時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

2009/07/28(火)07:47

空の中

日々の読書(SF/ファンタジー)(140)

 これも、うちの子から渡された作品。先般の「海の底」と同じ有川浩による、自衛隊3部作のうちの「空の中」(角川書店)である。 ○「空の中」(有川浩:角川書店)      日本が開発した国産初の超音速ビジネスジェット「スワローテイル」が試験飛行中に謎の事故を起こす。そしてその約一ヶ月後、航空自衛隊のイーグルが事故を起こした。「スワローテイル」のメーカーから、事故調査員として派遣された春名高巳と事故を起こしたイーグルと一緒に飛んでいた自衛隊の女性パイロット武田光稀は調査のために高度2万メートルの上空へ飛ぶ。そこで彼らが見つけたものとは。  一方、事故で亡くなった自衛隊パイロットの息子である瞬は、幼馴染の佳江と海辺で奇妙な生物を拾う。たった一人の家族を亡くした瞬は、その空白を埋めるかのように、その生物にいれこんでいく。  この小説も、大きく3つの性格があるようだ。一つ目は、人類以外の未知の知的生命体との遭遇の物語。人は、自分の理解できなものは排斥しようとする。そこに、国家間の政治的な問題が絡み、結局は大きな危機を招いてしまう。そんな人間の愚かさを描いている。  二つ目は、瞬と彼が拾った生物との物語。お互いに喪失感を抱いた者同士は、奇妙な縁でつながる。瞬の揺れ動く心が良く表現されている。  そして三つ目が、高巳と光稀、瞬と佳江の二つのカップルの恋の物語。超生真面目な光稀とかなりくだけた性格の高巳のカップルは、まるでラブコメのようなやりとりが面白いが、こちらは大人同士だけにまあ安心して見ていられる。一方、瞬と佳江の方はまだ未熟なだけにあぶなっかしい。  一番魅力的なキャラは、瞬の祖父変わりの存在である「仁淀の神様」と呼ばれている川漁師の宮じい。「亀の甲より歳の功」という言葉もあるように、語られる言葉は、実に含蓄がある。 ○面白かったらポチっと1票!      ○「海の底」の過去記事はこちら 風と雲の郷 別館「文理両道」はこちら 風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」はこちら

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