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闘魂 サバイバル生活者のブログ

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ドル暴落後の日本

●岩本沙弓「新・マネー敗戦―ドル暴落後の日本」(文春新書)を読む。序章より引用。

…ライオンは消費も続けて、金も出て行かない方法、すなわち「通貨と金の固定そのものを廃止してしまえばよい」という常人にはとうてい思いつかない考え方に至るのである…

…米国からしてみれば、ファイナンスが出来たのはよいとしても、それだけでは返済に追われてしまう。問題はいかにその借金を目減りさせるかということにかかってくる…

…本書で取り上げたこのような見方は金融論や経済学の教科書ではあまりお目にかかることはないだろうし、ある意味邪道とも言える…歴史的背景を踏まえた上で、違った角度から為替政策や制度をご覧いただくと、金融のしくみや強者の論理のようなものが少し見えてくる…

…百年に一度の経済危機と言われても、経済システムが今日明日にも変わるわけではない。今後の世界経済や為替制度がどこに向かっていくのか、その中で自分の生活をどう守っていくか、判断材料の一つに本書を活用していただければ幸いである…

●この本は、ネットで形成した見立てに準じていて、すんなり頭に入って来る。著者の経歴は、次のとおり。エスタブリッシュメントではないが、だからこそ虚心坦懐に昨今の状況を見ることが出来るのかも知れない。


岩本沙弓(いわもと さゆみ)

金融コンサルタント・経済評論家。1991年東京女子大学卒業後、日・米・加・豪の大手金融機関にて外国為替(直物・先物)、短期金融市場を中心にトレーディング業務に従事。銀行在籍中、青山学院大学大学院国際政治経済学科修士課程終了。日本経済新聞社発行のニューズレターに7年間、為替見通しについて執筆。国際金融専門誌「ユーロマネー誌」のアンケートで為替予想部門の優秀ディーラーに選出。現在、為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、英語を中心に私立高校、及び専門学校にて講師業に携わる。著書に「円高円安でわかる世界のお金の大原則」「為替と株価でわかる景気の大原則」ほか。


●ところで、帯の裏に12月の新刊と称して、面白いのを見つけた。島田裕巳「金融恐慌とユダヤ・キリスト教」(文春新書)がそれ。店頭に並んでいるのを見たことがない。これも買いである。

       *       *       *

●岩本沙弓「新・マネー敗戦」(文春新書)読了。ネットで見聞きした、トンデモな事実をこぎれいにまとめている。活字として、まとまったボリュームになっているから、たとえ、新聞・テレビで報道されないタブーであっても、今後は、ここまでは共通認識として一歩踏み込んで議論できる。

…米国の借金は確かに減ったものの、2つの問題が残った。一つは、このままではドルの価値が下がる一方である。金なしでドルの世界市場での信認をどう確保するのか。つまり米国ドルを信頼し、米国ドルを必要と思わせる、金に代わって米ドルの価値を確保する何かがやはり必要となる。

また、金との固定相場制ではモノを作らなければ自国に資金は集まってこなかったが、変動相場制では基軸通貨である限り、モノを作らずに消費と借金で経済を反映させていくことは可能となった。しかし、その場合にはモノを買って出て行ったドルを最終的に米国に還流するようなシステムも合わせて必要となってくる…

金との裏付けを停止したニクソン・ショックと時間を同じくして、サウジアラビアが原油輸出をドル決済すると決めるとOPEC…の他の加盟国が追随した…このOPECの決定により、各国は原油が必要であれば必ず米ドルを確保しなければならないという構造が出来上がった…

●彼らのやり方をズバリ言うとこういうことだ。かつて日刊ゲンダイが石油通貨という表現で、イラクを滅ぼした米国のやり方を批判していたのを思い出す。

…原油の値段が高くなればなるほど、原油を買うのに必要なドルが増えるため、各国はドル買いに動く…通貨ユーロが発足した1999年前後を境にしてこの原油高=ドル高、原油安=ドル安、の相関関係が崩れた…

●原油とドルがリンクしているのはネットではおなじみの事実だが、ユーロの存在は、忘れがちである。ユーロが出来たことの意義というか、独仏の思いが伝わって来る。なお、原油が高騰するとドルが買われるのか、ユーロが買われるのか、この点に注意しながら新聞を読むことにする。ドルとユーロのせめぎあいの状況を示す指標だとわかった。

…原油の確認埋蔵量は当時世界第2位と言われていたイラク。原油輸出大国となりうるイラクが原油決済通貨をドルからユーロへ変更することは、1970年以来米国ドルが築き上げてきた米ドルと原油の裏付けを喪失させることに他ならない…

