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(暫定☆)鰤の船盛り

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2006.09.05
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テーマ:『BLEACH』(615)
カテゴリ:BLEACH
〈先にお詫び〉
このお話に出てくる虚園の住人は基本的に悪い人がいません。原作と解釈が随分異なりますが、ご容赦ください




(登場人物)
・ 織姫:天真爛漫。かつ、何処で身に付けたやら、サバイバルスキルが恐ろしく高い。女は度胸。
・ 石田:おじいちゃんっこのクインシー。適応能力が高い。虚園の家政夫。
・ ワンダーワイス・マルジェラ:純真無垢。織姫に懐く白痴の子。絵本が大好き。
・ ウルキオラ:クールな振りしているけどホントは照れ屋さん。藍染が大好き。
・ ヤミー:ウルキオラと仲良しのエスパーダのおじさん。
・ グリムジョー:織姫に腕を直してもらった元気な兄ちゃん。ウルキオラとは仲が良くないけど、嫌いじゃないみたい。東仙が嫌い。
・ ギン:虚園に来ては、もっぱら孤児たちをお城に集めて面倒見ている。元々、かわいそうな人を放っておけないタイプ。悲しい過去がある(物語上)。
・ 東仙:色々1人で管轄していい加減疲れている。根が真面目なだけで、悪い人じゃないみたい。目が見えないけど何も問題は無い。
・ 藍染:虚園の王様。だから、何にもしない。ウルキオラがお気に入り。






てんごくのらくえん




ウルキオラにさらわれた織姫は、その次の日、ウェコムンドのお城の一室で目を覚ました。
どうやら、織姫は回復要員で、酷い扱いは受けないようだった。
というか、かなり立派な一室があてがわれた。
「すごいなー。お姫様の部屋みたい。」
今まで、兄と細々と暮らし、ずっと質素な生活だったので、天井がとても高い部屋で寝泊りするのは初めてだった。
それに、昨日、グリムジョーの腕を直した後も、織姫は城中のケガ人(意外とたくさんいた)を治していった。
一通り、兵士たちの治療が済んだ後、柱の影から、声をかけられた。
「織姫ちゃん、こっちこっち」
振り向いたら、銀髪のひょろりとした青年が手招きをしていた。
「あー。えーっと、市丸さん?」
「せや。ギンでええで?織姫ちゃん。」
たしか、藍染の傍らにいた青年だと、思い出した。つまり、この世界の幹部。さすがに呼び捨てはまずいと思い(ついでに誰にでも敬称をつける癖があったので)、「さん」付けで呼んだ。
「ギンさん、どうしたんですか?」
「しー!ちょっとな、診てもらいたい人が、おんねんけど。ええやろか?」
「構いませんよ?どこですか?」
返事を聞くと、ギンは嬉しそうに笑った。
「良かった。こっちや。ついておいで。」
そういうと、階段を下り、廊下を渡り…織姫はこの時は知らなかったが、一般の、非戦闘員の虚が住む居住区にやって来た。
それでも、霊圧に敏感な織姫は感じ取っていた。
(なんだろう…空気がヒリヒリする感じ…)
非力な虚から発せられる霊圧…意外にも、怒りや憎しみは無く、怯えが充満しているようだった。小さな生き物が寄り集まって箱の隅っこで震えているような空気だった。
その様子に気が付いて、ギンが大きな声で呼びかけた。
「大丈夫やでー!このおねえちゃん、味方や。怪我治してくれるから、みんな出ておいでー!」
物陰から、ひそひそと声が聞こえてきた。暫くすると、何処に隠れていたのか、ぞろぞろと人が出てきた。
それも、子供ばかり。
織姫はビックリした。次から、次へと、栄養が悪そうな、痩せた子供たちが出てきた。
みんな怯えている。
その中から、腕を押さえた者や、支えられてびっこを引きながら歩いてくる子が前に出てきた。
「あのう…おねえちゃん、治してくれるの?」
顔半分に包帯を巻いた子供が怯えながら勇気を出して織姫に話しかけた。
織姫は胸がどきどきしていた。堪らなかった。泣きたい気持ちを隠し、織姫はにっこり微笑んで答えた。
「大丈夫。おねえちゃんが治すからね。舜桜!あやめ!」
不思議な小人が現れて、子供たちは驚いた。その小人たちが、みるみる怪我を治していくのを見て「わぁっ!」と歓声があがった。
織姫は休まずに次々と子供たちを治していった。歩けなかった子供は大喜びで走り出し、動けずに荒い息でうなされていた子供は穏やかな呼吸になり顔色が良くなった。
本当に、信じられないくらいの子供たちがいた。織姫は脂汗を流し、顔が真っ青になり、手足が震えるのが分かったが、それでも休まずに治療を続けた。
見ているギンの方が不安になり止めようとしたが、逆に無言の霊圧で止められてしまった。

