第1の扉@佐藤研

2006/07/30(日)23:57

鎌倉への旅

日記文芸(8)

 勤務先の位置する市が一般の人向けの講座を開いていて、今日がその当番。市内の3大学から少しずつ教員が参加し、1回完結の話をするというものだ。受講生の方は、様々なジャンルの話を聞いていくことになる。  今回の佐藤のテーマは「中世・鎌倉の旅」。ちょっといじれば拙著のタイトルという、何のヒネリもないテーマだが、鎌倉時代に鎌倉の街を訪れた人と作品という話をした。学内(現在は市川市とのタイアップ)の公開講座もそうだが、こういう講座に出る方々だからという条件付きとはいえ、受講する方々の知的好奇心の高さはかなりのものだ。  たとえば、西行が鎌倉を通過したのは陸奥(東北)への東大寺勧進で……でざわっとなる。「あっ、弁慶の勧進帳を思い出しましたか?」と聞くと、「うんうん」と肯く。それで、勧進帳とは……という話をすると、「へぇ~」とか「あぁ、そうなんだ」のような反応が瞬時に返ってくる。  たとえば、鴨長明の鎌倉訪問という話で、「行く川の水は……」と暗唱すると、「あぁ、あれね」といった反応がある。  そういう反応は、私の体験では公開講座とよみうり文化センターの講読講座に顕著である。勤務先に国文科があった時代には、まま見られたが、段々と減ってきている。だから、こういう話が普通にできるというのがとても嬉しい。 佐藤は、元々、現在の暗記軽視の授業を疑問視しているのだけれども(脳みその容量から言ったらいくらでも入るのだから)、若いうちに覚えておくこと―そこに意味があるのか否かは不問で―の幅が、ご年配の方々はとても広いように思われる。子どもなんて、つまらないこと(本人には切実なこと)をいくらでも覚えるのだから、もっと古文を覚えさせて良いのにと思う。 90分ギリギリまで話をしたので、講座終了後に何人かの方から質問を受け、それに答えているうちに30分以上経過。こういう質問攻めも嬉しい限りである。幸せな気分をひきずって、19年ぶりの素敵な“彼”(週番日誌参照)に会うために、有楽町にくりだした。幸せな1日だった。

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