CHRONICLES #8 (Bob Dylan)
【追記】No.3「ブッシュで良かったじゃないか、ケリーが大統領になったら日本はもっと大変だったろう」などとわけ知り顔で言う人がいます。まあ、床屋政談、どこかで聞きかじった知識を断片的に披露してくれます。そりゃ、ブッシュが落選していたら、当選した時に大喜びしていた、あのコイズミ君やザイカイは大変なことになっていたことでしょう。でも、コイズミ君やザイカイがそのまま日本ではありません。少なくとも、ブッシュでなければファルージャでの蛮行はなかったことでしょう。「誰がやっても同じ」なんてデマを流したがる人もいますな。選挙の結果で世界が大きく変わることがあるのだ。【追記】No.2ところでレーベルという言葉はちょっと気持ち悪いんですが、レイベルと書いたところで別に原音に忠実なわけでもなし、でもどうしてレコード会社だけラベルじゃなくてレーベルというのか不思議です。「label」がラベルとレーベルというように、意味によって言い分けられてるんですな。類義語のレッテルはオランダの「letter」が由来だそうです。作曲家のラヴェルは「Ravel」。英語だと「ravel」は「ほぐす」という意味です。反逆者は「rebel」。水準のレベルは「level」。並べるとかえって混乱しそうです。きわめてあいまいな使い方をしますが、「ラベリング理論」というのがありました。社会が標識を貼り付けることによって、貼り付けられた人がそのラベルに応えるような形で行動するようになってしまうという現象を指します。犯罪の発生、社会からの逸脱を説明するために用いられることがありました。ゴミはゴミだというように分類してしまうと、ゴミになります。ところがさらに細かく分類すると、資源として再利用できます。ゴミでなくなるのです。ネズミの糞ではいくらラベルを貼っても再利用できないわなあ。それでもネズミの糞なら有機物なんだから、土に還ることもあるかもしれない。憎悪を振りまくだけの悪意に満ちた言葉は、ネズミの糞以下で、本当に何の役にも立ちません。相手をしてやろうという奇特な方もいらっしゃるようですが、まったくかみ合わなくても、とにかく誰かに威張れるんだから、大喜びさせているだけですよ。あんなものに餌は与えないでください。【追記】No.1ボブ・ディランにも憧れのレーベルがあったというのは楽しい。「folkway」というのは「習俗」ぐらいの意味です。辞書を引くと、「同一社会集団の全員に共通な生活・思考・行動の様式」などと説明してありました。(研究社『リーダーズ英和辞典』)ディランが家にいるころ一所懸命聴いていたのは、「FOLKWAYS」というレーベルのレコードなんですね。今は「Smithsonian Folkways Recordings」となっています。あのスミソニアン博物館のスミソニアン協会が運営している、非営利レコード会社になってしまったのです。1949年にモーゼス・アッシュ(Moses Asch)という録音技師が、人間の生み出した世界中の音を記録しようとして始めたレコード会社が「FOLKWAYS」でした。1986年にアッシュが亡くなると存続の危機に陥ったのですが、この貴重な資料を保管するために、文化団体のスミソニアン協会が運営に乗り出したのだそうです。その窮状を知ってボブ・ディランが「FOLKWAYS」救済のために作ったアルバムがあります。ウッディ・ガスリー(Woody Guthrie)とレッドベリー(Leadbelly)へのトリビュート・アルバム『FOLKWAYS:A VISION SHARED』(1988年)です。ボブ・ディランの他に、ブルース・スプリングスティーンやU2が二人の曲を歌っています。私はこのアルバムを持っていなかったのですが、ふとamazon.co.jpで検索してみると、ちゃんと輸入盤がありました。悪税込みで1127円。これは買わないと。amazon.comのレビューでは、特に次の2曲がお薦めだそうです。"Jesus Christ"はamazon.co.jpで試聴できますよ。-----------------------------------------------------------Particularly exciting is a supercharged version of Leadbelly's "Rock Island Line" by Little Richard with Fishbone and U2's take on Guthrie's "Jesus Christ." --Ian Landau -----------------------------------------------------------Folkways: A Vision Shared- A Tribute to Woody Guthrie & Leadbelly 1. Sylvie2. Pretty Boy Floyd3. Do-Re-Mi4. I Ain't Got No Home5. Jesus Christ6. Rock Island Line7. East Texas Red8. Philadelphia Lawyer9. Hobo's Lullaby10. Bourgeois Blues11. Gray Goose12. Goodnight Irene13. Vigilante Man14. This Land Is Your Land Little Richard, Brian Wilson, Bob Dylan, Bruce Springsteen, Sweet Honey in the Rock, and U2洞窟のような賄い場で立ち食いをしてラジオから流れるリッキー・ネルソンの歌を聴きながら、ディランはリッキーと自分の身を比べてみる。だいたい同じぐらいの年齢で、たぶん似たようなものが好きなんだろうけど、なんとまあ違う環境にあることか。将来の関わりについてはまだ知る由もない。何よりも肝心なのは、リッキーが今もレコーディングをしていて、自分はまだそれをしていないということだ。ウッディ・ガスリー(Woody Guthrie)がレコードを出している、あのフォークウェイズ(FOLKWAYS)からレコードを出したいものだなあ。ディランはボスであるフレッドにレコーディングのことを尋ねるのだが、フレッドはそんな話にはまるで乗り気でない。フレッドには歌い手としての何かが欠けていると、ディランは感じていた。それが何であるのかわからなかったのだが、デイブ・ヴァン・ロンク(Dave Van Ronk)に出会って、わかったと書いている。#5で会いたい歌手の最初に挙がっていた名前だ。デイブは当時のグリニッチ・ビレッジでは、ストリートの王者であったと、ディランは書いている。ディランは故郷にいる時からレコードでデイブの歌には親しんでおり、情熱的に吠え、そしてささやき、ブルーズからバラッドへ、バラードからブルーズへと切り替わるデイブのスタイル大好きだった。ディランのデビュー・レコードに入っている「朝日のあたる家(House Of The Risin' Sun)」のアレンジはデイブだと言われている。私のおなじみさんだと、ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)が歌っている「コカイン(Cocaine)」はデイブの曲だ。デイブは2002年2月に亡くなったが、ニューヨーク市では5月18日を「デイブ・ヴァン・ロンクの日(Dave Van Ronk Day)」として、コンサートを開催している。 →dave van ronk unauthorizedp.16に入ったあたりです。ところで思わぬ連載になっちまいましたが、これは翻訳でもダイジェストでもありませんよ~。ちらっと読んで、内容を少し紹介しているメモのようなもの。私の感想や調べたことが混じっております。これでボブ・ディランの自伝『クロニクルズ』を読んだ気になってはいけません。