101514 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

幻竜の羅刹

幻竜の羅刹

花と語りし少女6

翌日、昼食を食べ終わり、必要なものをもって外へ出かけた

今日も雲ひとつないとはいえないがよい天気である

(幽香と初めて散歩だ…緊張するなぁ…。それに行ったことのない場所に行くからわくわくするなぁ~)と心を弾ませる透

花畑までの時間がなんだか長く感じた。いつもと全く変わらないというのに…

花畑につくと幽香が花と喋っていた

「今日は隣町の花畑まで行くのよ?」 「え?私達に愛想を尽くしたのかって?やだわね、ちがうわよ」と笑っている幽香

「ん?透がいるって?」と言い振り向く。そこには透が立っていた

「あら、いたのなら声をかけてくれればよかったのに」 「なに喋ってるんだろうなぁって気になってね」

「そう?やっぱり何を喋ってるのか気になるのね」 「そりゃ気になるさ。僕には聞こえないんだからね」と笑ってみせた

「ふふ、確かにね…。じゃあ行きましょうか?」 「うん、そうだね」

二人は隣の町の花畑へと向かった

「花はね、寝ているとき以外はほぼずっと喋ってるのよ」

「ええ、そうなんだ。ってことは賑やかなんだね」 「賑やかを通り越して少し五月蝿いわね」と笑った

「あ、向日葵がたくさん咲いてる!あそこが花畑だね?」 「ええ、そうよ」

「僕達の村に負けないくらい咲いてるね」 「量ではあっちだけど綺麗さではこっちが買ってるわよ?」

「はは、そうだね」と笑って返す透 「何かおかしいこと言った?」

「ううん、おかしいことなんて言ってないよ」と言うと幽香はあまり喋らなくなった
(あらら、機嫌を損ねちゃったかな?)

「なぁ元気出してよ幽香~」というと透は変な顔を作って幽香にみせた

「…ぷ、あはははは、私はいつでも元気よ?」と笑いながらも言う幽香

そんな笑顔を見て透は少し安心した

しばらく歩くと、花畑はすぐ近くの位置まできた

すると、幽香は遠くから花達の声が聞こえることに気づいた

「なにかしら?花達が怒っているわ・・・。走りましょう、透」

「うん!!」と返すと二人は走って花畑へ向かった

すると…男数人が花を乱獲している

「はは、焚き火をするにも枝とかこのへんにねぇから腐るほどある向日葵で焚き火してやるぜ!」と言いたくさん向日葵を切り取っている

「うわぁ…ひでぇ…なぁ、幽…香?」と隣を見るともうすでに幽香の姿はなく男達の目の前にいた

「ん?なんだお前」 「花を切るのをやめてくださる?花達が怒っていますよ?」という幽香

「はぁ?お前何いってんの?花の声が聞こえるのか?はっはっは、面白い奴だな」

「切るのをやめてくださいと言っているんですが?」その言葉には誰もが凍りつき、ひるんだ

「…なんでお前のいう事なんて聞かなきゃならねぇんだよ!!」と言うと花を切り始めた

「やめろって…いってるのが聞こえないの!!」

透は思った 肩を震わせ怒鳴る幽香はたぶん世界中の誰より恐いと…

「花をなめちゃいけないわよ?」 すると風も吹いていない花畑の花達はざわめいた

そして…幽香の周りから芽が出て、花が生えた

(向日葵…か?いや…ちがう!!) 向日葵に見えるそれは何かが違った

そう…花びらが…赤い 真っ赤なのである

しかも小刻みに揺れている まるで男達をみて笑っているかのようだ

そして透は気づいた (あの花だけじゃない…花畑の花が…全部!?)

花畑の花達も紅く染まり始め、小刻みに揺れている

「もう1度だけ言います。花を切るのをやめてくださる?」と丁寧に聞く幽香

「う、うわぁ!!もう切らねぇよ!!」と叫ぶと逃げていった


© Rakuten Group, Inc.