2006/02/08(水)13:46
火の粉 雫井脩介 ★★★
:あらすじ:
自白した被告人へ無罪判決を下した元裁判官に、
今、火の粉が降りかかる。
あの男は殺人鬼だったのか?
梶間勲の隣家に、かつて無罪判決を下した男、武内真伍が越してきた…。
有罪か無罪か。手に汗握る犯罪小説。
:感想:
なんだか盛り沢山の本でした。
ごく一般的な家族の崩壊はこんなに簡単なものなのですね。
「死刑」を決めねばならぬ裁判官という職を退官した父、
良妻賢母の典型のような母、
家族を持ちながらも親のすねをかじり、
いい年して受験生な息子、
娘を愛しながらも育児ノイローゼに陥りそうな生真面目な嫁、
そして、
一見親切な隣人の謎。
それぞれのキャラクターといい、展開といい、
上手に描けてると思うし、色々考えさせられる一作でした。
が、前半が丁寧すぎる嫌いがある分、
クライマックス以降は急ぎ足すぎて、
少しあっさりしているように感じました。
隣人にスポットを当て、
これでもかと焦らしておきながらのラストは、
なんだか物足りなくて、
これだけボリュームのある作品なのに、
しかも、考えさせられるテーマの多い作品なのに、
読後に惚けれず、
微妙なフラストレーションで別の本を読み始めてしまう始末。
これだけの内容ならば、
「もう今日は読書はいいや」と、満腹にさせてもらいたかった、
というのが正直な感想。
なんていうか、巧妙だったのに、
最後に新堂冬樹化しちゃって、
デジャブを覚えるような感じで、
とっても勿体無い作品でした。
とは言え、こんな隣人絶対イヤだし、
家族間に問題なくても、
こんな簡単なことで崩壊させられちゃうんだなって
思うと、本当に怖いです。
愛する家族がいる人こそ、読むべき一冊かも。