青空を眺めて




屋上で寝そべっていた。
なんとなく授業がかったるくてここにいる。
授業中の教室から教師の怒鳴り声が聞こえる。
イライラする。
最近のストレスが溜まっているのだろうか?
屋上の入り口から階段を駆け上る音が聞こえる。
授業中のはずなのに。
「やべぇ・・・。」
もしかしたら教師が窓から俺を見つけたのかもしれない。
そう思ったが、どこにも隠れるようなところはない。
逃げるのは諦めた。
ドアが開く。
「宍戸さん!!」
「ちょ・・・長太郎・・・。」
入ってきたのは長太郎だった。
「お前・・・どうして・・・。」
長太郎だって授業中のはずだ。
「宍戸さんこそどうしたんですか?」
「それは俺のセリフだ!!」
長太郎は入ってきてドアを閉めた。
「だから、お前はどうしたんだよ授業。」
「えっ・・・あっ・・・宍戸さんの姿が見えてから・・・。」
見えたからって、お前のクラスの窓からここが見えたっけ?
「だから・・・授業始まってるのにここにいるなんて・・・どうしたのかと思って・・・。」
「余計な心配するな。」
「でっでも・・・。」
俺は溜息をついた。
「サボリだよ。」
「えっ?」
「サ・ボ・リ!!」
「宍戸さんがサボリですか!!」
「いけねぇかよ!!」
「そっそんなことないです・・・。」
「・・・わかったらさっさと戻れよ。」
「嫌です!!」
「はぁ?」
「宍戸さんはここにずっといるつもりですか?」
「だから、サボリだって言ってるだろ!!」
「じゃあ俺もサボリます!!」
「じゃあって・・・。」
長太郎は俺の隣に座った。
「戻れよ。」
「嫌です!!」
コイツって変なところで頑固なんだよな・・・。
「本当にいいのかよ。」
「いいんです。」
長太郎って授業サボったりしなさそうだよな。
きっと・・・初めてなんじゃねぇか?
「怒られるぞ。」
「覚悟してます。」
そんな簡単に覚悟できるものなのか?
「今ならまだ間に合うぞ。」
「男に二言はありません!!」
「そうか・・・。」
なんか悪い気がしてきた。
コイツがここにいるって言い張るのは俺がここにいる・・・俺のせいってことだろ。
「俺が・・・迷惑なんだけど・・・。」
「何でですか?」
「・・・一人で考えたいこととかあるし・・・。」
「悩みでもあるんですか?」
「いや・・・。」
なんだかややこしいことになりそうだ。
「なんもねぇよ。」
「じゃあ、どうしてサボりなんか・・・。」
俺はなんとなく俯いた。
「うぜぇから。」
「なにがですか?」
「教師とか・・・。」
「反抗期ですか。」
「何だよその言い方!!」
「えっ・・・いや、宍戸さんも反抗期なんだなと思って。」
コイツ・・・なんなんだよ・・・。
「お前は親に反抗しなさそうなタイプだよな。」
「そっそんなことないですよ。」
嘘言っちゃって。
「お前って絶対親孝行タイプだよな。」
「親孝行なんて・・・そんな偉い人間じゃないですよ。」
「いいや、絶対にそうだ。」
長太郎は苦笑いした。
「本当にそんなことはないんです。」
「優等生タイプのお前がか?」
「俺は・・・親の生きて欲しいように生きてませんから。」
そう言う長太郎の顔が、すっごく悲しそうな顔に見えた。
「・・・ゴメン。」
「なにがですか?」
「なんか・・・言いたくないことを言わせたみてぇだ。」
「大丈夫ですよ。」
優しい笑顔でそう言う。
その笑顔が・・・なぜか痛かった。
「宍戸さんこそ、親孝行なんじゃないんですか?」
「俺は・・・長太郎みたいないい子じゃねぇからな。」
「いい子・・・ですか・・・。」
長太郎はまた悲しそうな顔をした。
「また・・・俺悪いこと言ったみてぇだな。」
「そっそんなことないですよ!!」
なんで長太郎がそんな顔をするかはわからない。
だけど、一つわかることは。
俺は長太郎の悲しい顔を見たくないってことだ。
「やめようぜ、この話。」
「そうですね。」
俺は空を見上げた。
「・・・なあ長太郎。」
「はい。」
「今日は天気いいな。」
「そうですね。」
「いつもこうだといいんだけどな。」
「今、梅雨ですからね。」
「テニスできねぇ。」
長太郎は笑った。
「宍戸さんは本当にテニスが好きなんですね。」
「当たり前だ。お前だってそうだろう。」
「はい。」
はっきりとした声だ。
「あの時・・・。」
「はい?」
「俺がレギュラーから下ろされて、監督に頼みに行った時、お前自分がレギュラーから落とされそうになっても俺を庇ってたよな。」
「えっ・・・そうでしたか?」
しらばっくれやがって。
「何で俺にそこまでするんだ?」
「宍戸さんが好きだからです。」
「好きだからってレギュラーから外されるんだぞ。」
「はい。それでもいいです。」
何でもないようにひょうひょうと言いやがる。
「そうだよな。お前には来年があるしな。」
「・・・宍戸さん。」
「ん?」
「今の・・・本気でそう言ってるんですか?」
長太郎の顔が怒ってる。
「嘘だよ。」
「よかった。」
何でホッとするんだよ。
