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幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

花と語りし少女3

「花が全部…教えてくれ…る?」疑問に思ったのだろう 不思議そうな顔をしている透

「ええ、全部花が教えてくれるわ。あなたが昨日いつごろからいたのかもわかるわよ?」

「…じゃあいつ頃ですか?」 しばらく間があいて…

「2時42分ね。違うかしら?」 「あってます…」

(細かい時間までは覚えていないけど2時45分前だったのは確かだ…)

「本当に…花が教えてくれるんですか?」 「ええ、全部ね」

「じゃあ花は僕にはいろんなこと教えてくれないんですか?」と尋ねる

「あなたじゃ無理じゃないかしら?だってあなたには花の言葉がわからないじゃない」

「え?」 (花の言葉…ってなんだ?)

「花の言葉…ってなんですか?」と尋ねた

「簡単にいえば私は花と会話することができるのよ。あなたも見てたでしょ?」

「あ…」 数分前の出来事

―――――――「久々の雨ね。気持ちいい?はは、たしかにそうね」

(確かにあのとき喋っていた…あれは花との会話だったのか)と納得した

「だから僕がいたことがわかったんですね?」

「その通りよ、透さん。頭の回転が速いのね」と微笑んだ

その微笑んだ顔を見て、透は少し恥ずかしくなった

「べ、別にそんな…」 「何を照れてるのよ」と幽香は笑った

「でも…なぜ私のところに来たのかしら?透さん」

「えっと…それは…」と戸惑う透

「私が本当にここに暮らしてるのか確認に来たんでしょ?」

「な、なんでわかったんですか?」 「あなたを見ればわかるわよ」

「あ…そうですか…」 (顔に出ないように気をつけないとなぁ)と透は思った

「ふふ、おもしろい人ね」と幽香が笑えば 「はは、そうですか?」と透も笑った

大きな花畑の中、二つの傘が揺れていた…


時は流れ、また新たな日が訪れた

今日の天気は昨日と打って変わって晴れ 雲ひとつない快晴である

透はキャンパスと鉛筆を片手に家を出ようとしたときだった

「あら透、今日も花畑へ行くの?」と母が尋ねた

「うん、絵を描いて来るんだ」と答える

「気をつけなさいよ。あの花畑には魔女が住みついているんだから」

その言葉を聞き、透は少しむっとなった

「幽香さんは魔女なんかじゃない!いい人なんだ!」と怒鳴ると透は出ていった

「ちょっと待ちなさい透!…まったくもう…」と母はため息をついた

日差しは強いわけではなく、やや強めであり、また熱すぎないためちょうどいい感じであ
った

花畑への道を歩く 建物が並ぶ町とは違い、とてものどかでゆったりしている

花畑にはやはり幽香がいた

「あら、毎日のように来るのね。こんにちは、透さん」と笑顔であいさつをする幽香

その笑顔は向日葵に負けないくらい咲き誇っていた

「こんにちは、幽香さん」 地面に座り込むと、キャンパスに向日葵の絵を描き始めた

すると隣に幽香も座り、語り掛けてきた

「私ね、こんなに人と接するのは初めてでとてもうれしいの」

「え?花畑って人がたくさんくるし、接する機会は多いんじゃないんですか?」

「ううん、いつも私を見て逃げたり、話をしているうちに恐れて逃げてしまうの」

「なぜですか?だって…別に悪い事したわけじゃないんでしょ?」

「ええ、でも私はみんなから嫌われるの。そう言えば初めてあった日に両親は死んだって言ったけどあれは嘘なの」

「え?嘘って…じゃあ本当は何なんですか?」と尋ねる透

「本当はね、親に捨てられたの」 そう言うと幽香は遠い空を眺めた

「捨てられたって…そんな…」

「ひどい話よねぇ」と苦笑した…


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