2012/02/22(水)21:57
「3.11以後」 茂木健一郎・竹内薫 (中公選書)
「3.11以後」 茂木健一郎・竹内薫 (中公選書)を読んだ。
どうもしっくりこない。
確かに、感情的な反原発の風潮には一石を投じたい。僕自身過激に反原発を唱えるつもりは毛頭ない。今の日本ですぐに原発を全廃するのはかなり難しいことだろうと不可能に近いのだろうと察する。
福島に住んでいれば、福島アブねえのかけ声にはうんざりだ。
が、何か引っかかる。例えば、以下の内容
抜粋始め(P27)
茂木: 竹内にしても私にしてもそうですが、物理学科を卒業して博士号を持っているので、一般の人よりも原子力についての知識があります。一般の人というのは、原子力について正 確な知識を持っているわけではありません。知識や技術を持っているそうした私たちが、「現在のレベルでは、それほど不安感を持つ必要はない」といった発言をすると、知識が豊富でない人たちは、理解するより先に、不安感を高めてしまう傾向があるらしいのです。
抜粋終わり
知識や技術がない私たちが不信感を持つのは当然じゃないですか。
安全なはずの原発が爆発したんだもの。
専門家といわれる人の意見も様々なんだもの。
もちろん、過激な反応をする一部の人たちには冷や水をかけたいという思いはあります。
でも、原発事故に伴う不安感をいっぱひとからげにして、非科学的だと笑うのであれば、想像力がなさ過ぎではないだろうか。まあ、茂木の真意は、もっと大人なんだろうが。
さらに、
抜粋始め(P142)
竹内:さらに私は、影響力のある人が「反原発」を掲げることにも、大きな問題があると思っています。たとえば、村上春樹さんがスペインで行ったスピーチで「3.11」による原発事故と採りあげ、「日本人は、核に対して『ノー』と叫び続けるべきだった」と語りました。村上さんは間違いなく偉大な文学者だと思いますが、おそらく原子力に関する専門知識は持ち合わせていないと思います。作家としてたいへんな影響力のある村上さんが、内容把握に専門知識が必要な重大事件について、「良心」や「直観」のみで意見をあえて言ったとき、結果として国の行く末を大きく左右してしまう。それはやはり危険なことだと、行っておかなければなりません。
抜粋終わり
言論統制ですか。知識のないやつは黙ってろと。
すでに、専門家たちは原発を爆発させてしまい日本の行く末を大きく左右してしまっているではないですか。
どうも、現状認識が乏しいとしか思えません。
科学という名目のパターナリズム。レイシズム。
こちらの方が危険なにおいがしますが。
村上春樹の発言は、自分たちを省みた上でのものです。私には、これは、単純に反原発を叫んだ発言ではないように思います。
あくまで勝手な解釈ですが、村上は“こんなこと(原発事故)になるなら核にノーを言い続けるべきだった。”と言っているように思えます。
村上春樹は、不条理の悲哀を味わう側の心情に思いを寄せているのだと理解します。それは、文学者としての一つの役割かも知れません。
おそらく、この二人の著者の真意は私が受け取ったものよりも大人なのだろう。
でも、感情的であることを自覚しながら書いてみました。