雲が夕日を浴びて赤くなっていた。
落ちる夕日 今日という日が終わったと実感する夕方。 人通りの多い道を逸れないように歩く。 アンタはそれに気づいて歩調をゆっくりにしてくれる。 無言のままの帰り道。 初めてだから、話を切り出しても良いのか悪いのか分からない。 無言が痛い。 好きと言ってくれても、好きだと思っても、一瞬分からなくなる。 何となく疑ってしまう。 「綺麗だな・・・」 「えっ・・・」 ふいに口から言葉が出て驚いた。 アンタは空を見上げていた。 「雲が・・・赤い」 「あっ、ホントだ」 確かに綺麗だった。 街を同じように真っ赤に染める夕日。 「夕日は落ちるのに・・・何で綺麗なんだろうな・・・」 「そうっスね」 見えなくなる寸前に見せる光。 それが美しいなんて・・・。 「花も・・・散る時も綺麗だと思わないか?」 「そうっスね」 終わりに見せる微かな光。 人はそれを希望というのだろうか? それから何かを見出すのだろうか? 「果てる時も美しい・・・か」 何となく・・・今の言葉には重みがあった。 「何か思い当たる事でもあるの?」 「いや・・・」 それは嘘。 アンタが何も意味ないのに口にする言葉なんてないことをちゃんと知っている。 まだ付き合いが浅くても。 それを感じさせるものがある。 「何?もう終わっちゃうの?」 「何がだ?」 「アンタ」 「まさか」 怪訝そうな顔をする。 「嘘だよ。終わったら困るよ」 「なぜだ?」 「アンタを倒せないから」 「それだけか?」 必要以上の追求。 俺を試してるのか茶化しているのか。 「・・・アンタと・・・明日が迎えられないから・・・」 「迎えられないとどうなるんだ?」 まだ聞くの?と苦笑しながら。 「悲しいよ・・・」 アンタは笑った。 その笑顔が好き。 その声が好き。 だから、終わりみたいな事を言わないで。 夕日だって落ちるけど、ちゃんと明日にはまた姿を現すんだから。 「アンタは夕日じゃないでしょ?」 「それはどういう意味だ?」 アンタは苦笑した。 そう。 アンタは夕日じゃない。 だから簡単に終わらないで。 だから簡単に消えないで。 「秘密」 今度は俺が意地悪く笑った。 手塚お誕生日おめでとう!! お誕生日記念にこっそりアップしました。全然誕生日は関係ないのですが(苦笑)。 時間が無かったので、昔書いたSSでに付け足しをしました。一応リョ塚です。 こんなお粗末な物を大々的にアップできず、ちょっとひねった?場所にリンクを張ってみました。 少しでも何かお祝いで書きたかったので・・・自己満足です(笑)。 もしも、読んで下さった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。 byノエ |