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第3章 『成長』


「その顔だと今日も調子悪かったみたいだねぇ。」
「うるせぇ。最近海岸沿いにもMOBが増えだしてよギルド連合から傭兵雇ったものの落ち着いて漁なんか出来やしねぇ。」
「それは気の毒に・・・ん?手に持ってる物はなんだい?」
「これ?網に古めかしい小さい宝箱引っ掛かってたから金目の物でも入ってるかと思って拾ったんだがよこんなもんしか入ってねぇ。」
そう言い手にしていた一冊の古びた本を見せた。
「どれどれ・・・」


 大いなる意思の下に出会ってしまった二つの星は
 お互いに共振し合いその輝きを増すであろう

 それぞれの運命の旅路へと歩みを進めた星達

 一つは 出会いの中に人の温情を 
    世の行く末に希望を 経ては天の御子へ

 一つは 出会いの中に人の矛盾を
    世の行く末に無常を 経ては地の御子へ

 再度、御子達が交じり合う時
 本当の運命の歯車は回りだす・・・


「なんだこりゃ?意味がわかんねぇ。」
「だろ?だからよ焚き火を熾すのに使えねぇかと思って持ってきたわけよ。」
「なるほどそりゃいいわ。」
「「はっはっはっは」」











『真説RS:赤石物語』      第3章 『成長』-1







「ん・・・ふぁ~」
カーテンの隙間から差し込む光と小枝の上で仲良くじゃれ合う雀の鳴き声が一日の始まりを告げていた。
昨晩はおっさんず入隊をお願いするつもりが流れで宴会に参加してしまった。
お酒のせいか元がそうなのか任務の間の休息ではめを外したのかはわからないが陽気な人達に囲まれ楽しい一時を過ごす事が出来た。
GM(ギルドマスター)はあいにく任務の為席を外していたが面接のため今日一時的に戻ってきてくれるらしくそれを待つ為に用意された宿で一夜を過ごした。


「何時頃かわからない。って言ってたよな・・・修行でもして待つかな。」
一通りの身支度を済ませ宿屋のすぐ近くにある空き地へと向かった。


「あれが噂の剣士くん?」
「そうよ。」
ミコトが修行をはじめ幾ばくか経った頃空き地から少し離れた林の中の一本の木の上でミコトの修行風景を観察する2人組の姿があった。
「うんうん、集中して修行出来てるしいい面構えしてるわ。あかりんの言う通りセンスはありそうだね。」
「でしょ?」
2人組の内の1人は普段着を身にまとったakariだった。


「さて・・・少しお手並み拝見させてもらうかな」
そう言うと背中にかけてあった弓を手に持ち変え矢筒から一本の矢を取り出し矢尻を弦にかきた。
「え?何するの?」
急にとられた行動にakariは少し慌てた。
「大丈夫、急所は外して狙うよ。ま、俺からのちょっとした入隊テストだな。」
片目を閉じ慎重に狙いを定めゆっくりと弓を弦を引き始めた。


ギチ ギチ


弓が今にも折れんばかりに撓る。
狙いを見定める冷静な顔とはうらはらに弦を引く右手の筋肉はまるで生き物の様に隆起していた。
静かに矢にあてがわれていた指を外す。


ヒュン


放たれた矢は狙い定められた一点を目指しながら風を切り裂く。


ザクッ


ポタッ ポタッ


地面に数滴の血がしたたり落ちる。
不意に襲ってきた矢はミコトの腕をかすめ地面へ突き刺さっていた。


―くっ・・・どこだっ?
矢の飛んできた方を向き必死に矢の出先を探した。


「ほぅ、これは・・・・・行こうかあかりん。」
弓を再び背中に担ぎミコトのもとへと向かった。
「あっ!ちょっと待ってよ。」
遅れながらakariも続く。


「なんですかあなたは?」
剣を片手にミコトが問う
「襲った本人を目の前に質問してくるなんて優しいねぇ。」
不敵な笑みを浮かべながら男が答えた。
「ちょっと!ストップ!ストップ!」
「! akariさん?!」
不意に自分目掛け飛んで来た矢そして謎の男性、続いて現れたakariにミコトは困惑の表情を浮かべていた。


「もう!私いないと話はじまらないでしょ!!」
「すまんすまん。さっきの見たらいてもたってもいられなくてさ。」
少し怒り気味のakariを誤魔化す様に笑みを浮かべ答えた。
「ミコト君・・だったね?傷は大丈夫かい?」
「え・・・大丈夫ですよ。」
薄皮1枚切れていた程度だったミコトの腕はすでに血が止まっており痛みもひいていた。
「急にすまなかった。君の力を試したくてね。」
「あの・・・どちら様ですか?」
「あぁ、自己紹介がまだだったね。私は・・・」
「おっさんずGMのStojikovicよ。ストとかステって呼んであげてね。」
まだ怒っているのかとげとげしい言い草でakariが“自己”ではない紹介を行った。


