たまらん坂
黒井千次こんな人、全然知らなかったが、モノ書きさんだ。文庫本のタイトルに釣られてペラペラとめくってみた。「アール・シー」「え?」と書いてあったので、借りることにした。主人公の同僚が住んでるトコが多摩蘭坂にある。あるとき、この同僚が「『多摩蘭坂』は実は、『たまらん坂』の当て字じゃないのか?」と、ふと思いつき、その名前の由来を探し歩く、というもの。という大きな表ラインがあって、裏ラインには、坂道を上る男と坂道を下る女が描かれている。キヨシ目当てで借りてみたが、やっぱ、買うほどのモンではなかった。歌もそうだが、もっと強烈なフック・ラインが必要だな。さて、ここんとこは「眠狂四郎」を読んでいる。映画の彼とは違う狂四郎が懐手で歩いている。週刊誌小説の真骨頂が見えたか、と思う間もなくオレの胴は土埃の中に倒れ、支えを失った首は、まだ宙にあった。さてさて、何度見ても、雷蔵は殺陣がヘタな気がする。サマになっていない。その理由は、多分「手が小さい」からではないだろうか?拳を握ったり、刀を掴んだりした絵面にどーも説得力がないのである。ヤクザものや、スパイものもやはり不完全な出来映えだ。苦悩する社会不適応者は、見事に演じられるのになぁー。惜しいゾ、雷蔵!とても、殺人剣の無頼者には見えないのだ。