オンザエッジなライブドア
強制捜査から一週間、とうとう本丸に司直の手が伸びた。堀江社長、宮内取締役ら四人が逮捕されたとのニュースが飛び込む。 思いのほかす速い展開であった。強制捜査後も寝ぼけた言動が目に付いたことから、早目に灸をすえたということか。それとも強制捜査以前にかなり内偵が進んでいたということなのか。 おとり捜査や盗聴は行われたのか、今回の捜査においては、数年前もめにもめた「組織犯罪対策法」が有効であったのか、ライブドアの株取引の粉飾の実態よりも、そちらの方に興味は尽きない。 しかし、このあっという間の逮捕、これなどもメディアを最大限有効活用してきたライブドアにふさわしい小気味よさ。こうしてスピーディーに実態解明が行われる方が、日本経済や、政界に与えるダメージは小さい。 フジテレビの損失が98億円と速報にあったが、それとても傷は小さいだろう。フジテレビほどの基礎体力のある組織なら、やがて取り返せるし、ライブドアとの関係を清算したほうが格付けも上がるだろう。 既に上場廃止も秒読みだし、時価総額が4000億円以下に下がったことで、禿げ鷹ファンドが買収の動きを見せている。倒産、リストラの恐れもある。会社を立て直そうにも、それだけの人材が残っているかどうか。 そもそもライブドアは、堀江容疑者が学生時代に始めた「オンザエッジ」というベンチャーを前身とする。会社設立当時には全く「想定外」の形で「オンザエッジ」(がけっぷち)に立たされたわけだ。いやここで問題なのは、堀江容疑者ではなく崖っぷちに立たされた社員だ。 深刻なのは、ライブドアに買収された企業の社員とその家族たちである。いくら内実が伴わない虚飾の企業と言われたとしても、社員にはお気の毒というしかない。多くの社員はマネーゲームとは無関係のところで、実績業績を上げようと努力してきたはずだ。 かねて堀江氏をドラえもんをもじったホリエモンというより、風貌はジャイアン、性格はスネ夫と思って見てきたが、ジャイアンやスネ夫も、時には男気を見せる。 堀江氏の幕引きはグループ社員に対しての責任は取ってもらいたいものだ。(以下引用)堀江容疑者、虚飾のIT“勝ち組”…立志伝ついに汚点 「ライブドア」グループに対する強制捜査から1週間。東京地検特捜部は23日夜、同社社長・堀江貴文容疑者(33)の逮捕に踏み切った。 自らのブログで「身に覚えがない」と潔白を主張してきた堀江容疑者に対し、捜索で入手したメールの分析や同社幹部らの聴取結果などから、一連の不正に堀江容疑者が関与したと判断した特捜部。 「ホリエモン」の愛称で呼ばれ、時代の寵児(ちょうじ)としてもてはやされてきた堀江容疑者の“IT錬金術”が暴かれた。 ライブドアの堀江貴文容疑者は、33歳にしてすでに“立志伝中”の人だった。 福岡県出身で、東大在学中にライブドアの前身となるネット関連企業「オン・ザ・エッヂ」(がけっぷちの意)を立ち上げたのが、1996年。その後、企業の合併、買収を繰り返し、わずか10年で40社を超える企業を抱える有力グループにのし上がった。 04年にプロ野球の大阪近鉄バファローズの買収に名乗りを上げ、05年にはニッポン放送株の大量取得でフジテレビと対立、さらに同年9月の衆院選に広島6区から出馬し落選するなど、常に世間の耳目を集めた。 「ロマンチックな男だった」。1999年暮れ。IT起業家の取材で堀江容疑者と会った作家の大下英治さん(61)は、当時の印象をそう語る。 「オン・ザ・エッヂ」の社名だった渋谷の会社事務所。雑居ビルの中の3畳ほどの会議室で「宇宙旅行の会社を作りたいんです」。ラフな服装の堀江容疑者は将来の夢を聞かれ、目を輝かせた。約1時間半の取材時間は、ほとんどが宇宙旅行の話に費やされた。 「(堀江容疑者が)企業買収で派手な動きをしている」。そんなうわさを耳にした大下さんは04年暮れ、再び堀江容疑者をインタビューに訪れた。そのころは近鉄の買収に名乗りを上げ、人気者に。格好はラフなままだったが、場所は“勝ち組の象徴”である六本木ヒルズ38階のオフィス。堀江容疑者は商法改正に触れ、「金がなくても巨大な買収ができる。買収しないヤツは度胸がないだけだ」とまくし立てた。 5年前には感じられなかった野心が顔にみなぎっていた。IT先駆者のソフトバンクを強く意識し、金を稼ぐ理由について「知的好奇心を満足させるのに必要なんだ」と答えたという。 「時価総額世界一」。堀江容疑者は、頻繁に口にしていた。時価総額は、発行済み株式に株価を掛け合わせた額で、会社の価値を計る物差しとして使われる。堀江容疑者は最近の著作では、「株価を上昇させて株主に報いることが、株式会社の使命」と記していた。(読売新聞) - 1月23日22時40分更新