…イラクの動きを阻止するために米国が取った行動といえば、フセインを世界の悪役とし、後に否定されることとなる、イラク国内の大量破壊兵器の存在を指摘し、なかば強引に引き起こしたイラク戦争である。このことからも、原油に裏付けされた基軸通貨保持に対する米国の必死さがうかがえよう…

●この話はほんとうにひどい話である。新聞・テレビは絶対に伝えない。だからイラク人の思いも伝わらない。もちろん、現在は、ドル決済で、原油を輸出している。ロシアとサウジアラビアが接近したという話は聞いたことがある。今後、暴落の恐れのあるドル以外の通貨で決済する方向で、動くことが予想される。プーチンの動きは要注意だろう。

…米国は95年を境として、それまで以上に製造業を放棄し、金融で勝負しようと大きく舵を切った…

●忘れもしない95年である。当時は、日本はGDP世界2位の大国だった。あれから15年が経って、国益派に政権が託された。自民党と米国は、国民を騙し続けてきた。年次改革要望書がその象徴だ。

…米国への資金の流れの切れ目には、その狭間を埋めるように日銀の介入が実施されてきており、その結果日米の株価上昇につながるという傾向がある。つまり、(1)金融危機やテロという非常事態の発生…(2)各市場の動揺、株安、急激なドル安・円高の進行…(3)潤沢な資金の供給、低金利、日銀による介入…(4)ドル高、株高へ、というパターンが見られ、一連の流れで金融帝国である米国は潤い、その恩恵を日本も少なからず受けてきた…

●日米の利害が一致していたという。しかし、奴隷的労働を提供して、稼いだ貿易黒字だ。なぜ、米国債にしてしまうのだ。著者によれば、金の保有高は、米国がダントツである。日本も金を買えばいいではないか。

…日銀による介入はそのスピーチの2週間後の2004年3月16日をもってピタリと終了。代わりに個人投資家を中心としたFXブームが巻き起こるのである。政府のお金から、民間マネーによるドル帝国への還流が始まったのである…

●FXはその後どうなったのだろうか。レバレッジを利かせるので、平均20兆円のマネーが動いたという。日銀の介入はそれほど大きくはなかった。

…現代の通貨の裏付けを敢えていうならば、一つの通貨を他の通貨の価値で測るというものだが、全通貨がモノとの裏付けをなくした状態である以上、何が本当の通貨の価値かということはわからない。わからないもの同士で測ってもわからないのである。そういう意味で、現代の為替システムは綻びはじめると、異常事態に陥る危険性はある。

1971年ニクソン・ショック前の金1オンスは35ドル。今や同じ1オンスが1000ドル、実に28倍以上に価格が跳ね上がっている。では我々の所得は28倍に、あるいは物価は28倍になっているだろうか…

…本来貿易取引などで実質の決済手段として使われる通貨量の何倍もの投機的通貨が存在する世界市場である…それはドルという通貨の信認が低下し、ドルの価値が下がるのに合わせて、世界の通過価値全てが下がる状態であり、相対的にモノの価格が上がる状態である…

●著者は、国際金融資本とは言わないが、ライオンとシマウマのたとえ話を使って、日本がシマウマであるとする。金融は、日本人には向かない。ダイナミックかつシステマティックな思考、常識にとらわれない肉食系のスタイルは、日本人に不向きだ。

…何も丸腰でいろ、というわけではなく、きちんと国家として物申す戦略が必要である。しかし借金をして、あるいはお金を転がして、そして金融危機を発生させ、経済を繁栄させるのはやはり虚業にすぎない。モノを作って売る、労働の対価としてお金を得る、これこそが経済の基本ではなかろうか…

●米国流の強欲さが破滅をまねく。日本は資源がない、人だけが唯一の資源である。手先の器用さ、つまり生産技術、ものづくりで勝負するべきだと思う。それがドル暴落後に活きる。

あとロシアへの目配りは必要だろう。原油やその他の資源は、ロシア経由の方が距離的にも有利だ。

サハリンと稚内の距離は、まったくもって、近い。沿海州にしたって、札幌・東京間の距離と変わらない。札幌の町にはロシア人がいるけれども彼らと草の根交流するところからはじめればいい。

GMの解体を決めたのは、経営者が自家用ジェットに乗って、ワシントンに集まったからだ。税金を投入したAIGのボーナスが問題になったのも記憶に新しい。

彼らは、規律がないというか、なにかが決定的に欠落している。

金融機関に規制をかけるのはいいが、結局、FRBが金融機関に対して統制を利かせやすい形にしただけだ。次になにを打ち出すか、借金をどうやってチャラにするのか、非常に迷惑な話であるはあるが、彼らも必死だから荒業を使って来るかも知れない。



2010年1月31日 根賀源三


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