃からルジェを守ったのはミコトの剣と盾だった。
「ミコト君、助かったわ。」


ドンッ!


ルジェがsyouitirouの攻撃が止んだのを確認し槍を勢いよく地面に押し当てた。
それに呼応するかのようにルジェを中心に辺りの地面が揺れた。
「っと・・・。」
syouitirouが一時的にバランスを崩している隙にルジェがミコトを抱え上げ後方へと退いた。
「グランドシェーカーか。こんなものでダメージなど一切受け付けないぞ?」
すぐに体勢を整えたsyouitirouがしたり顔でダメージがない事をアピールした。


「ちっ・・知識攻撃による手ごたえが全くない・・・ミク兄さんこいつは?」
ルジェが問うた。
「syouitirou・・・元々は直轄ギルドのうちの一つのギルドに所属していたがSCの悲劇以降姿を消した。やはりレッドアイに居たか・・・。」
「あいつの特徴は彼の体毛にある。“ゴッドギフト”とも称されているが生まれながらにして彼の体毛には属性抵抗が備わっていたらしい。つまり・・」
「知識による攻撃は俺にすると一切意味がない。という事だ。」
mikusukeの話を遮るようにsyouitirouが続いた。
「お前らがいかに属性抵抗を上げるかで装備を整えているかは知らんがその分俺は攻撃力と防御力を考えるだけでいい。意味がわかるか?はっはっはっはぁ。」
syouitirouが高笑いをあげる
「さて。」
急に笑いを止め鋭い眼光をミコト達に向けた。
「茶番はこれにて・・・・終了だ!」
そしてそのまま勢いよく走り出しミコト達に襲い掛かった。


ド、ド、ド、ド、ド


「ちっ・・・邪魔が入ったか。」
syouitirouが突然襲ってきた矢を素早い反応でかわし邪魔者を睨みつける。
「ふん、邪魔者で悪かったな。」
目線の先にはStojikovicが立っていた。
「何やらややこしい事になっている様子だが敵はこのウルフマン一人でいいのかな?」
ストの問いにミコトが首を縦にふる。
「そうか・・・・ミコト、ここはお前一人で戦って無事に勝ってみせろ。」
「えっ?!」
Stojikovicの口から出て来た言葉にその場にいた全員が驚く。
「ストさん一体何を言っているんだ!?」
中でも特にmikusukeが声をあげ驚いていた。


「これから始まっていくであろう大きな戦いの先頭に立たなければいけない者がこれ位の壁を越えられない様では駄目だ。」
「それにミコトが考え、戦い、そして勝利を収めたときそれはミコトにとってとても大切な財産になる。」
Stojikovicは淡々と言葉を発した。
一見すると冷たいようにもとれる発言だったがその真意を汲み取ったミコトは
「・・・・行きます。」
覚悟を決め答えた。
「ミクさんも同意していただけますか?」
Stojikovicの問いかけに対し
「ふむ、軍師の立場としては被害を抑える事を優先すべきなのですが・・・ここは止めるべきところではないですね。」
mikusukeも首を縦に振り答えた。
「ミコト君、これを君に預ける。勝利へのヒントはこれにあるはずだ。」
そう言い袋の中から取り出した物をミコトに手渡した。
「これは・・指輪ですか。ありがとうございます。」
mikusukeが手渡した物は2種類の指輪だった。
「なるほど。じゃあ俺からも1つだけヒントを送るかな。“油断”は最大の敵だ。ミクさんと俺からのヒントの答えは戦いの中で自分で導き出してこい。さぁ、暴れてこい!」
そう言いStojikovicは景気付けにミコトの背中を叩き戦場へと送り出した。


「俺様が・・・これ位の壁だと・・・?俺をなめるのもいい加減にしろよ?」
「そのガキのハラワタを引きずり出して一人で送ったことを後悔させてやる!!そしてその後はお前達全員の番だ!!」
Stojikovic達のやりとりを前にsyouitirouの怒りはピークに達し今にも襲い掛かってくるかの如く闘志を剥き出しにしていた。


―ふぅ・・・落ち着け。


心の中でそう言い聞かせミコトが静かに剣を構える。


天からの贈り物ゴッドギフトを携えたsyouitirouと小さな勇者ミコトの戦いが今、幕をきって落とされた。












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