そしてとうとう、数刻のうちで、織姫はその場にいた全ての子供たちを治してしまった。
子供たちは大喜びで、口々にお礼の言葉を言った。
織姫は笑顔で答えた、というか、もうすでに、声が発せられない状態だったからだ。
ギンはその様子を嬉しそうに眺め、
「ほらほら、おねえちゃんもう、クタクタや。みんな、お礼ちゃんというたか?今日はちゃんと休むんやで?ほな、またくるさかいな。」
そういうと、その場から織姫の肩を抱いてあっという間に撤収した。子供たちの見えない場所に来た途端、織姫の緊張の糸が切れてしまい、その場にクタクタと座り込んでしまった。
「あかん、しっかりしい。」
『織姫ちゃん!』
小人たちもヘヤピンから飛び出し、織姫を気遣った。息が荒かったが、織姫はにっこり笑い、
「だいじょぶ…ちょっと、疲れちゃっただけだから…」
と、答えた。
ギンは、懐から糖衣錠を取出し、織姫に差し出した。
「飲んどき。毒や無いよ。栄養剤や。」
得体が知れない薬だったが、織姫は素直に飲んだ。正直、体中が悲鳴を上げ、藁にもすがりたい状態だったからだ。
薬を飲み込み、ギンが更に差し出した竹筒に入った水を流し込むと、織姫は本当に体力が少し戻っているのに驚いた。
「あれ、全快はしてないみたいやね。並みの死神やったら、もう、ぴんぴんのはずなんやけど…。ともかく、おおきに。あの子達、治してくれて。」
「ギンさん…。あの子達は?」
「あの子達も、虚(ホロウ)や。この世界、いっぱいおんねん。」
織姫はだんだん、薬のおかげか、呼吸が落ち着いてきた。先ほどの光景を思いだすと、確かに子供たちの体の一部に、殻のようなものがくっついていたし、穴が開いていた。
更に、ギンは続けた。
「僕らもな、最近こっちに来たばっかりで、まだ詳しくは分かってないんやけど、ああいう子供たち、増えてるねんて。事故や事件で死んだり、戦争や、内戦で死んだり…そんなんで、未練があってな、みんな、虚(ホロウ)になってしもてんねんて。」
「私…私の、お兄ちゃん…」
ぽつり、と織姫が呟いた。
「虚だったんです。虚(ホロウ)になって、私に会いに来たんです。」
「…そやったんか。」
それから2人は会話も無く、元来た居住区に戻ってきた。ギンは『おおきに』というと、さっさと行ってしまった。
1人、部屋に戻った織姫は、横になって色々考えた。
勿論、初めは残してきた友人、好きな人のことを考えていたが、やはり、元来の優しさから、先ほどの子供たちのことばかり考えてしまった。
『虚(ホロウ)だって、元は人なんだ…』
『朽木さんや…他の死神さんたちは、ココの人たちをやっつける事ばかり言っていたけど…』
『本当は、もっと大事な事を忘れているんじゃないかな…』
もっと考えたい事があったが、疲れに負けて、織姫は眠りに落ちた。


そんなことがあり、朝を迎えた。
朝といっても、ここ、ウェコムンドはどんよりと、厚い雲に覆われた世界だった。
『はいいろの、せかい…』
窓から見える光景は、何処までも荒野が続く、さびしい世界だった。
『お兄ちゃんも、ここにいたのかな…だったら…』
自分を懐かしんで、現世に降りてきたって不思議ではないと思った。
そして、昨日の痩せた子供たちを思い出した。
『ご飯がないから、人を襲うのかなぁ…』
ふうっと、ため息をつくと同時に、ノックが鳴った。
「織姫様、お目覚めですか?」
世話係の女性がやって来た。藍染の計らいなのか、織姫の周りの世話に女性の虚を何人か用意してくれていた。
それだけではなく、身の回りの物も、上品なもの(ただし、幾分か時代を感じさせるセンスのもの)で固めてくれていた。つまり、彼女が不自由しないようにとの、ウェコムンド側の配慮なのだろう。
逆に、その事に織姫は面食らってしまっていた。
大体、さらわれて、酷い事や怖い事があると覚悟していたが(確かに、幾分かの強制はあったが、思ったような酷い事じゃなかった)、逆に賓客のような扱いだったからだ。
しかも、「様」付けで呼ばれ、慌てふためいていたのは織姫だった。
「ははははは、はい!起きてます!!」
入ってきた女官は一礼し、「お食事をお持ちいたしましょうか?」と聞いてきたが、敬遠して織姫は自分が食堂に行く旨を告げた。
女官が退室した後、織姫はふぃ~っとため息をついた。
「どうしよう、『ガラスの仮面』のあゆみさんみたいに振舞えないよ…」
こんな時でも、ボケを忘れない、天真爛漫な織姫だった。







―――――――――――――――
うー、自分が『書いた』話を載せることがこんなに恥ずかしい事とは思いもしませんでした…。

まだまだ続きまーす♪






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Last updated  2006.09.05 20:47:00



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