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Apr 18, 2007
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カテゴリ:日記小説

 5.

 食堂裏のゴミ箱を漁っているところに声を掛けられた。
「ああ君、ちょっといいかな」
 よくない、まったくよくない。
 ジーマは声を無視して移動しようとしたが相手は強引だった。
 行く手に廻り込んで来て写真を掲げた。
「失礼、この女を見たことがないかな」
 今の姿からはかけ離れた、きれいな制服を来た少女が小さく笑い掛けていた。
 見間違え様はなかった。彼女だ。
「知りません。急いでるんでこれで」
 表情を変えずにそういって突っ切った。
 だが、どこかに出ていたのだろう。眼か。相手もプロだった。
 悟られたらしい。
 尾行が4。バックアップに2というところか。
 ジーマはふいに駆け出した。
 尾行をまくつもりは無かった。自ら行き止まりの路地に駆け込むと。
 慌てて追いすがってきたまず一人め、掌底を顔面、鼻の位置にもろに叩き込む。
 二人目、どこからともなく取り出した小型のナイフでヒュッツ、相手の喉を切り裂く。
 三人目、耳から指を突きいれ、脳髄をえぐる。
 そして呆然と棒立ちの4人目をそのまま羽交い絞めにする。
「で、なんだって?」
 相手はそれでも必死に。
「こ、この少女を保護するのだ」
 保護?は、何いってんだコイツは。
「だってお前、日本人じゃないじゃん」
 ごっきん。そのままキメた。
 男達を改めたが流石に身分を明かすものはない。
 だが中国のエージェントであることは間違いなかった。
 貰えるものだけ貰って、ジーマは素早く現場を後にした。

 チーム・アルファは不遇だった。
 最後に接触を断った現場から捜索範囲を広げると、直ぐにホームレスが立ち去った跡地を幾つか発見した。
 だが、そこまでだった。
 安藤美由紀の足取りは完全に断たれていた。
 最終接触ポイントを基点にどれだけ捜索範囲を広げてもヒットしなかった。
 そのとき、チーム内での特に追跡について見識が深い女性隊員が提案した。
 あのとき同行していた男の側を追ってみたらどうか。
 ヒットした。
 ジーマは”業界”内でも謎の有名人だった。
 ”仮装ホームレス”だろうとの噂だったが、気前がよく、なかなかの人気者だった。
 そのジーマが、軽自動車を所有していて、気ままに都内を移動し、根城を移っているという。
 それには、ある法則性があって、基本的には大きな公園の一角、であると。
 チーム・アルファはすぐに行動を開始した。
 ジーマに接触を取れれば、少なくともなんらかの追跡の為の情報、手がかりは得られるはずだ。
 幸運だった。
 保護対象はまだジーマに同行しているらしい。
 が、それからが不遇の連続だった。
 同定を終え、さあこれから接触を取るぞというとき、いつも対象がジーマと共に移動を開始してしまうのだ。
 慌ててバンに追跡を命じても、軽快な軽自動車を鈍重ではないにせよ(それは十分な改装がなされている)バンが、対象にその存在を秘匿したまま1台で追跡をしろというのは、これはムリな話だ。それが3回以上続けば、これは偶然では在り得なかった。
 「どこかで情報が漏れている可能性があります」
 黒瀬はやっとそれを進言する気になった。
 「そうだな」
 統制官である筒井二佐も不機嫌な顔で同意した。尤も、彼の場合いつもの表情と変らなかったが。細かいが常に不機嫌な顔をしてみせているのも戦術の一つだ。
 実際に彼は不機嫌だった。
 実は、中国の下、オペレーション、作戦を行うのは今回が初めてだった。
 中国の遣り方は杜撰の極みだった。何を考えているのか判らないが、無用な損耗も著しかった。
 目標に随伴するホームレスが、何らかの背景を持った男であり唯の宿無しなどではないことはもはや明白であり、むしろ目標確保の前段階として周到にこれを”排除”する様にと、筒井はこれを徹底するべく中国側の現地、国内工作員に指示を出していたのだが、中国側は真剣に受けとろうとしなかった。
 工作員の質も問題だった。
 その多くはチャイニーズマフィア崩れで、正規の、人民解放軍広範囲作戦部隊に所属する者、或いはその出身者は安全な大使館か作戦拠点に篭ったまま現場に出ようとしなかった。
 そして、工作員は日本人である筒井を侮蔑していた。
 当然だった。内応者に浴びせられる視線は古今東西変わりない。
 筒井は馬鹿らしくなった。やめやめ、つまらない、”ゲーム”はここまでだ。
 筒井は手早く種類をまとめ。
「ちょっと外す」
 部屋を出た。
 そしてそのまま直属上官の部屋を訪れた。
「失礼します」
 上官はパットの練習中だった。いつものこととて顔には出さないものの心では失笑する。
「少し、宜しいでしょうか」
 相手の返事を待たず。
「私は、つい先刻まで中国情報部に内通しておりました。これがその証拠です」
 パターが床に落ち、乾いた響きを立てた。





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Last updated  Apr 18, 2007 07:41:21 AM
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