瓦斯灯ポルカ

2006/09/01(金)01:41

凋落センチメンタル 一章

詩・小噺(19)

チャプター1 真っ白な部屋。 窓もなく扉もない。何もない。 部屋と言うより白い箱のような印象を受ける。 中心に椅子。 その上に王冠を被った少年。 その王冠は白く透き通っっていて、ひどく硬く、脆い印象を受ける。 チャプター2 先ほどの部屋。 中心の椅子の上の少年。 その頭に王冠は見られない。 少年の足元、すなわち椅子の下あたりから萌芽。 みるみるうちに広がり、花をつける。 部屋は明るく、賑やかになる。極彩色の部屋。 ただし、白い部屋だった頃のような清冽さはあまり感じられない。 椅子の上に少年は居ない。 かわりに、ぽつんと王冠が置かれている。 チャプター3 部屋は無くなり、草原のような場所。 ただし、避暑地のような爽快感はない。 かと言って荒地のような虚無感はない。 丁度その中間、陰と陽、快と不快が交じり合っているようだ。 草原中央に先程の少年、こちらを見ている。 チャプター4 少年のアップ。 瞳をそっと伏せ、口を開く。 「 い つ ま で も 王 様 じ ゃ い ら れ な い の ? 」 ぶつん。 映像が切れ、視聴覚室のスクリーンのみが白く光りをはなっている。 機械を止める事もなく、頬に伝う涙を拭うこともなく、僕はただ画面に見入っていた。 二日前の話をしよう いつからだったろう。席から教壇までの距離が何キロもあるように感じるようになったのは。 いつからだったろう。時間が経つのが遅く、一時間が何千年にも感じるようになったのは。 いつからだったろう。教室の前に立つと足がすくみ、中に入れなくなったのは。 ああ、確か二学期が始まってすぐくらいだったか。 こうして僕が所謂「保健室登校」をし始めたのは。 別に苛められてたわけではない。そこは勘違いしないで欲しい。 友達は僕には充分過ぎるほどいたし、成績も中の上だ。 テスト前では僕の日本史ノートがぐるぐる回る。 剣道部に所属し、三年生が引退した今至らないとは言え、主将を務めている。 生徒会も一年の時から続け、副会長として裏から生徒会を牛耳っている。 自分で言うのもどうかとは思うけどかなり恵まれていると思う。 一番の原因になりそうな大学受験でさえ、推薦で決まりそうだ。 いじめでない。進路でない。かと言って家庭が原因でもない。 『きっかけは?理由は?思い出せない??』 なんて言われるが、あったような気もするし、そんなもん元々無かった気もする。 仮にあったとしても、そんなものとっくの昔に行方不明だ。 『理由行方不明』のまま、僕は学校に来たり来なかったり、保健室で友達が持ってきてくれた課題をやったりやらなかったりしていた。 この日も保健室で課題をたらたらとやっていたのだが、どうにも気分が滅入るので映画を見ることにした。昨日借りた「時計仕掛けのオレンジ」だ。我ながら絶妙な選択。 これ観て、真夏にかび臭い映画館から出て来て「うわー」ってなるような気分を味わおうと思ったのだ。鬱には鬱で対抗するしかないのだ。下手なことをすると逆効果になりかねない。 「今は五時間目の授業か、じゃあ視聴覚室が空いてるな。」 そう思い、視聴覚室のある北校舎に向かう。 鍵はヘアピン二つで簡単に開くのだ。まぁ、僕しかしないけどね。 勝手に入り込み、プロジェクターの電源をオンにした。 埃っぽい、こもったような匂い、この匂いが好きだった。 DVDをセットし、席についてさぁ、観よう!という時に、窓際の席に何かが置いてあるのを見つけた。ひとまず明かりをつけ、それが何であるか確認してみる。 「DVD?」 パッケージには何も書かれておらず、真っ白であった。 パソコン部の自主制作のものだろうか。 それとも個人。 忘れ物だとしても、名前が書いてないから届けようが無い。 あ、中身観ればいいのか。 誰かの忘れ物で、しかも自主制作のモノとなると、観てはいけない気もするが、やはり中身は気になる。 ちょと観るだけ・・・。もしかしたら、持ち主映ってるかもだもんね。 着地点はDVDを見つけた時に決まっていた気もするが、結局好奇心には勝てず、観る事にした。しかし、誰か来るともしれない教室で、得体の知れないものを観るのは考え物だ。取りあえず、DVDを鞄にしまい、普通に映画を観る事にした。 ここまでが二日前の話。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 何を思ったか突然小説。 毎日は無理かもしれないけど、こつこつと気が向いたら書いてゆきます。 拙い文章ですが、どうぞお付き合い下さい。

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