桜の姫君5幽々子の母は嘆き悲しんだ。桜の木の前にひざをつき涙を流し、わが子の名前を呼んでいた その傍らには幽々子の父が涙を流し悲しみながらもひざをつく母の肩に手をやった その時すでに幽々子は幽霊になっていた そんな両親の姿を見ていたのだった そんな二人の姿を見て幽々子は誰にも見られぬ涙を流した 学校では翔、そして幽々子の死に悲しむ者達でいっぱいだった 机の上にはたくさんの花が手向けてあった 机の周りに集まり、泣いている友達の姿は担任の先生からすればとても悲しく、辛かった 幽々子は桜の木下でひざをつき、泣いていた 「どうして泣いてるの?私でよければ話を聞いてあげるわよ?」と言う声に幽々子は濡れた顔を上げるとそこには淡い銀色をした髪を持つ女がいた 「わたしの名前は魅魔っていうの。あなたは?」 「私は…幽々子」と弱い声で言った 「幽々子って言うのね。で…どんなことがあったの?言ってみなさい」と優しい声で話しかけた これが幽々子と魅魔との出会いだった… そして、魅魔を通して紫と出会い、3人で仲良く幽霊として生きていった そんないろんな事を通して今にいたるわけである 「ほんと、いろんな事があったわねぇ…」と幽々子が呟いた 「なにが?」と魅魔が口に団子を運びながら言った 「何でも無いわよ」と幽々子が笑って答えた 「ふ~ん、なんでも無いんなら別に良いんだけどね」というと団子を食べ始めた 「何か悩み事とかあるの、幽々子?相談に乗ってあげるわよ」と紫が言った 「いえ、昔のことを思い出したら何か変な気持ちになっちゃって…」と幽々子が言った 「泣いていいのよ、幽々子。悲しいときは泣きなさい。辛いと思ったら私達がいるからね」とぎゅっと抱きしめた 「うん、うん…」とやがて幽々子は紫の胸の中で泣き始めた 「なんで…私を残して…翔は…逝っちゃったのよ…」と途切れ途切れの言葉が聞こえる 「あなたの喜ぶ顔が見たくて急いでいたんでしょうね…」と幽々子の頭を撫でた 「うぅ…私のせいであんなことになったのよ…」 「それは違うわよ。あなたのせいじゃないわ」 「だって…だって…」 「心配しなくて良いのよ…。あなたのせいじゃないわ。神様って言うのは意地悪なのよ」 しばらく幽々子は紫の胸の中で泣いた… そして泣き止んだと思えばつかれて眠ってしまった 「疲れちゃったのね」と紫のひざを枕にして眠る幽々子の頭を優しく撫でた 「全く、泣いた次は寝るって…まるで赤ちゃんじゃない」と魅魔は笑った 「私からしたらこの子はまだかわいい子供みたいなものよ」と紫が言った 「そうね…これからもっともっと長い時間を生きていくんだからね」と幽々子の頬を指でつついた 「とりあえず人もみんないなくなったみたいだし…私達も帰らなきゃいけないから…」というと起こした 「ん…ぁ。私寝てたの?」 「ええ、私達そろそろ帰らなきゃいけないから帰るわね」 「あ、うん。バイバイ」 「またね、幽々子」 「バイバイ幽々子~」と手を振ると消えていった 一人になった幽々子は桜の木に体重を預けた 「もう一度…翔に会いたいっていっても…神様は許してくれないのかな?」と、手を天へと差し出した 涙が流れ、空に輝く星が歪んで見えた 「私何か悪い事した?なんで私から恋人を奪うのよ…」幽々子の声は天に空しく響いた (今まで心配させてゴメンね) 「え?」翔の声が聞こえた気がした でもそんなはずが無いと幽々子は悟り、なお更悲しくなった 「幽々子、そんな顔をしないでくれよ。かわいい顔が台無しじゃないか」 今度ははっきり聞こえた 涙で男の姿が歪んで見えない。目をこすってみてみると翔の姿があった そんな姿を見てまた涙を流し、翔がぼやけてしか見えなかった… ジャンル別一覧
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