2018.07.25

書評:明治日本の産業革命遺産 ラストサムライの挑戦! 技術立国ニッポンはここから始まった






 2015年に、「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録されたが、これは全部で23資産で構成されている。このように複数の資産が同じテーマを持って一括で認定される方式を「シリアル・ノミネーション方式」と呼ぶようだ。本書によれば、「シリアル・ノミネーション方式」で登録された世界遺産は他にもあるようだが、東は岩手県釜石から西は鹿児島までという、地理的に広範囲で構成資産も内容的に別々に見えるものは、珍しいという。

 本書は、それらの構成資産についてそれに尽力した人の物語とともに一冊に纏めたものである。

 明治維新の勝ち組は、俗に薩長土肥というが、直接描かれているのは、薩長肥で、それぞれ章を割いて解説している。土佐が直接出てこないのは、四国にこの産業革命遺産として指定されたものがないからだろう。しかし、間接的には、三菱の創始者である岩崎弥太郎を通じて語られている。岩崎弥太郎は、元々土佐の郷士が郷士株を手放して没落した地下浪人だった。ただし、彼が関連した施設は長崎に多い。

 日本の近代化のため尽くしたのはなにも維新の勝ち組だけではない。幕臣である伊豆代官江川英龍やイギリス人でありながら長州ファイブや薩摩スチューデントなどを支援したグラバーの貢献を忘れてはならない。

 西洋列強の力がちらつく中、幕末から明治にかけては多くの人材が国を守るために活躍したのだ。表紙にあるようにまさにラストサムライの挑戦。近代日本の成立には、このように多くの人々が関わっているということが本書を読めばよく分かる。当時は、国の力がなければ、他の多くのアジア諸国のように欧米の植民地にされていたような時代だ。彼らの働きがあったからこそ、日本は欧米の植民地になることなく明治の世を迎えられたのだろう。

※初出は、「風竜胆の書評」です。





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最終更新日  2018.07.25 10:44:13
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