101381 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

花と語りし少女

ここはレンガで造られた建物が建ち並び、どこか西洋を感じさせる町並みである

そこから少し離れたところには四季に合わせて咲く花畑があった

これはその花畑で出会った二人の少年と少女の物語である…

――――「花と語りし少女」 作:幻竜

「あっついなぁ~」花畑の一角で少年は汗をぬぐった

少年は片手にキャンパスを持ち、もう片手に鉛筆を持っている

現在少年は大きく咲き誇る向日葵の花を一生懸命描いていた

「花畑は近くではここかないし、ここで書くのが一番だな」と微笑んだ

「でもここってよくない噂がたくさんあるんだよなぁ…」と呟きながらも絵を書く

すると背後から人の影が伸びているのに気づき、後ろを振り向く

「あら?作業の邪魔だったかしら?ごめんなさいね」と謝る少女は白い日傘をさしていた

「いいえ、邪魔なんかじゃないですよ」と笑ってみせた

「ならよかったわ。あら?向日葵の絵を書いてるの?」と隣に座り込む少女

少女の髪は淡い栗色で、笑顔がとても似合っていた

「はい、向日葵ってなんか明るい感じがして好きなんですよね」

「ふ~ん…。あなた絵がうまいのね。名前は?」と微笑み、顔を覗かせる少女

その顔を見て少年は顔を少し紅く染め、恥ずかしがりながらも答えた

「透(とおる)です。川上(かわかみ)透っていいます」

「透さんね。私は風見幽香(かざみゆうか)っていうの」と微笑む

「幽香さん…ですね。この近くに住んでるんですか?」と尋ねる透

「近くというよりここが家よ」と寂しそうに答える幽香

「え?」 (ここが家って…どういうことだ?)と疑問に思う透

「あ、ごめんなさいね。なんで?って疑問をもったでしょ?」 「あ…はい」

「小さい時に親が死んじゃってね…どこにも住む場所がないからここに住んでるの」

「へぇ…大変なんですね。でも雨とか降ったときってどうする…」

「細かいことはいいのよ?透さん」 「え?」

幽香の言葉はとても冷たく、背筋を凍らせるような声だった

「あ…すみません。今日は日も暮れかかっているので帰ります…」 「あらそう?」

「それじゃ…さようなら、幽香さん」 「さようなら、透さん」と笑顔で見送る幽香

幽香が見えなくなり、家へ帰るとき…

「絶対に何かありそうだな…ちょっと気になるな。明日も行こうかな」と呟いた


© Rakuten Group, Inc.