オバマ米大統領の就任演説雑感
言葉の持つ力が信じられている社会はやはり強いな、としみじみ感じ入りながら演説全文に目を通しました。理想が言葉にこめられて、その言葉が現実を動かしていく。アメリカと近代社会の希望を背負い、歴史の大きな節目を意識させてくれる演説です。ただし日本語にしてしまうと、朝日新聞版と読売新聞版を比べればすぐわかるように、全然違うものみたいになって出てくる(笑)。朝日の方がかっこよさげで、読売は直訳風で堅い感じ。というわけで、表現のことはまるで語れませんが内容のことでいくつか印象に残ったくだりがありました。 歴史の認識のこと:あそこにでているファシズムって、私たち日本との戦いも強く意識されていますよね。勝利宣言の時の演説には、「湾に爆弾が落とされた」って書いてあったから間違いありません。そりゃ、パールハーバーのあるハワイにいらっしゃった以上当然ですが。就任演説では少々表現が丸くなったとはいっても、ついこの間打ち勝った敵として日本のことはシンプルに認識されているんです。もちろん原爆落としたっていう反省はナシ。ううう、ここは普通にアメリカらしくて悲しいです。また、打ち勝った敵として共産主義も出てきましたが、BBCのサイトによれば中国のニュースはここを削除して報道したとか。。。それもナンですが日本のメディアは人ごとみたいに騒ぐだけでちょっとノーテンキすぎませんか?やはり、米国的民主主義の価値を際立たせるためには敵が必要ですので、イスラム世界とは対立的な構図にないことを丁寧に語っておきながら、政治体制には容赦がない。 責任の所在と助け合い:ある意味では究極に国民一人一人の責任が強調されています。演説前日に奉仕活動として自らペンキ塗りをやっているくらいですから、体をちゃんと使って自らが仕事せよ、ということです。失業している人をただ見ていないで、自分の仕事時間を減らして分け合えと主張している!ところなどはかなり泣かせます。残業する正社員のかたわら非正社員をクビにする企業などはもっての他だということでしょう。かなりすごいことをいってると思います。考えてみると、政府ができることはわりと少ない、と言われているような気もしなくもない(^^;;;;。 もしこんな演説をする政治家が日本にいたとしても、悲しいかな誰にも本気だって信じてもらえないでしょうね。この国でも言葉がもう少し政治の場で力を持てるようになるといいのですが。