嘘って言うことが嘘かもしれねぇだろ。
「お前って本当に変な奴だな。」
「宍戸さんこそ。」
「はぁ?」
長太郎はニコニコ笑っている。
「宍戸さんって、口では俺のことをウザイとか言いますけど、いつも俺に付き合ってくれてますよね?」
「・・・そうか?」
「そうですよ。宍戸さんの方がよっぽど矛盾してます。」
「長太郎。そんなこと言うと今日は一緒に帰ってやらねぇぞ。」
「ええっ!!」
長太郎は身を乗り出した。
「嫌です宍戸さん!!」
もう目が潤んでる。
「嘘だよ嘘。」
長太郎はまたホッとした顔をする。
「よかった。」
そう呟く長太郎の笑顔が・・・。
ちょっとだけ好きだ。
「長太郎。」
「なんですか?」
「俺なんかとダブルス組んで本当にいいのか?」
「すっごく嬉しいですよ!!」
「そういう意味じゃなくて・・・。」
長太郎は頭の上にクエスチョンマークを浮かべてる。
「ダブルスとしてだよ。」
「全然平気ですよ!!上手くいってるじゃないですか!!」
長太郎はいい。
テニスプレイヤーとして身長はあるし、必殺サーブもある。
「お前じゃなくて・・・俺が・・・。」
「宍戸さんは俺と組むのが嫌ですか?」
「そっそんなんじゃねぇけど・・・。」
「じゃあいいですよね!!」
また長太郎は笑顔になった。
「だから・・・戦力的に・・・。」
「俺は宍戸さんが劣っているなんて思ってません。それに・・・。」
「それに?」
「ダブルスって息が合わなきゃダメじゃないですか。」
「・・・ああ。」
「俺たち、絶対に息がピッタリ合うと思うんですよ。」
なんで笑顔でそう断言するんだ。
「だって俺、宍戸さんが好きだし。」
「そっそんなのお前の一方通行じゃねぇか。」
長太郎が俺を見つめる。
その目がいつもと違う。
いつもの穏やかな目じゃなくて・・・なんとなく恐い感じがする。
「・・・じゃあ宍戸さんは、俺のこと・・・どう思ってるんですか?」
「えっ・・・。」
なんだか墓穴を掘った気分だ。
長太郎から視線を逸らそうとするが、長太郎は両手で無理矢理俺の顔を自分に向けさせる。
逃がさない気だ。
「俺は・・・。」
キーンコーンカーンコーン。
丁度いいタイミングで鐘が鳴った。
「終わったな。」
「あっ・・・はい。」
俺は長太郎の両手をはらって立ち上がった。
「次の授業から・・・出るから・・・。」
「そうですか。」
ちょっと気まずい。
「お前もちゃんと戻れよ。」
「あの・・・。」
長太郎はじっと俺を見つめる。
「なんだ?」
「悩み・・・大丈夫なんですか?」
コイツ・・・まだ覚えていやがった。
「平気だぜ。」
「そうですか。」
思ったとおり、長太郎は安堵してる。
「まあ・・・。」
俺は長太郎に振り向いて、奴の頬に・・・。
キスした。
「お前のおかげだ。」
長太郎はしばらく顔を真っ赤にしてボーっとしていた。
「ええっ!!」
「遅ぇよ。」
「宍戸さん・・・今・・・。」
俺は笑った。
「ほら遅れるぞ。」
「まっ待ってください!!」
「待たねぇよ!!」
長太郎が急いで俺を追う。
「宍戸さん!!結局宍戸さんは俺のこと・・・。」
「言わねぇ!!」
言ったら絶対に調子にのる。
・・・ってか、その前に気づけよ。
俺が、好意を持ってない奴にキスなんかすると思うのか?
「言ってくださいよ宍戸さん!!」
「絶対に言わねぇ。」
もうちょっと。
あともう少しだけ。
そしたらきっと・・・。
告白してやる。
「次、遅れるなよ。」
「宍戸さんこそ。」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、放課後の部活の時な。」
「はい!!・・・あっ宍戸さん」
「なんだ?」
まだなにか言うのかよ。
「お昼・・・一緒に屋上で食べませんか?」
俺は少し考えた。
「気が向いたらな。」
「俺・・・待ってますから。」
「勝手にしろ!!」
多分俺は・・・。
お昼に屋上に行くと思う。
大好きなアイツの笑顔を見に行くために。
「ったく、世話の焼ける奴。」




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*あとがき*
すみません。無駄に長いです。それも読みづらい(苦笑)。
鳳宍なのか宍鳳なのか・・・。
途中から何を書こうと思ってたのかわからなくなってました。(いつもそんな感じですが・・・。)
上手く書けるわけもなく・・・悪戦苦闘してました(笑)。こんなので本当にすみません。
それも、今読み直したら・・・ジロ跡と同じような内容に・・・。
やっぱり同じ人間が書いたって感じがしますね・・・。まだまだ勉強不足です(苦笑)。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
                                   BYノエ





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