「・・・・ぷっ」
Stojikovicの困った表情を見て今まで強張っていたミコトの表情が緩んだ。
「ごほん・・・え~君の人柄などはあかりんから聞いてるし君の力も今試させてもらった。」
「おっさんずはミコト君の入隊を歓迎します。一応確認だが・・・ミコト君はおっさんずに入り死と隣合わせの任務をこなしていく覚悟はあるかな?」
真っ直ぐ真剣な視線がミコトへと向けられた。
「はい!よろしくお願いします!」
同様の視線を返し答えた。
「では早速手続きに入ろう。あかりん、アンちゃんを呼んでくれないかな?」
「OK」
「ミコト君、これからアンちゃんと一緒に古都のギルド協会に向かってもらう。そこで本登録を済ませば正式におっさんずの一員として任務を共にしてもらう事になる。これからよろしく」
そう言うとStojikovicが右手を差し出した。
「わかりました。色々とご迷惑おかけしますがよろしくお願いします。」
同様に右手を出し握手を交わした。
「お~ミコト、おっさんず入隊おめでとう。」
ミコトが声のする方へと顔をむけるとAndrsenの姿があった。
「こんにちは。本日よりよろしくお願いします。」
「アンちゃんミコト君と一緒に古都のギルド協会へ行って登録の手伝いお願い。」
「了解しました。任せておいてください。」
Andrsenは軽くこぶしをつくり胸にトンとあてた。
「じゃあ早速行こうか」
そう言いながら追放天使へと姿をかえたAndrsenは両手を天へとかかげた。
すると淡い白色の光の輪が現れた。
「こいつは古都ブルネンシュティング行きのポータルだからこの中に入ると古都に行けるよ。先に入るね。」
ポータルと呼ばれる光の輪の中へAndrsenが姿を消す。
「では、行ってきます」
軽く一礼しポータルの中へと入った。


「どうだった?本人を見た感想は」
ミコトが行ったのを確認しakariが問いかけた。
「彼、強くなるよ。育て方次第ではおっさんずの誰よりもね。」
落ち着いて答えるも声は多少興奮気味だった。
「あら、ストがそこまで褒めるなんて珍しいわね。是非聞かせて欲しいわ。」
「一応GMだからね。強さでNo1は無理でも洞察力と人を見る目ならギルメンにも他のGMにも負けない自信はあるよ。」
「そうだねぇ、基本的な事から言うけど・・・」
Stojikovicが静かに語り始めた。


「戦う上で五感はとても重要なわけだけど他に第六感、まぁ平たく言うと“勘”が優れているかどうかで戦況は変るんだよ。」
「今日みたく遠方からのアチャによる不意攻撃は五感はほぼ役にたたない。飛んでくる矢を目で確認したり風切り音を感知してからだと間に合わないからね。」
「ならどうするか。それはそこにないはずの気配を感じ取る事が出来るかどうかなんだよ。」
「戦う上で出てしまう殺気や闘気の類は最も検知しやすい気配だから戦いのエキスパートになればなるほどその気を抑えられるし逆に気を読み取る力も優れているんだ。」
「ってあかりんクラスの剣士に言う事じゃないか。」
「ううん、勉強になるよ。」
akariは首を横にふり話の続きを促した。
「うん、六感なんて言うけど実際はかなり上位クラスにならないと戦闘で生かされる事なんてないんだよ。正直今のミコト君なら反応できずにいたと見越していた。」
「実際、ギリギリで気付いた位で反応するには至らなかったよ。でも軽く腕をかすめる程度で済んだ。何故だかわかる?」
「ん~・・・あっ!たまたまでしょ!?」
自信満々に答える。
「なんでだよ。それじゃあ褒めるわけないでしょ!」
「ごほん」
相変わらずの天然にいったん咳きで間をあけ話を続けた。
「それは頭じゃなく体が無意識的に反応したんだよ。」
「一流の戦士なら長時間の戦闘を経て全身の感覚が鋭くなった時によくある話なんだけど今のミコト君の力から見ると才能というよりは特別な能力を身につけていると言っても過言じゃない。」
「すごいね・・・」
「まぁ・・やる気、育て方ひとつで一般的な剣士で終わりの可能性もあるからね。どっちにしてもこれからが楽しみだよ。」
1人の青年の将来を考えるStojikovicの顔からは笑みがこぼれていた。



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