眉毛に掛かる前髪

 私の祖母は私が平成元年9月に娘を出産したその前日、この世を去ったが、かなりのしっかり者で、大学から夏休みで帰省する私達のために机に上がって棚の上を整理していて転落し腰を圧迫骨折するまでは、家庭内の実権の殆どを手中にしていた。

 そんな祖母は私たちが小学生の間、どんなに嘆願しても決して前髪を伸ばさせなかった。後ろは刈り上げ。まさに「わかめちゃんカット」を貫かせた人物だ。
 当時は長い髪に憧れ、何度も何度も散髪を拒もうとしたが、結局引きずってでも散髪屋さんへ連れて行かれ、店から出る時にはさっぱりとわかめちゃんになっていた。

 しかし、「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、そんな子供時代をすごしたせいなのか、この年になって、眉毛に掛かる前髪が私にとっては大きなストレスの素となる。
 視界に前髪が下がってくると、立っていても座っていても、食事をしていても事務仕事をしていても、トイレで用を足していてもくしゃみをしても、とにかく何をしていても前髪が気になり物事に集中できない。

 前髪が伸びてきて眉毛に掛かる不快感は、とにかく私をひどくイライラさせる。だから、眉毛は自分で手入れしない私だが、散発のインターバルの間に数回、必ずはさみを持ち出して前髪を切る。夫は私の切った前髪を見て、必ず爆笑する。私はそれをむしろ楽しんでいる。
 さて、この次はいつ切るか。かなり視界を遮っているので、私のストレスもそろそろ頂点に達しようとしている。


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