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カテゴリ:F1・モータースポーツ
昨日、ウインターマックスのコーナリングの話で、タイヤの横剛性と加速度について触れたが、たぶんあまりよくわからない表現ではなかったかと自分でも思ったので、
そのことに関連したトラクションのことを少し書いてみようと思う。 F1などで、トラクションが非常にかかり易くコーナーからのの立ち上がりが非常に良い車…などの表現を聞いたことがある人も多いと思うが、理解できてますか? まあ、同じようにアクセルペダルを踏んでも、ホイールスピンせずにエンジンのトルクが路面にうまく伝えられて加速できる車がある一方、同じ車重、ほぼ同じホイールベース、同じエンジンのF1でもトラクションがかかりづらくホイールスピンが起きて前に進まない車も在ると解説者が言ったりしているのを聞くと、不思議になりませんか? ほとんど同じような車のコンセプトで、しかも同じタイヤで、空気圧も決められていたり(去年はその辺の規則がより厳しくなった)、サスペンションの構造的な形式もほぼ同じなのに、トラクションが良いとか悪いとか??? しかもF1の設計者は腕利きのエンジニアが寄ってたかって開発したものなのにです・・・・。 何が違うとトラクションの良くかかる車と悪い車の差がつくのか?? その答えが「加速度の差」なのです。 異なるコンストラクターが作り上げた2台のF1が、コーナーの出口の同じ場所で、同じ速度から、同じエンジンを全開にして加速する時をイメージしてみてください。方やホイールスピンをせずに脱兎のごとく加速できる車があり、片方はホイールスピンを起こしてわずかにテールが流れてカウンターステアを当てつつ加速する・・・。 同じエンジン、同じミッションのギア比、同じデファレンシャルギア比、同じタイヤに同じ空気圧と同じタイヤ表面温度、同じ車両重量、同じ前後重量バランス、同じサスペンショントラベル量・・・ほとんど同じスペックに見えるけれど、僅かに異なるところがあり、動き始めの加速度がわずかに異なることで顕著な差となるのです。 車を加速するための物理的な能力は同じだから、タイヤの摩擦係数と駆動輪にかかる荷重が同一であれば加速できる可能性としてのスペックは同じです。 しかし、アクセルを踏んでエンジンのトルクが立ち上がって、タイヤがより早く回転しようと周りはじめても、タイヤをホイールスピンさせてしまえば、十分な加速はできないので、まずエンジンのトルクマネジメントが問題になります。 おそらくアクセルペダルの踏み込み速度に対して直接的にエンジン回転数を上げることは無いはずで、デミオだってわざと遅くして余分な燃料を消費しない仕組みがあるわけで、レース用のエンジンも、本当は0.1秒で全開にしたドライバーの足の動きに対し0.2秒で全開に持ってゆく制御が入っていれば、まずそこだけでタイヤ表面と路面の間に生じる加速度を半分に下げられます。 つまり非常にパワーがあるF1エンジンなどでは、いきなり全開にすればホイールスピンが起きてしまうことが当然だから、トラクションコントロールシステムでホイールスピン寸前を維持して加速するのが常識となるけれど、レギュレーションでクローズドループのトラクションコントロールが禁止されれば、あとはアクセルの踏み込み量や踏み込み速度を制御して、強大なエンジントルクが唐突にタイヤを回し強い加速度を路面との間に生じさせない工夫が不可欠となってくると考えられるのです。 もちろんドライバーがその辺をデリケートに扱えばさらに失敗はしなくなるのだが、ドライバーが僅かに早く踏み込みすぎたときなどにそうした遅延回路が働けば失敗だけを覆い隠して、車はホイールスピンせずに最適な加速に近い状態でコーナーを立ち上がることが出来るようになるはずです。 以上のことは、スロットルのコントロールだけでもトラクションにそれだけ大きな影響力を持っていると考えられるということで、トラクションに係わるところはまだほかにたくさんあるのです。 例えばリア・サスペンションのジオメトリが最適であれば、どんな加速をしてもタイヤは垂直に路面に対していて、タイヤのコンタクト面積が減少しなければ、タイヤの持つトルク伝達能力は壊れず長時間維持できる。それは、急激なトルク変動を受け止めるだけの面積を維持できるから、ホイールスピンしずらくなるということに繋がるはずです。 また、サスペンションのバネ定数とダンパーの減衰特性の工夫があれば加速時にリアが敏感に小さく沈み込むことでタイヤと路面の加速度の立ち上がりを緩やかにしてくれる機能を持たせることが出来て、重心移動を滑らかにゆっくりと起こしてタイヤと路面の垂直荷重を増やしつつ加速して行けることになります。 また、デファレンシャルシステムも大きな影響力があるはずで、いわゆるリミテッドスリップデフといった思想以外にも内輪差がある後輪の駆動システムに新しいソリューションが持ち込まれていることもあり得ると思われます。理想を考えれば、コーナリングが完全に終了して直線的な加速を始めるよりも早く、アクセルを踏んで行っても駆動輪の内輪差を考慮した左右独立した駆動システムが完成していれば、加速はコーナーリングの終わる前からも行い得るのではないだろうか? 以上のことは、主に加速時のトラクションというメカニカルなグリップを向上させることについて書いたことですが、昨日のタイヤの横剛性をあえて下げたのかもしれないと書いたのは、トレッドゴムと滑りやすい凍結路面の間に起きるミクロ的メカニカルグリップをハンドリングによって唐突に立ち上がる横への加速度で壊さないために採用された手段なのではないか?という意味なのです。 言いたいことは伝わったでしょうか・・・・? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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