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2009.09.15
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「目を覚ませ ! 」
「えっ ?」と僕は眠たげな目をこすりながらその声の主の姿を眺めた。担任の先生だった。
「この大事な進路説明の時間に居眠りとは何事だ」と、次の瞬間ファールチップの平手打ちが僕の頭をかすめていった。と同時に先生のメガネがわずかに傾いたがその傾きは先生の右手によって瞬時に修正された。
「いいか、社会へ出るということはどういうことなのかを一人一人が真剣に考えなくてはいけないぞ。わかってるか山下。いや、加藤」と僕に振り向きざまに先生。
ちなみに僕の名前は山下でも加藤でもなかった。
どんなに真剣でいても空振りをする時は空振りをするということなのだろう。

高校生活を残りあと一ヶ月として僕がやるべきことはこれといって明確なものは見当たらなかった。
この三年間でさえも何かの目標があったり情熱を傾ける何かがあったわけでもなかった。
ただ漠然とした日々の繰り返し。
しいて言うならサラリーマンの予備軍としての準備運動をしてきた三年間だったと言えるかも知れない。
それが幸せであるのか不幸であるのかは別として・・・。


一日の授業が終わるといつものように競輪学校合格者のトレーニングを付き合うために学校から徒歩五分の同窓生の彼の家を訪ねた。
狭い部屋を改造したトレーニングルームで汗を撒き散らしながらベタルを凄い勢いで漕いでいる彼の姿をしばらく眺めていた。
やがて僕に気付くと笑顔でサドルから降り、少しずつ呼吸を整えながらランニング用の服装に着替えていった。
「相変わらずのふっとい足だなあ」と僕が声をかけると
「胸板も腕もこのとおりの太さだ」とメジャーで測った正確な数値をあげながら鍛えあげた肉体の成長ぶりを示してくれた。
彼は競輪学校の難関を異例というべき一発で合格したいわゆる成功者の卵と言うべき才能の持ち主、いや、努力の持ち主で、同じ歳でありながら十代にして明確な将来像を持っていた羨ましき存在の人物であった。

僕が参加できるトレーニングと言えばスタート練習時に後ろから自転車を手で支えることと近くの小さな山までランニングを付き合うことぐらいであった。
僕は走ることは人並み以上には速いほうではあったが彼の走るスピードはまったくもってその非ではなかった。

同じ山を登り同じ山を下ったその後の道、
彼は予定どおり競輪学校に入学し、僕は半導体製造の会社へと就職した。



次回につづく。。。







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最終更新日  2009.09.15 22:07:05
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