地下に潜む怪人 感想
原題:As Above, So Below2014年 アメリカ映画監督:ジョン・エリック・ドゥードル脚本:ドリュー・ドゥードルあらすじパリの地下(カタコンブ・ド・パリ)で、錬金術学者スカーレットが賢者の石を探して右往左往、上下左右する話感想(ネタバレあり)アマゾンのレビューに「ヒロインのウザい歴女が云々...」とあったので、見てみたが、スカーレット別にウザくないし、逆にいい女なんじゃないの、これ......と感じた。仲間を助けるため自分の間違いを認めて異形の者をブッ飛ばしながら賢者の石を取るべく引き返す決断ができるし、カメラマンの友人が人骨の隙間でパニックに陥ったら意識を失わないように励まし続けるし、「知識が得られれば金目の物はいらない」と言うし、こんないい人いる!? まぁ、元はと言えばこいつのせいでガイドやらガイドの恋人やらが死ぬわけだし、これから危険なところに行くというのに薄手のニットみたいなの着てくるし「岩だらけの場所行くのにそんな肌露出させてたら怪我するだろ!」とは思いますけど。実際パピヨンの彼女は腕を怪我する(そして賢者の石ではないニセの石でなぜかその傷は治ってしまう)。けれど全体的には、暗いインディジョーンズというか、絶望的なグーニーズというか、そうしたキャラクターをダンテの神曲をモチーフとしたストーリーにうまく組み込んでおり、面白かった(最後、「逆に降りてみる」ことで地下から脱出できてしまうところなんて、魔王ルチフェロに掴まり足を上に頭を下に体を一回転させることで地獄から抜け出たダンテとウェルギリウスのよう)。神曲では、生前の自分の罪を悔い改めた者たちは地獄行きを免れるのですが、この映画でも「罪の告白」シーンはあって、その中に「ガールフレンドに妊娠を告げられた際『俺の子じゃない』と嘘をついた」者がおり、その者をもスカーレットは「そう」とかなんとか言って赦すのです。聖女のようではないですか。私だったら目の前でそんなこと告白されたらゲンコツだ。神曲のダンテとウェルギリウスはエルサレムの地下にある地獄をどんどん下り、南半球に出た(北を見ても北斗七星は見えず、南に南十字星が輝いていた)のですが、スカーレット一行はどこに出たのだろう。パリのようでパリではない、別の場所ではないか。過去の罪を悔い改めることでカタコンベに幽閉されるという地獄を免れただけで、彼女たちは今も煉獄のなかにいるのでは。