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Apr 25, 2007
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カテゴリ:日記小説

 12.

 山を降りきって17号に入ってからしばらく、当初の疑念は深まった。
 交通量が異様に、否異常に少ない・・・。
 あっという間に荒川大橋が見えて来た。
「検問あるじゃない!」
 ビンゴと言わんばかりの美由紀の悲鳴だったが矢嶋は別に気になるコトを感じていた。
 もちろん検問は問答無用で突破する。いや。
 検問では無くこれは阻止線だ。
 阻止線であるので当然、荒川大橋の上に他の車両の姿はない。ひたすらアクセルを踏み込む。
 背後で複数のサイレンの音。どうやら追跡してくるらしい。
 在り得ない、と思いつつ矢嶋は口を開いた。
「まるでクープでも起きたみたいだ・・・」
 くーぷ?クレープ?と美由紀、ああ、クーデターねと矢嶋。
「いえ、もっと的確な用語があるわ」
 ここのとこ全く畑違いで遣り込められてばかりだっただけに、美由紀は少し得意げだ。
「なんだい」
 素直に教えを請う矢嶋に。
「非常事態宣言」
 矢嶋はそれに気付いた。慌ててラジオを付ける。
『・・・自動車使用禁止、携帯・固定電話使用禁止、ネット使用禁止、都民の皆さんは落ち着いて行動して下さい。こちらは内閣府です。非常事態宣言発令、外出禁止・・・』
「ほんとにビンゴだな」
 矢嶋はあきれた。一体、何が起きたってんだ。
 しばらく山に篭っている間に、世界がひっくり返ってしまったようだ。
 ちらりとバックミラーに視線を走らせる。今は無害だがこの先うざったい。
 美由紀は慌ててその手を押さえた。矢嶋は彼女の手を軽く振り払い。
 投擲した。
 爆発音。電信柱がゆっくりと傾きそのまま倒壊する。
 破壊音が連続する。何台かのパトカーは横倒しになっていた。後続する車両は存在しない。
「何てことするのよ?!」
 美由紀は涙目になって抗議した。ここ数日間平穏な時間を過ごして来ただけにまるで夢が破れた様で、突然の荒事は余計に堪えた。矢嶋が”そういう人間”だということすら、すっかり忘れてしまっていたくらいに。
「奴らもプロだ。あれくらいで死人は出てない、たぶんな」
「そ、そういうコトじゃなくて」
 矢嶋はアクセルを緩め、美由紀の顔を覗き込んだ。
「じゃあ、どういうコトなんだ」
 わざと美由紀のクチマネをしながら矢嶋は問質した。
「あ、あんなコト・・・」
「ムダだ、ダメなんだ」
「え、何が」
 心底不思議そうに美由紀はたずねた。
「これから戦いになる。匂いだ、カン、だ。非論理的だ、判っている。だが私はまだ生きている。私はそれだけを信じる。今なら判る、あの荒川がルビコン川だったんだ。戦うなら先手必勝だ。イニシアティブを握る者が戦場を支配する。勝利の女神は愚鈍なヤツには惚れないもんなんだ」
 そこへ、路地からゴミバケツや雑多なガラクタを弾き出しながら、大小の、真新しい傷跡だらけの一台のセダンが現れそのままハマーの右側に並んだ。
 すかさずハンド・ガンのハンマーを起こした矢嶋を美由紀は今度こそ必死で止める。
 見覚えがある横顔だった。
「待って、今度こそ待って!!知・り・合・い!!ト・モ・ダ・チ!!」
「友達?罠じゃないだろうな?」
 それでも美由紀の懇願でハマーを停めた。
 美由紀はようやく彼の名前を思い出した。
「智英?!何であなたが?!ここに居るの?!」
「安藤、いや美由紀」
「智英?」
 様子が違った。
「判ったんだよ、いや今は判るんだよ、おれも」
 美由紀は息を呑んだ。まさか。
「そのまさか、さ。全く、大した悪食だった」
 智英は語った。

 強引に家を飛び出してから例の頭痛が始まった。
 酷い痛みだった。どんどん悪くなる。いつもの倍、10倍、いや100倍。
 まずいと思ったときは遅かった。あっさり失神した。
 車はそのまま直進を続けていたが、T地路に行き当たりハデにクラッシュし、その衝撃で智英は目覚めた。
 頭痛はウソの様に消えていた。
 代わりに、頭が沸騰した。
 あの日の記憶が蘇った。
 そして、誰も口を付けようとしないあの料理を一人で平らげた記憶も。
「安藤・・・そうだったのか」
 安藤は、寂しかったんだ。
 たった一人、ある日いきなりジーニアスの世界に足を踏み入れてしまい、そして・・・。
 そう、仲間が欲しかったんだ。だから。
 検体を、仲間候補を探していたんだ。実験室でマウスを見ていたんじゃない。
 ただ、疲れて、寂しくて、それでそのとき、少しだけ虚ろな眼差しをしていただけだったんだ。
 それを、いつも間近に見ていたのに、何でおれは。
 安藤、いや、美由紀。
 会いたい、会って、伝えたい。
 この、想いを。
 すると、何かが勝手に頭の中で動き始めた。
 今まで断片的か、或いは一過性で直ぐに忘れてしまっていた情報が、物凄い勢いで整然と組みあがっていく。
 これが・・・、美由紀が見ていた”世界”なのか?!。
 自身の変化に戸惑う間も無かった。
 様々なデータがぶつかりあいながらそれぞれ形を変え或いは位置を変え、頭の中に一つの論証の構造物が自動で製作されていく。日本のこと中国のこと暴力団どもの妄動そして。
 北米が日本に仕掛けるワケがない。今回の事態を仕掛けたのは、中国だ。
 そして、その中心にいるのが、美由紀なんだ。
 理論では無かった、理屈でもない。
 それは、直観、論理をショートカットして真実を探り当てるスキル。
 美由紀。今、いく。
 智英はアクセルを踏み込む。






Last updated  Apr 25, 2007 07:16:21 AM
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