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カテゴリ:音楽
私は楽天広場の住人夏見還さん「還尼抄」のファンなのであるが、思いがけなく「桃梨」の情報を目にした。
桃梨はベースとボーカルの不思議な二人で、フランスW杯の年に井の頭公園で歌っているのを目にして、カセットを買ったことがある。 > ベースのJIGENさんが今年ソウル・フラワーのメンバーになったんです。 > 桃梨としては、先週抱瓶でライブしてました。 お~、知らんかった。 嬉しい話♪ なぎらけんいち(健壱)さんのアルバムに『春歌』(1974年)というのがありまして、中古市場で高値を呼んでおります。 ヤフオクのおかげでさらに値段が上がり、今だとおそらく福澤さんお一人では無理でしょう。 なぎらけんいち『春歌』(1974) SIDE A 1. タヌキの金玉 2. まっくろけ節 3. 満鉄小唄 4. キュッキュラキュ節 5. おっぴょ節 6. 秋田音頭 7. 一番電車 SIDE B 1. ぶったまげ節 2. 八百屋お七 3. ツンツン節 4. 十九の春 5. ヨサホイ数え唄 6. ぼんぼの子守唄 タイトルどおりの春歌が正々堂々と歌われております。 (#1「タヌキの金玉」はインストルメンタル。春歌のインストルメンタルってのも不思議だが。) テレビに出てくる時のイメージからどぎつい歌い方を想像するかもしれませんが、なぎらさんはさわやかな歌い手さんなので、残念なことにまったくいやらしくありません。 バックは洪栄龍、武川雅寛、かしぶち哲郎、安田裕美、鈴木慶一といったおなじみのメンバーで、音もしっかりしています。 ジャケットのデザインも橋本治さんが凝りに凝っています。 CDでの再発売希望なんですが、どうもご本人が乗り気でないアルバムのようです。 #3「満鉄小唄」なる曲が入っていますが、その中にあの「五十銭(コチーセン)」という言葉が出てきます。 ♪ 雨のしょぼしょぼ降る晩に ♪ ガラスの窓からのぞいてる ♪ 満鉄の金ボタンのばかやろう ♪ 触るは五十銭見るはただ ♪ 三円五十銭くれたなら ♪ かしわの鳴くまでぼぼするわ ♪ 上るの帰るのどうするの ♪ はやく精神きめなさい ♪ きめたらゲタ持って上がんなさい ♪ お客さんこの頃紙高い ♪ 帳場の手前もあるでしょう ♪ 五十銭祝儀をはずみなさい ♪ そしたら私も精だして ♪ 二つも三つもおまけして ♪ かしわの鳴くまでぼぼするわ 歌詞はこのレコードのものをベースに書き取りましたが、歌う人によって少しずつ違います。 たとえば中島貞夫監督の映画『懲役太郎 まむしの兄弟』(1971年)で使われた時は、次のような歌詞が入っていました。 ♪ ああ騙された 騙された ♪ 五十銭金貨と 思うたに ♪ ビール瓶の栓かよ 騙された 元々替え歌なので、いろいろな歌詞があるのは当然です。 [b]の音が[p]で発音され、「五十銭」が「コチーセン」と歌われますが、それはこれが朝鮮人従軍慰安婦の哀歌だからです。 歌詞の異同も含めて、文字どおり民俗歌・ひとびとのうた・フォークソングと言えるでしょう。 この曲は大島渚監督『日本春歌考』(1967年)のモチーフにもなっています。 荒木一郎さんが学生服、吉田日出子さんがセーラー服を着て、高校生役で出演しています。 この映画で大島監督は、ベトナム反戦を訴えるのにアメリカのモダンフォークを猿真似する「カレッジフォーク」を批判的に描いています。 金持ちおぼっちゃまフォーク連に対峙させるのが、「春歌」をがなる荒木一郎や吉田日出子という図式。 この映画の音楽部分で関わった小室等さんはモダンフォークの人だったので、かなり嫌な思いをした模様です。 この「満鉄小唄」、普通なら聴けない幻の曲ということになっているみたいですが、実はちゃんと現行CDにも入っているはずです。 ディランII『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』(1972年)の隠しトラック。 ディランII『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』(1972) 1. 君の窓から 2. 子供達の朝 3. その時 4. 君をおもいうかべ 5. 男らしいってわかるかい 6. プカプカ (みなみの不演不唱) 7. さみしがりや 8. 君はきままに 9. うそつきあくま 10 サーカスにはピエロが 名盤ですね。 #5「男らしいってわかるかい」はBob Dylanの"I Shall Be Released"です。 「満鉄小唄」は、この盤の11曲目に、クレジットには入っていないのですが、かなり録音レベルを落としてフルで入っています。 アナログ盤だと本当に嬉しい発見でした。 CDだと、ちゃんと11曲目があるのがすぐにわかってしまいます。 東芝EMIから出た復刻CDではちゃんと聴けます。 ただ、avex版ではどうなったか知りません。 先ほど書いたように、この「満鉄小唄」は、替え歌であります。 元歌は戦時歌謡の「討匪行」、傀儡国家満州国建国の年、1932年に大ヒットした歌です。 作曲と歌はあの藤原歌劇団の藤原義江さん、作詞は関東軍参謀部八木沼丈夫という人だそうです。 八木沼さんはgoogleしてみると、どうもアララギ派の歌人だったようですね。 厭戦的雰囲気を持っているので、戦局が日本に不利になると歌唱を禁じられたといういわく付きの曲です。 ♪ どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ ♪ 三日二夜を食もなく ♪ 雨降りしぶく鉄兜(かぶと) これが元歌の歌い出しです。 おわかりになりますでしょうか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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